アデノイド顔貌の治し方【手術から矯正方法まで詳しく解説】
<監修医師 まっちゃん>
「アデノイド顔貌」と言われてもピンとこない人の方が多いのではないでしょうか。
しかし、アデノイド顔貌は日本人に比較的多く見られるもので、放置すると美容上の問題ばかりでなく、健康上の問題も生じます。
今回はそんなアデノイド顔貌を取り上げ、外見的特徴や症状、合併症、治療・改善方法について説明します。
気になる所から確認してみよう
アデノイド顔貌とは
そもそもアデノイドとは鼻の奥(喉の上の方)にあるリンパ組織のことで咽頭扁桃(いんとうへんとう)とも言い、口蓋垂(こうがいすい)の裏側にあります。
アデノイドは幼児期の5歳頃に最大になり、その後成長とともに小さくなる組織です。通常大人になると表面からは見えなくなります。
このアデノイドが異常に大きくなること(肥大化)をアデノイド増殖症、アデノイド肥大、咽頭扁桃肥大と言います。単にアデノイドと言うこともあります。
アデノイドが大きすぎると、鼻から息を吸う通り道が狭くなってしまうため、鼻呼吸ができなくなり、常に口呼吸となります。口呼吸になると、細菌やウイルスが侵入しやすく喉、耳、鼻の不調に陥りやすくなります。
さらに、この状態が長期間に及ぶと、口呼吸をしやすいように骨格が変形していき、アデノイド顔貌という何となくしまりのない特徴的な顔貌になってしまいます。
口呼吸についてはこちらを参考にして下さい。
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アデノイド顔貌の5つの外見的特徴
アデノイド顔貌になると、口呼吸が常態化することで骨格が歪み、輪郭、鼻、口、顎、歯並びに問題が生じます。
面長になる
顔の筋肉の発達が不十分なため、顔全体が下に下がってしまい、面長になります。また、頬の下側がぷくっとたるんでいるようになります。
鼻の下が長い
鼻の下は長くなります。また、生まれつき鼻が低い人や鼻穴が小さい人も、鼻呼吸がしにくいという理由から口呼吸となり、アデノイド顔貌になりやすくなります。
口が開いていることが多い
口呼吸となるため、いつもポカンと口が開いていることが多くなります。無理に閉めようとすると、顎に縦ジワができます。
また、唇はめくれ上がって厚く突出(たらこ唇)したようになります。
たらこ唇についてはこちらを参考にして下さい。
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二重顎になる
口呼吸を続けることで顔の筋肉が弛緩し(緩んでしまう)、二重顎になります。また、下顎が引っ込んだ状態となり、顎と首のラインが曖昧になります(顎がほとんどないような印象)。
歯並びが悪い
顎が小さくなるため、上下の歯の噛み合わせが浅くなったり、噛み合わなくなります。また、前歯の歯並びがデコボコになります。
口呼吸を続けていると口周辺の筋力が低下し、前歯に舌が押し当てられるために出っ歯になります。
アデノイド顔貌に見られる症状とは
ここではアデノイド顔貌の人に起こる症状について説明します。
口呼吸になる
これまで述べてきたように、アデノイド顔貌とは口呼吸が常態化したことによって起こる骨格の変化です。
口呼吸をしていると無意識で開口(口を開けた状態のこと)することが多く、口腔内が乾燥しやすくなります。口腔内が乾燥すると口臭、虫歯、歯周病の原因となったり、風邪も引きやすくなります。
食事のときに音を立てる
食事のときも鼻呼吸が難しく口呼吸になるため、くちゃくちゃと音が出ることが多くなります。
いびきが大きくなる
アデノイド顔貌になると顎が小さく、下顎が引っ込んだ状態になっているため、舌を支える範囲が狭くなり、沈下(舌が下に落ちやすくなる)しやすくなります。
すると睡眠時に舌が気道を塞ぎ、いびきを大きくかくようになったり、重症化すると睡眠時無呼吸の原因となります。
睡眠時に無呼吸の時間が長くなると脳内に十分な酸素が送られないため、脳が休息できず、疲労感が抜けないということを招きます。
いびきの対処方法についてはこちらを参考にして下さい。
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鼻づまりが起こりやすくなる
アデノイドが肥大すると鼻からの空気の通り道が狭くなるため、鼻が詰まったような違和感があったり、鼻声にもなりやすいです。
悪化すると合併症の危険性もある
ここでは、アデノイドによって引き起こされる様々な合併症について説明します。
急性中耳炎・滲出性中耳炎
アデノイドが異常に肥大すると、耳管(じかん)開口部という穴(鼻の奥にあり、耳に通じている穴です)を塞いでしまうため、急性中耳炎や滲出性(しんしゅつせい)中耳炎を引き起こすことがあります。
急性中耳炎の主な症状は、突然起こる耳の痛み、耳だれ、発熱、難聴などです。滲出性中耳炎とは中耳に滲出液が溜まってしまう病気で、主な症状は難聴です。
大人であれば耳が詰まった感じ、自分の声が響くなどということを訴えられます。しかし、子供には難しく、呼びかけてもあまり返事をしない、テレビの音を大きくする、音に耳を近づけるというような現れ方をします。
中耳炎の症状についてはこちらを参考にして下さい。
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副鼻腔(ふくびくう)炎
