サインバルタの離脱症状とは【効果から副作用まで詳しく解説】
<監修薬剤師 サリー>
うつ病の治療薬には多くの種類があります。
代表的なものでは、三環系、四環系、SSRI、SNRI、NaSSA、SARIなどがあげられます。
今回はこれらの中でも、うつ病治療の第一選択として使用されているサインバルタについて見ていきましょう。
気になる所から確認してみよう
サインバルタとは
サインバルタはデュロキセチン塩酸塩を有効成分とした抗うつ剤になります。
処方においてはサインバルタカプセル20mg~30mgを症状に合わせ適宜増減していくことになります。
サインバルタは、うつに関係すると言われる神経伝達物質のうちのセロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害します。
この2つの神経伝達物質が細胞内に回収されるのを阻害することで両者を増やす様に働くことが特徴です。
このためSNRI「セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬」に分類されています。
効果が出やすく副作用が少ないため、うつ病治療の第一選択薬として使用されているお薬です。
サインバルはうつ病治療に効果的
ではサインバルタがどのようにしてうつ病に効果があるかについて見ていきましょう。
それにはまず、うつ病のメカニズムについて見ていく必要があります。
うつ病のメカニズム
私達が日常生活を営むためには、意欲、気力、集中力、関心、食欲や性欲、衝動性などといった様々な情動的な行動が必要です。
これら精神活動をコントロールしているのが、セロトニンやノルアドレナリン、ドーパミンといった「モノアミン」と呼ばれる脳内化学物質によるものです。
これらモノアミンはストレス状況下で多量に分泌されます。
しかしストレスのオン・オフがコントロールできている間は良いのですが、ストレス状態が過度に継続してしまうことでモノアミン産生が間に合わなくなり、枯渇状態に陥ってしまいます。
この結果、必要な時に必要な量のモノアミンを放出することができなくなり、慢性的な無気力、気分の落ち込み、憂鬱、集中力の低下、決断力の低下、無関心といった症状が起きてしまいます。
これらの症状が数日~数週間に渡って続く病気がうつ病になります。
治療に使われるお薬の作用と副作用
うつ病が引き起こされるメカニズムが分かったところで、次に治療法について見ていきましょう。
現在行われているうつ病治療は「休息」「薬物治療」の2つを大きな柱としています。
「休息」でストレスを緩和させ脳の機能を正常化し、「薬物治療」で不足しているホルモンを補おうという治療法です。
うつ病治療で使われるお薬は、精神活動に影響を与えるノルアドレナリンやセロトニン、ドーパミンといったモノアミン量を増やすことに重点が置かれています。
その主な作用は、モノアミンの再取り込みを抑制することで、相対的にモノアミン量を増やそうというものです。
別の言い方をすると、モノアミンの「産生・吸収・分解」過程の「吸収・分解」を阻害することで、モノアミンが減らないようして量を増やしていくことになります。
現在うつ病の治療に使われるお薬には、三環系抗うつ剤、SSRI、SNRI、NaSSA、SARIなど様々な物がありますが、開発時期が古いものほど作用が強力な反面、副作用が強く出てしまうという特徴があります。
逆に新しく開発されたお薬は、副作用が少なく効果を期待できるとも言えます。
このためうつ病治療の原則として、新規開発された薬をまず使用し、効果が薄い時や難治例に対しては従来の抗うつ薬を使っていくという治療方法が主流になっています。
サインバルタは比較的新しいお薬
ではサインバルタはどうなのかというと、2010年に発売開始された比較的新しい抗うつ薬になります。
その後も新しい抗うつ薬が開発される中、その優れた作用と少ない副作用から未だにうつ病治療の第一選択薬として使われているほどです。
サインバルタは、セロトニンとノルアドレナリンの二つを増やすことを目的としているため、不安や気分の落ち込みを改善し、やる気や集中力を向上させます。
サインバルタはある種の痛みに有効です
サインバルタの作用は抗うつ作用だけではありません。一部の神経痛に対して、特に有効な鎮痛作用があることがわかってきました。
人間には痛みを感じる神経と、反対に痛みを抑える神経が存在します。
この痛みを抑える神経系には、ノルアドレナリンに関する神経とセロトニンに関する神経の2系統あります。
サインバルタは選択的にノルアドレナリンとセロトニンに作用するため、これらの痛みを抑制する神経を活性化することができるのです。
このため心因性の痛み、糖尿病性の神経痛、慢性腰痛症、変形性関節症、繊維筋痛症といった神経系を原因とした疼痛に対して処方されることがあります。
安全性の高いサインバルタでも副作用は多い
抗うつ薬の中でも副作用が少ない事で知られているサインバルタですが、中には重い副作用を起こしたという報告もあります。以下に注意すべき副作用を挙げました。
