イカアレルギーで胃痛や下痢がつらい【症状や対処法を詳しく解説】
<監修食生活アドバイザー 藤沢 淳司>
今回はイカによる食物アレルギーがテーマです。前半部分はイカに含まれる栄養素や効能について説明します。
後半はイカによる食物アレルギーが起こるとどんな症状が出るのか、またその原因や対処法についても説明します。
気になる所から確認してみよう
和食の定番。イカってこんな生き物
まず、イカそのものについて説明します。イカはタコなどと同じく軟体動物に分類され、世界中の海に生息しています。
マグロなどの外敵から身を守るために、瞬時に周囲の海藻などと色や形を似させることができます。これを擬態(ぎたい)と言います。
イカには様々な種類(科)がありますが、一般的に食卓に上るのは①コウイカ科(墨イカ、真イカなどとも言います)、②ヤリイカ科、②アカイカ科(スルメイカ科とも言います)の3科です。
イカの部位は、耳(えんべらとも言います)、胴体、軟骨、10本の下足(げそ)に分かれます。
胴体の内側には内臓があり、調理に使用しない場合は取り除きます。軟骨には目が付いており、下足には吸盤が付いています。
イカには多くの健康成分が含まれていた
イカは100gあたり約88kcalで、高タンパクかつ低脂質であり、比較的低カロリーな食品です。
ちなみにイカ一杯の可食部は約300gになります。
特徴的な栄養素としてはアミノ酸に似た成分であるタウリン(100g当たり356mg)が含まれています。
タウリンはタコ、アサリ、牡蠣など魚介類にも多く含まれる成分で、コレステロール値下げる働きがあります(これについては見出し3で説明します。)
イカにはその他にも、ビタミンB6(100g当たり0.02mg)、ビタミンB12(100g当たり6.5μg)、ビタミンE(100g当たり3.1mg)、
ミネラル成分であるナトリウム(100g当たり300mg)、カリウム(100g当たり270mg)、
マグネシウム(100g当たり54mg)、リン(100g当たり250mg)、亜鉛(100g当たり1.5mg)、銅(100g当たり0.34mg)、セレン(100g当たり42μg)などを多く含みます。
イカを食べて4つの病気対策に
イカには見出し2で述べたように様々な栄養素が含まれています。中でも特徴的かつ豊富に含まれる成分はタウリンです。
タウリンを摂取することで、肝機能の強化、脂質異常症、高血圧症、糖尿病の4つの病気などに対して効果が期待できます。
タウリンと肝機能
タウリンは以下に述べる3つの理由から、肝臓の働きを高める働きがあります。具体的には、まず肝臓から分泌される胆汁酸の分泌を盛んにします。
胆汁酸には血液中のコレステロールの排出を促進する作用があるため、胆汁酸の分泌が増えると血液中のコレステロールが下がるということになります。
そのため、脂質異常症を改善したり、脂質異常症が原因となって起こる動脈硬化の予防を期待できます。
次に、タウリンには肝臓内に溜まった中性脂肪の排出を促進する作用があるため、脂肪肝(肝臓内に中性脂肪が過度に蓄積した状態)の予防・改善が期待できます。
さらに、タウリンは肝細胞の再生を促進します。アルコールを摂取すると、分解する際に肝臓に負担がかかります。
しかし、タウリンを摂ることによってその分解速度を速め、肝臓の負担を軽減して再生を促進します。これによって二日酔いを防止・軽減する効果があります。
このように肝臓の働きが高まると、肝臓本来の働きである老廃物の解毒・排出、糖質・タンパク質・脂質の代謝も促進されるため、疲労回復やダイエットにも貢献できます。
ただし、タウリンは水に溶ける成分のため、調理する際は注意しましょう。また、肝臓の働きを高める目的であれば、1日当たり500mg程度を摂取するようにすると良いでしょう。
タウリンとノルアドレナリン
タウリンにはノルアドレナリンというホルモンの分泌を抑制する働きもあります。
ノルアドレナリンは興奮・戦闘・活動の際には欠かせないホルモンで、血圧や心拍数を増加させたり、血糖値を上昇させるなどの作用があります。
したがってイカに含まれるタウリンを摂取することによって、高血圧予防、糖尿病予防の効果が期待できます。
イカで胃痛や下痢に?!イカアレルギーの症状とは
イカと食品表示法
2015年に施行された食品表示法において、イカは、バナナや牛肉・鶏肉・豚肉などと並んで「特定原材料に準ずる20品目」に指定されています。
特定原材料とは卵、小麦などの7品目が指定されており、重篤な食物アレルギー症状を起こすことが明らかになっているものです。
イカは特定原材料に比べると重篤な症状を引き起こすことが少ないものの、注意が必要な食品と言えます。
食物アレルギーとは
特定の食品が体内に入ると、人によってはそれを異物(敵)と見なしてしまうことで、体外に排除するために免疫反応を引き起こします。
この免疫反応を食物アレルギー反応と言います。また、特定の食品はアレルギーを引き起こす物質ということで、アレルゲンと言います。
食物アレルギー症状にはアレルゲン摂取後60分以内に起こる「即時的アレルギー(Ⅰ型アレルギー)症状」と摂取後数時間から数日後に起こる「遅延型(Ⅳ型アレルギー)アレルギー症状」があります。
食物アレルギーの各症状
食物アレルギー症状は、
①皮膚症状(痒み、むくみ、蕁麻疹など)、②呼吸器症状(呼吸困難、鼻水、せき、のどが締め付けられるような感覚など)、
