オスラー病の治療法のまとめ【繰り返す鼻血や肝臓の異常に注意】
<監修医師 春田 萌>
オスラー病という病名を聞いた事があるでしょうか?おそらく、初めて耳にされる方が多いと思います。
これは難病に指定されている遺伝性の疾患です。今回はオスラー病の症状や治療法について解説していきたいと思います。
オスラー病とは?
オスラー病は遺伝性出血性末梢血管拡張症または遺伝性出血性毛細血管拡張症と呼ばれる疾患です。全身の血管に異常がおこり、出血したり毛細血管が拡張したりします。
他にも奇形な血管になってしまうこともあり人によって様々な症状がでます。症状はちがっていても常染色体優性の遺伝性の疾患なので発症している親から子へ遺伝します。
オスラー病の親からオスラー病の子供が生まれる可能性は50%です。男女差はなく、日本では5000〜8000人に1人がこの遺伝子を持っていると報告されています。
遺伝子を持っているからといって必ず発症するわけでもありません。日本での実際の患者数は10000人程度ではないかと考えられています。
オスラー病の症状
鼻血
様々の部位からの出血と、それによる症状が起こります。
✅ 鼻出血
✅ 肺・気管支からの出血
✅ 脳出血
鼻出血の場合、個人個人で状態は異なりますが必ずしも徐々に悪化するとは言えず軽快する場合もあります。季節によって変わったり女性の場合月経前に頻度があがったり妊娠中に悪化したり閉経後に軽快する事もあります。
脳出血の前兆についてはこちらを参考にして下さい。
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動静脈奇形
毛細血管を通さず動脈から静脈へ、異常な血管の塊(ナイダス)を介して直接流れ込む病気です。
血管の圧が高い動脈から静脈へ流れているため静脈は圧が高く拡張していきます。頭痛や意識障害、嘔吐や麻痺などの局所症状のほか、けいれんがおこることがあります。
皮膚や粘膜の毛細血管の拡張
顔面、口唇、舌、耳、眼球結膜、体幹、四肢、手、指などに認められます。粘膜病変のほうが皮膚病変よりも出血しやすいとされています。程度は軽症から輸血が必要な程度まで様々です。
オスラー病にかかる原因
常染色体優性遺伝によって発症します。常染色体優性遺伝をする疾患では最も高い割合で発症します。
責任遺伝子で現代までに確認されているものは、ENG(Endoglin)、ACVRL1(ALK1)、SMAD4の3つです。最近この3つ以外の責任遺伝子の存在がいくつか推定されているが確定はしていません。
原因遺伝子は、臨床病型としてENG異常によるものはHHT-1、ACVRL1異常によるものはHHT2と分類され、HHT1では肺および脳動静脈奇形が、HHT2では肝動静脈奇形が多く併発する事が知られています。
オスラー病の治療法
皮膚病変
スポンゼルの圧迫、レーザー照射、皮膚粘膜移植がおこなわれます。鼻腔内の末梢血管拡張に対してレーザーなどによる粘膜焼灼術が行われ、重症例には鼻粘膜皮膚置換術が行われます。
他にもホルモン治療、止血剤の投与、軟膏治療などがおこなわれますが、決め手にはかけています。
鼻血から見る身体の異変についてはこちらも参考にして下さい。
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動静脈奇形
経カテーテル塞栓術療法、外科的手術、定位放射線治療などがおこなわれます。
肺動静脈奇形には常に破裂の危険があり奇異性塞栓症の予防、低酸素血症の改善の目的で経カテーテル塞栓術療法が行われています。肺動静脈奇形の流入血管径は3mm以上が塞栓術の適用です。
脳動静脈奇形については症候性の場合か大きさが1〜3cmの場合に外科的治療、血管内治療、定位放射線治療を組み合わせた集学的治療が行われます。
無症状の小さな動静脈奇形は経過観察される事が多いです。肝動静脈奇形の塞栓術療法は場合によって致死的となるため現在のところ積極的におこなわれていません。
肝不全の場合は内科的に治療され重度になった場合には肝移植が検討されます。
消化管出血
内視鏡的レーザー照射などがおこなわれます。消化管出血の場合、バリウム検査では突出や陥没した病変がないために検出が困難で、内視鏡検査でなければ発見できません。
内視鏡検査をしても胃炎と間違われる事があるので要注意です。重症の消化管出血に対して、内視鏡的レーザー照射(アルゴンプラズマ凝固療法)が行われます。
鉄欠乏性貧血
鉄剤が処方されます。消化管出血の場合潰瘍のように下血、吐血ではなく、日常的に少しずつ出血しています。検査をすると高度の慢性貧血のことがあるので鉄剤を服用することがあります。
貧血についてはこちらも参考にして下さい。
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オスラー症候群は遺伝性の疾患なので、家族内で誰か1人が診断されると芋づる式に診断がでることがあります。
発症した約1割の患者さんは脳出血、脳梗塞、脳腫瘍をおこして若年で命をおとしたり大きな障害をもったりしています。
ただ、この人たちは発症する前に診断されると病変によっては予防的治療を受ける事が可能になります。
遺伝性ということで、家族に申し訳ないと気に病んでいる方もおられますが、遺伝性だからこそ発症する前に診断を受けられたり予防的治療をうけられたりするという前向きな姿勢で病気にむきあう方法も大切です。
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