軽度の副作用
✅ 吐き気、嘔吐
✅ 眠気、めまい、立ちくらみ
✅ 口渇感
✅ 頭痛
✅ 便秘
これらの症状は内服開始初期から現れやすくなっています。
内服を続けていくうちに改善していくことが多いですが、症状が辛い場合は医師に相談するようにしましょう。
また、持病がある人や高齢者の中には
✅ 排尿障害
✅ 発疹、全身の痒み
✅ 動悸や胸部不快感、血圧上昇
✅ 性機能障害
が現れることがあります。
特に排尿障害と胸部症状は一度担当医に相談するようにしてください。
重度の副作用
以下の症状が出たら要注意です。
✅ 強い不安感、興奮、不眠、体の震え、発熱、異常発汗
✅ 体の硬直、飲み込み動作ができない、40度近くの発熱、異常発汗、頻脈、意識障害 ✅ けいれん ✅ 皮膚や白目の黄染、全身の痒み、むくみ ✅ 尿がほとんど出ない ✅ 急激な血圧上昇、頻脈、強い頭痛、動悸 ✅ 全身のむくみ、全身発赤、呼吸困難、蕁麻疹 ✅ 全身の皮膚、粘膜に発疹、発赤、水疱、排膿、ただれ、発熱などが出現する |
上記の症状が出現した場合、内服を直ちに中止し病院を受診するようにしてください。
抗うつ薬は内服量を変えると離脱症状が出現することがあります。
これはサインバルタだけに限らず、すべての抗うつ薬に当てはまります。自己判断で内服量を変えたりせず必ず担当医に相談するようにしましょう。
また、持病を持っている人やすでに内服している薬がある場合は必ず医師や薬剤師に報告するようにしてください。
内服時の注意点
✅ アルコールや一部の薬と併用すると作用が強まることがあります。薬剤師に確認をとるようにしてください。
✅ 子供や妊婦、授乳中の産婦さんには基本的に投与することは推奨されていません。しかし症状や状況に合わせて内服を行う事もあります。
✅ 持病を持つ人や高齢の人の中には思わぬ効果が出る事があります。上記の副作用を感じたら医師に相談するようにしましょう。
✅ 抗うつ剤はカフェインと一緒に摂る事で副作用が強く出現し、作用が減弱することがあります。
内服するときは水で飲むようにし、内服後は数時間カフェインを摂る事を控えましょう。
✅ サインバルタ内服後は眠気やめまいが出る事があります。運転や高所での作業、危険地帯での作業などは行わないようにしましょう。
サインバルタの離脱症状って何?
離脱症状はサインバルタだけにとどまらず、すべての抗うつ薬で内服を減薬、断薬した時に現れる症状になります。
そのメカニズムは、抗うつ薬の血中濃度変化に体がついていけない事が原因となって、様々な不快症状が出現すると考えられています。
特に抗うつ薬は神経系に影響を与えるお薬のため、急な増減は自律神経のバランスを狂わせやすいからでしょう。
しかし必ずしも全員に離脱症状が現れるわけではなく、医師の指導の元で少しずつ減薬を進めていても出現することもあれば、全く症状なく減薬できたということもあり、個人差が大きいようです。
代表的な離脱症状は、耳鳴り、めまい、吐き気と嘔吐、知覚の異常、イライラ、電気が走るような感覚、などです。
症状は減薬・断薬してから数日~数週間続くことがありますが、その後改善していきます。
離脱症状の対処は必ず専門医と相談して
抗うつ薬は辛い副作用や薬に依存したくないという気持ちから、できればあまり飲みたくないという人もなかにはいるでしょう。
しかし自己判断での減薬や断薬はあまりお勧めできません。
というのも、離脱症状とうつ病の再発は区別が難しく、判断を間違うと折角改善したうつ病が悪化するリスクを伴うからです。
基本的にうつ病の治療には数か月から数年かかると言われています。
しかし内服を開始すると一時的に症状がよくなるため病気が治ったと勘違いし、自己判断で断薬・減薬してしまう人が多いと言います。
そしてこの時期の断薬・減薬をしてしまった人の中で、うつ病を再発する人の確率は半数以上にも及ぶのです。
逆に医師の指示の元でしっかりと治療を続けた人の再発率は10~20%未満とされています。
もう一つ、自己判断による断薬・減薬をお勧めしない理由に、実はサインバルタは抗うつ薬の中でも血中半減期が短い薬にあたるため、慎重に減薬・断薬を進めていかなければ離脱症状が起こりやすい薬なのです。
特に長期に渡ってサインバルタを内服している人や以前離脱症状を起こした人、若年者などでは離脱症状を起こしやすい状態にあるようです。
離脱症状が起こりやすい時は、他剤併用しながらゆっくりと減薬していくことになります。
サインバルタは副作用が少なく導入が簡単な反面、減薬や断薬がやや難しいお薬になっています。
お薬の形状も製品の都合上カプセルタイプしかないため、微量な調整ができない事も原因の一つでしょう。
だからといってカプセルを開けて量を調節しようとすると、消化管でのお薬の吸収速度が速まってしまい大変危険です。絶対に開けないようにしてください。
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