③消化器症状(胸焼け、胃痛、腹満感、腹痛、嘔吐、下痢など)、
④循環器症状(血圧低下、顔面蒼白、冷や汗、手足が冷たいなど)、
⑤神経症状(疲労感、倦怠感、無気力、頭痛、集中力低下)、
⑥その他の症状(関節痛、筋肉痛、肩こり、にきび、目のくま、喘息など)など様々な症状が出る可能性があります。
即時型アレルギーでは蕁麻疹などの皮膚症状が最も多く、次いで呼吸器症状や消化器症状も見られます。
また、即時型食物アレルギーではアナフィラキシーショックに注意しなければなりません。
アナフィラキシーショックを引き起こすと、意識障害、血圧低下、呼吸困難、チアノーゼ(爪や唇などが紫色になる)などの循環器症状が起こり、適切な対処が遅れると命に関わることがあります。
一方、遅延型アレルギーでは消化器症状、神経症状、その他の症状が現れることが多いです。
食物を摂取して時間が経過してから症状が出ることや、毎日好んで食べている物(米、パンなど)が原因になっていることも多いことなどから、発見が遅れることがあります。
食物アレルギーの検査方法
食物アレルギーを引き起こしている食品を特定するには、血液検査を行います。
即時型アレルギー反応の場合であれば
「特異的IgE(アイジーイー)抗体検査」を、
遅延型アレルギー反応の場合であれば
「特異的IgG(アイジージー)抗体検査」と、検査項目に違いがあるため、
医療機関を受診した際は「①食品名や量、②症状が現れるまでの時間」を医師に伝えるようにしましょう。
イカアレルギーの考えられる原因はコレ
イカによる食物アレルギーの原因となる物質にはいくつかあります。
アレルギー反応を引き起こすトロポミオシン
トロポミオシンとは、イカやタコなどの軟体動物、エビ・カニなどの甲殻類の筋肉内に含まれるタンパク質です。
これらのトロポミオシンが体内に入ることによってアレルギー症状を起こします。(したがってイカに対してアレルギー症状が出る人は、エビやカニに対しても症状が出るケースが多く見られます。)
アレルギー様反応を引き起こすトリメチルアミンオキシド
トリメチルアミンオキシドとはイカ、アサリ、エビ、タラなどの魚介類に含まれる旨味成分で、アレルギー様症状を引き起こすことがあります。
また、アレルギー様反応を起こす物質を仮性アレルゲンと言います。
実は、トロポミオシンなどのアレルゲン(抗原)は、体内に入って直接アレルギー反応を起こすのではなく、抗原抗体反応という「免疫反応」の結果、様々なアレルギー症状を起こしています。
これに対してトリメチルアミンオキシドなどの仮性アレルゲンは抗原として作用することがないため、体内に入ってもIgE抗体などが作られることもありません。
したがって、抗原抗体反応という免疫反応も起こりません。そのため、アレルギー様反応は厳密には食物アレルギーとは呼ばずに「食物不耐症」と呼ぶことがあります。
アレルギー様症状は、アレルギー症状に比べると症状の程度が軽く、持続時間も短いことが多いです。しかし、皮膚の痒みや腹痛などの症状自体は現れるため注意しなければなりません。
ちなみにトリメチルアミンオキシドは、時間が経過によって魚介類の鮮度が落ちると、トリメチルアミンという物質に変化します。トリメチルアミンは魚独特の生臭さの原因となります。
イカアレルギーが発症した時の対処法3選
アナフィラキシー症状を起こした場合は救急要請
顔面蒼白、チアノーゼ、冷汗、血圧低下、呼吸困難などのアナフィラキシー症状が出た場合は命に関わるため、救急車を呼びましょう。
救急隊が到着するまでの間に、医師から処方されているアドレナリン自己注射薬(商品名:エピペンなど)がある場合はそれを投与するようにしましょう。
自己注射は本人または家族が行うことが基本ですが、緊急の場合はその限りではなく、周囲の人も行うことが可能です。
原因となる食物を食べない
イカが原因であるということが明白であれば、食べない(食物除去療法)を行うのが最大の治療法です。
どうしてもイカを食べたい場合は、少量のみ体内に入れて徐々にアレルギー反応が起こらないようにする経口減感作(けいこうげんかんさ)療法という治療法があります。
しかし、この治療法は専門医(アレルギー科、呼吸器内科など)の指示する量・頻度で行う必要があるため、自己判断で行うのは止めましょう。
また、健康な状態で少量のみ食べた際にはアレルギー症状が出なくても、体調不良時や睡眠不足の状態で、一度に大量に摂取するとアレルギー症状が誘発されることがあります。
適度な量の摂取を心がけること、体調不良時には摂取しないことが大切です。
腸内環境を整えて免疫力を向上させる
アレルギー反応に関わる免疫細胞の7割は実は腸で作られています。つまり、腸内環境を整え、免疫細胞が過剰に免疫反応を起こさないようにすると、アレルギー症状も緩和できます。
腸内細菌には腸によって良い働きをする善玉菌、悪い働きをする悪玉菌、善玉菌と悪玉菌の多い方の見方をする日和見菌の3種類の菌が存在します。
アレルギー症状を緩和するには、腸内の善玉菌を増やすことが必要です。
善玉菌を増やすために積極的に摂りたい食品としては、①乳酸菌飲料、②ヨーグルト、③キムチ、④納豆、⑤味噌、⑥漬物などがお勧めです。
この他にも善玉菌のエサとなる食物繊維を多く含むもの(野菜、海藻、豆類など)も一緒に摂るようにしましょう。
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