アリセプトの3つの副作用や効果まとめ【飲み合わせに注意!】
<監修薬剤師 日髙宗明>
アリセプトという薬をご存知ですか?
アリセプトには、「アルツハイマー型認知症」や「レビー小体型認知症」の進行を緩やかにする効果があり、認知症で悩む患者さんやご家族をサポートしてくれています。
ただし、副作用や飲み合わせなど、注意しなければいけないことが多い薬でもあります。
アリセプトの副作用について、効果や注意したいことと一緒に見ていきたいと思います。
アリセプトの効果
どんな薬?
アリセプトとは、ドネペジル塩酸塩の商品名です。製薬会社である“エーザイ”によって開発され、1999年から日本で販売されています。
アリセプトは形状がいろいろあるので、患者さんの状態に合わせて選ぶことが可能です。
✅ OD錠:口の中で溶けるタイプの錠剤です。
✅ ゼリー剤:嚥下障害のある人でも飲み込みやすいタイプ。はちみつレモン風味だそうです。
✅ ドライシロップ:水に溶かして飲むことができるタイプです。
アセチルコリンに作用
アリセプトは、アルツハイマー型認知症またはレビー小体型認知症の進行を緩やかにする薬です。
これらの認知症は、脳内の神経伝達物質の一つである「アセチルコリン」が減少してしまうことにより起こります。アセチルコリンが減少してしまうのは、アセチルコリンエステラーゼという酵素が分解していくため。
アリセプトは、アセチルコリンエステラーゼの働きを抑制することで、アセチルコリンの分解を防ぎ、濃度を高めてくれるのです。
アセチルコリンの濃度が高まれば、神経の伝わりが良くなり、認知症の進行を遅らせることができますね。
そもそも認知症ってどんな病気?
高齢者に多い「認知症」とは、脳の細胞が死んでしまったり、ちゃんと働かなくなってしまうことにより起こるもの。それにより、神経の命令がうまく伝わらず、心身に様々な障害が出てしまうのです。
認知症の症状というと、まず思い浮かぶのが記憶障害ではないでしょうか。ただの物忘れと違い、きちんと記憶することができないので、「忘れてるよ!」と教えても、思い出すことは基本ありません。
ほかにも、判断力低下や、見当識障害といって自分の置かれている状況を正しく理解することができなくなってしまったりします。
それに加えて、本人の性格や環境なんかが影響して、以下のような症状が見られるようになります。
✅ 妄想
✅ 幻覚
✅ 暴力をふるう
✅ 徘徊する
✅ うつ状態
✅ 不安感
✅ 無気力
また、認知症患者さんには、失禁もよく見られます。
失禁してしまう原因も様々で、トイレの場所が分からなくなったり、おしっこに行きたいという感覚が分からなくなってしまったり。そのため、家族のサポートが欠かせません。
このように、認知症の症状というのは、人や、その時々の状況で大きく違ってくるものなのです。
アリセプトが効く認知症は2種類
ところで、認知症には大きく分けて4種類があることをご存知ですか?
「アルツハイマー型認知症」、「レビー小体型認知症」、「脳血管性認知症」、「前頭側頭型認知症」の4種類です。
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アリセプトが効果を示すのは、その中の「アルツハイマー型認知症」と「レビー小体型認知症」の2種類です。
まず、アルツハイマー型認知症。これは、認知症の半数以上を占めるタイプで、女性に多く見られます。特殊なたんぱく質(アミロイドβ)が溜まってしまい、脳の細胞が破壊されてしまっている状態です。
アルツハイマー型認知症は、早期に薬を投与することで、進行を遅らせることが十分に可能です。
なので、「おかしいな」と気付いたら、早めに病院を受診しましょう。通常と違う物忘れや無気力、無関心などで気付くことが多いようです。
もう一つ、レビー小体型認知症は、アルツハイマー型に次いで多い認知症で、男性に多く見られます。こちらも特殊な物質(レビー小体)が脳内に溜まってしまい、脳細胞を破壊することが原因です。
アルツハイマー型と違い、物忘れよりも、“いるはずのない虫が見える”“遠くにいるはずの子供が帰ってきた”などの幻覚・幻視が目立って現れます。
また、パーキンソン病のような症状(手のふるえ、筋肉のこわばり、ふらつきなど)も見られ、バランスが取れなくなる姿勢反射障害での転倒には要注意です。
