人工透析の4つの原因!【食事療法はココを注意して】
<監修医師 吉野 聖奈>
人工透析をする人は腎臓の働きがよくない人、つまりは腎不全の人です。この腎不全の原因になる病気が人工透析の原因ということになります。
腎臓そのものの病気のほか、風邪から癌にいたるまで、さまざまな病気が原因になりえます。原因、死因、対処法など人工透析に関する知識のいろいろをお伝えします。
人工透析とは?
人工透析とは、機能が衰えた腎臓機能を人工的に代替することです。腎不全になった人が尿毒症で死亡するのを防ぐためには、老廃物除去、電解質維持、水分量維持の働きを代行することが必要です。
本来の腎臓がどのような役割を果たすかはこちらを参考にして下さい。
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この行為を血液浄化療法と呼び、方法により血液透析療法、腹膜透析療法、オンラインHDF療法などがあります。また人工腎臓と言ったりもします。今回は最も一般的な血液透析について解説していきます。
人工透析の方法
具体的な方法は、血液を体外に出し、ダイアライザーと呼ぶ透析器(人工腎臓)に通して老廃物を取り除くなどして血液の浄化を行います。
尿毒症の原因物質や老廃物の排出、ナトリウム・カリウムなどの電解質濃度、ph、体液量が調整され、きれいになった血液は再び体内に戻されます。
透析を行うときには血管から連続的に大量の血液を外へ出すために、前もって簡易手術により腕の動脈と静脈をつなぎ、シャントと呼ばれる取り出し口を作ります。こうしておくと接合部が一時的に太くできるので、透析時にはここに針を刺して血液を取り出します。
人工透析の知識
人工透析を受けるようになるのは、腎不全の人でも腎臓の機能が10%以下に落ちた人です。現在は30万人を超える多くの人がこの治療を受けており、年々増加を続ける医療費の大きな部分を占めています。
人工透析の血液透析療法をうけるためには、週2~3回の通院と、1回あたり3~5時間が必要になります。これでも腎臓の代行は不十分なため、薬による補助の他、食事や運動による生活改善が必要になります。
人工透析はあくまでも代替治療、対症療法でしかありません。腎不全を直す方法は腎臓移植しかないので、これを選択しない限り人工透析は一生続くことになります。生活上の制限や合併症のリスクともずっと付き合うことになり、患者にとって大変つらい状態です。
人工透析の4つの原因
人工透析の直接の原因は急性、慢性問わず腎不全です。そして腎不全になる原因が、間接的に人工透析の原因ということになります。主な人工透析の原因について見てゆきましょう。
糖尿病
腎不全の原因になる病気(原疾患=げんしっかん)で最も多いのが糖尿病です。正確には糖尿病性腎症(とうにょうびょうせいじんしょう)です。
糖尿病の高血糖で、腎臓内部の血管の内皮細胞が損傷して、老廃物が排出しにくくなります。そしてタンパク質が尿に漏れるようになり、むくみ、息切れなどの症状が出るころにはかなり進行しています。
原発性腎症
腎臓自体に障害が起こって病気になるものです。このうち慢性糸球体腎症は2番目に多い原疾患になります。他に腎硬化症、多発性嚢胞腎などがあり、根本的な治療法がなく多くは慢性腎不全に進行します。
腎硬化症
腎臓にも動脈硬化が起こります。原因は高血圧、脂質異常、痛風を起こす高尿酸血症などで、腎機能が低下して腎不全につながります。透析患者になる原因では第3位の多さです。
脂質異常症についてはこちらを参考にして下さい。
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自己免疫疾患
膠原病、リウマチなどの自己免疫疾患から二次性の腎疾患であるループス腎炎になり、難治性の場合慢性腎不全に進行します。4番目に多い原疾患です。
その他
人工透析にまで至る可能性はあまり高くありませんが、扁桃腺炎、妊娠中毒症、結石、風邪や、発熱、感染症、ガンなどが引き金になって腎機能低下、腎炎を起こし腎不全につながることがあります。
気になる人工透析患者の4つの死因
人工透析を受けている人は受けていない人に比べて寿命が短いといわれます。日本透析医学会の調査では、透析患者の平均余命は、同じ年齢の人のおおむね半分だったとされています。心不全や感染症など、重い合併症になる頻度が高いことが原因と言えます。
たとえば男性の平均寿命は約80歳です。現在50歳の人の余命はあと30年ですが、透析患者だと15年しかないということです。では透析患者の人はどんな病気で亡くなることが多いのでしょうか。