上記の中耳炎と並んで、副鼻腔炎もアデノイドの異常肥大によってよく起こる病気です。これは鼻からのどへの空気が遮断されるために起こると考えられています。
副鼻腔炎の主な症状は鼻水、鼻づまり、臭いが分からないなどです。
※特に6歳くらいまでの子供で急性中耳炎、滲出性中耳炎、副鼻腔炎を繰り返し起こしている場合は、アデノイドが大きくなりすぎていることがあるため注意しましょう。
睡眠時無呼吸症候群
アデノイドや口蓋扁桃(こうがいへんとう:俗に言うのどちんこ)の肥大によって空気の通り道が狭くなり、慢性的な呼吸障害や睡眠時無呼吸症候群を引き起こすことがあります。
睡眠時無呼吸とは、睡眠中の無呼吸(10秒以上呼吸が止まる状態)が1時間当たり5回以上または一晩(7時間)に30回以上ある状態のことで、それによって引き起こされる様々な症状を睡眠時無呼吸症候群と言います。
寝ているときの主な症状はいびき、ときどき息が止まり大きな呼吸で再開する、むせるなどです。
起きているときの主な症状は熟睡感がない、常に疲労感がある、のどが渇く、倦怠感、頭痛、寝起きが悪い、集中力の低下などです。
虫歯・歯周病
見出し3でも述べたように、アデノイドが肥大して口呼吸をするようになると、口の中が乾燥しやすくなるため、虫歯や歯周病にかかりやすくなります。
手術は最後の手段。アデノイド顔貌の治し方
アデノイドの大きさは耳鼻科でレントゲン検査や内視鏡検査を受けることによって調べることができます。ここでは、アデノイドやアデノイド顔貌の治療法について説明します。
風邪などによる一時的な炎症がある場合
風邪やインフルエンザによって一時的にアデノイドが炎症を起こし、大きくなっている場合は、抗生物質や消炎鎮痛剤を使用してアデノイドを小さくします。
アデノイド肥大による合併症が起こっている場合
アデノイドの肥大によって見出し4に挙げたような合併症がある場合は、合併症への治療を行います。
アデノイド肥大による合併症が重症または難治性の場合
アデノイドの肥大によって起こる合併症が重症の場合、あるいは薬などによる治療を行っても合併症を繰り返してしまうような場合は、手術によってアデノイドを取り除くという方法をとります(アデノイド切除手術)。
手術自体は難しいものではありません。ただし、アデノイドは免疫に関わる器官でもあるため、手術が必要かどうか、また手術するタイミングなどについては耳鼻科の専門医に相談しましょう。
矯正グッズを便利に使ってアデノイド顔貌を改善しよう
ここではアデノイド顔貌を改善・予防するための方法を御紹介します。
意識して鼻呼吸をする
起きているときは、意識して口は閉じ、鼻から息を吸って吐くようにしましょう。とても単純なことですが、口呼吸が習慣化している人には辛く感じるかもしれません。
口の周りの筋肉を鍛える
アデノイド顔貌になるとぽかんと口を開けていることが多くなります。そこで口周りの筋肉(口輪筋)を鍛えて、口を閉じやすくするトレーニングをしましょう。
具体的には割り箸を唇で咥えて(歯ではなく唇で咥えるのがポイントです)、一定時間キープします。最初は1分から開始し、徐々に時間を伸ばしていきましょう。
また、ガムを噛むのも筋トレになり、口が閉じやすくなります。このとき左右バランス良く噛むようにしましょう。
どちらかの歯に偏って噛んでしまうと、骨格が歪む原因となります。カロリーの気になる人は無糖のガムにすると良いでしょう。
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あいうべ体操をする
表情筋を鍛えるトレーニングを行うために「あいうべ体操」を取り入れると口が閉じやすく、フェイスラインもすっきりしてアデノイド顔貌の改善が期待できます。
「あ」はできるだけ大きく口を開けます。「い」は口を横に広げて、首の筋がピーンと張るように意識します。「う」はタコの口のように唇を前に出します。「べ」のときは舌を前にできるだけ出しましょう。
寝ているときの無呼吸や口呼吸を改善する
アデノイド顔貌になると睡眠時に無呼吸の状態になりやすいため、改善するための様々なグッズを使用するのも良いでしょう。
鼻腔拡張テープを使用すると鼻からの空気の通り道を確保するのに役立ちます。
マスクを着用して、口呼吸ではなく鼻呼吸をしやすいようにします。この場合は口だけを覆うようにして、鼻はマスクから出しましょう。
同じように口にテープを貼ると口呼吸を抑制して、鼻呼吸を促します。専用の口閉じテープが薬局等で入手できます。
歯列矯正や手術を受ける
アデノイド顔貌になると噛み合わせが悪くなったり、歯並びが悪くなります。そのため、費用や時間がかかりますが歯列矯正を行うことによって、歯並びや噛み合わせの問題は解消できるでしょう。
具体的な費用や矯正にかかる時間は個人によって異なるため、矯正歯科のある医院を受診し、相談しましょう。
しかし、片方の歯で噛む癖や口を無意識に開けてしまう人は、せっかく歯列矯正を受けても再び歯並びや噛み合わせに悪影響が出てしまうため、これらの癖を直すトレーニングも並行して行う必要があります。
また、最も治療費を要しますが、子供ほど骨格の矯正が期待できない大人の場合は整形手術というのも一つの方法でしょう。
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