アリセプトの副作用
消化器症状
✅ 食欲不振
✅ 嘔気・嘔吐 ✅ 下痢 ✅ 腹痛 |
アリセプトは、飲み始めや増量した時に、消化器症状の副作用が起こることが多くなっています。ただし、軽ければ数日~1週間で治まってくるので、様子を見ながら服用を続けます。
もし症状が重い場合には、医師と相談して、服用を中止するか、消化器症状を緩和させる薬を飲むような処置を取ります。
重篤な副作用
また、稀にですが、重篤な副作用が出ることもあるので、症状の変化には注意しておき、少しでも気になることがあれば医師や薬剤師に相談するようにしてください。
✅ 徐脈・不整脈・失神(脈の異常や動悸、めまいなど)
✅ 狭心症・心筋梗塞・心不全(心臓病の人はこれらを誘発する可能性あり)
✅ 脳出血・脳血管障害(突然死の可能性あり)
✅ 胃潰瘍・十二指腸潰瘍(胃痛や下血、吐血など)
✅ 肝炎、膵炎、腎炎などの臓器の炎症
✅ 血小板の減少(出血が止まりにくくなる)
✅ 錐体外路障害(運動失調、振戦、不随意運動など)
✅ 横紋筋融解症
✅ 呼吸困難
レビー小体型認知症の場合は、パーキンソン病のような症状が出たり、もともとそういった症状があった人は悪化したりすることもあります。
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悪性症候群
アリセプトの服用により、向精神薬の重篤な副作用として知られる「悪性症候群」が見られることもあります。
これは、アリセプトのアセチルコリンへの作用が影響していると言われ、確率的には低いですが、放置しておくと命に関わることもあるので注意しましょう。
✅ 動かなくなって無言になる
✅ 体の硬直
✅ 嚥下困難
✅ 血圧上昇、頻脈
✅ 発汗
これらの症状に加えて、発熱が見られるようなら悪性症候群の可能性が高くなります。
アリセプトの飲み合わせに注意しよう
アリセプトは飲み合わせ注意が多い!
アリセプトには、相互作用で危険な症状が出てしまうものや、アリセプトの作用が増強されたり弱まったりしてしまうものが多くあるので、お薬手帳は必ず持ち歩くようにしましょう。
まずは、レラキシン(成分名:スキサメトニウム塩化物)。これは筋弛緩薬ですが、相互作用により重篤な呼吸抑制が起きてしまうことがあります。
次は、イトリゾールやエリスロシン、クラリスなどの抗真菌薬や抗生物質。風邪などで処方されることが多い薬ですが、代謝拮抗作用により、アリセプトの作用が増強し、副作用が出やすくなってしまいます。
テグレトールやアレビアチン、フェノバールなどの抗てんかん薬や睡眠薬は、逆にアリセプトの効果が弱まってしまうことがあります。
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ほかにも併用に注意が必要な薬はたくさんあるので、自分が何の薬を飲んでいるのかは、お薬手帳などでしっかり把握しておき、その情報を医師や薬剤師とも共有しましょう。
アリセプトの飲み方は?
アリセプトは消化器系の副作用などが心配されるので、1日3mgから始め、徐々に症状に合わせて増量していきます。
薬の形状によっても飲み方は違ってきますが、基本的には1日1回の服用になるので、忘れずに飲むようにしましょう。もし飲むのを忘れても、2回分まとめて飲んではいけません。
効果は飲み始めてから3か月ほどで現れてくるので、すぐに効果が現れなくても疑わないこと。
また、これは認知症を完治させる薬ではありません。症状の進行を和らげる“対症療法”なので、飲み続けることが大切です。
飲むのをやめてしまうと、症状の進行が急激に進んだり、薬を飲まなかった場合のようにどんどん進行していってしまったりする可能性があります。
認知症は薬などでの治療のほかにも、家族による介護などのサポートが重要になってきます。
家族や親しい人が認知症になって、今までは見られなかった症状が現れると、ショックを受けてしまう人もいますし、コミュニケ―ションを取るのが難しくて困り果ててしまうという人もいます。
ただ、それでも認知症患者さんとまっすぐに向き合っていかなくてはいけません。まずは認知症とはどのような病気なのかを一人一人が知って、受け入れていくことが大切でしょう。
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