心不全
何らかの理由で心臓のポンプ機能が落ち、全身に酸素を送れなくなって死亡します。腎不全の透析患者では水分の排出がうまくいかず、心臓や血管内に溜まってポンプ機能が働かなくなります。その結果心不全で突然死に至ることになります。
またカリウムの排出も滞り高カリウム血症になります。すると不整脈が起きやすくなって、心停止で死亡するリスクが高くなります。
感染症
透析患者は腎不全なので、厳しい食事制限があります。そのためバランスの取れた食事がしにくく、栄養障害が起こりやすくなります。すると免疫力が落ちて細菌やウイルスの影響が強く出て、肺炎など死亡率の高い感染症にかかりやすくなります。
悪性腫瘍(がん)
透析患者は腎臓がんにかかることが多いとされます。ただ、透析で頻繁に病院にかよい検査もするので比較的に見つけやすく、完治することも多いです。
脳血管障害
脳出血、脳梗塞とも、透析患者はそうでない人の2~3倍発症率が高いとされます。理由は動脈硬化が早く進行することです。透析患者はカルシウムやリンの血中濃度が高くなり、血管に付着して動脈を硬くする原因になります。
また水分が排出しにくく、体の組織に溜まると高血圧になります。このために高血圧による動脈硬化、脳出血のリスクが高くなります。
脳出血の前兆についてはこちらを見て参考にして下さい。
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人工透析には食事療法も重要
人工透析は完全に腎臓の働きを代行する能力はありません。尿毒症や合併症を防ぐには食事療法などで働きを補助する必要があります。食事によって調整すべきポイントとしては、次のようなものがあげられます。
✅ たんぱく質の制限…糖質や脂質は体内で分解されても腎臓の負担になるような老廃物は出ませんが、たんぱく質が分解されると多くの老廃物ができます。そして腎臓の負担が大きくなります。
腎不全の腎臓ではこの老廃物を排出する能力が落ちています。負担をかけないように、また合併症を防ぐためにもたんぱく質を必要以上に摂りすぎないよう制限することが重要になります。
たんぱく質が多い食品には肉や魚、卵や大豆製品、乳製品があります。乳製品は同じく制限対象であるリンも多いので、特に要注意です。また米や麦にもたんぱく質が多いので、糖質だと思って安心してはいけません。
✅ 塩分制限…塩分の排出能力が落ちているので、食事で摂りすぎると高血圧やむくみが起こります。また塩分をとると水分も欲しくなって、水分制限にも支障が出ます。
✅ 水分制限…尿を作り出せなくなっているので、水分が体に溜まりやすくなります。むくみが起こり心不全など合併症のリスクが出てきます。食事の分も含めて1日1ℓ程度に抑えます。塩分の制限ができていれば、水分の過剰はおこりにくくなります。
✅ カリウム制限…カリウムも過剰になりやすく、高カリウム血症でしびれ感や嘔吐のほか、不整脈から心停止が起こったりします。多く含まれる果物、豆類、生野菜、芋類の摂りすぎには注意が必要です。
✅ リン制限…過剰になると動脈硬化が進み、脳梗塞や心筋梗塞の原因になります。また骨粗鬆症の原因にもなります。乳製品、インスタント食品、加工食品に多く含まれます。たんぱく質の制限が守られていれば、連動してリンもおおむね制限されています。
✅ カロリー確保…カロリー不足になると、身体の組織のたんぱく質から補うようになります。するとたんぱく質を摂ったのと同じことになるので、脂質・糖質で十分なカロリーを確保します。穀物はたんぱく質が多いので、脂質を中心にします。
カリウムの過剰摂取による問題についてはこちらを参考にして下さい。
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まとめ
人工透析を受けている人は30万人を超えています。これだけ多いと身近にも何人かは思い当たる人がいるのではないでしょうか。当事者でないとありふれた病気などと軽く考えがちですが、実情をよく見るとなかなか大変なことですね。
人工透析は一生ものとは、よく言われる言葉です。その通り、始めたら一生続けることになり、制限だらけの不自由な生活を強いられます。普段は目立たない腎臓ですが、日頃から無理をさせないように節制して、いつまでも元気でいてもらいましょう。
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