透析に欠かせないエポジンを解説【副作用やネスプとの違いも紹介】
<監修薬剤師 藤沢 淳司>
今回はエポジンという薬剤とそれを利用する際の注意点であったり、実際にどの様な際に利用するのかということを解説していきたいと思います。
気になる所から確認してみよう
エポジンとは
エポジンとは別名、エポエチンベータとも呼ばれ腎性貧血に利用される薬剤のことです。
腎性貧血とはその名前からも分かるように、腎臓の機能が低下することによりエリスロポエチンの生産量が低下することにより生じる貧血です。
また、最近では今まで輸血などでしか治療方法がなかった未熟児における貧血である未熟児貧血に対しても治療が承認され更に幅広い利用方法がなされています。
また、人工透析を行っている方によく専門医から利用されることが多いのですが、投与方法としては静脈内投与であったり皮膚への皮下投与で利用されています。
つまりは適応症としては透析施行中の腎性貧血、透析導入前の腎性貧血、未熟児貧血に対してあり、製剤としてはシリンジタイプのものとアンプルタイプのものがあります。
次の章以降では実際に利用される人工透析についてや、エリスロポエチン製剤の同効薬について簡単に紹介していきたいと思います。
人工透析とはどんな医療なのか
人工透析とはどの様なものかを説明する前に、腎臓がどのような機能を果たしているかを説明しなければいけません。
みなさま腎臓がどのような機能を果たしているかご存知でしょうか?基本的には血液中の汚れた成分をきれいにする働きがあるのです。
つまり、腎臓で老廃物を血液ろ過によって除去する血液浄化を行うのです。その他には水分のコントロールなども行っています。
しかし、そんな腎臓も腎機能が低下するとそのよう活動を行えなくなりコントロール不能に陥ります。それを機械で人工的に行うのが人工透析と言われるものです。
基本的には腎臓の稼働率10%以下になると透析の対象となると言われています。
人工透析にも何種類か種類があり、血液透析療法、腹膜透析療法などがあります。ここでは詳しい内容に関しては割愛させていただきます。
人工透析中には何点か注意しなければならないことがあります。まず一つ目は金額の問題です。
人工透析を利用すると様々な機械や薬を利用しますので、非常に高額になります。もちろん助成はありますが、それでも高額な金額となりますので注意が必要となります。
次に長時間治療にかかってしまうという点です。どうしても治療に要する時間がかかってしまいます。
その他には合併症になりやすいという点です。例えば、二次性副甲状腺機能亢進症による骨の合併症であったり、透析アミロイドーシスによる手根管症候群などが起きやすくなります。
腎性貧血になると3つの症状に要注意
腎性貧血の場合には通常の貧血とは違い、ゆっくりと進行することが多いです。
そのため通常の貧血より症状が出にくいというのは特徴の一つともなりえます。
女性の方であればよく鉄欠乏性貧血などは聞かれたことがあるかもしれません。これは鉄分が不足して起きる貧血のことです。
それに対して、腎性貧血とは腎臓の機能低下によりホルモン分泌が低下しエリスロポエチンやヘモグロビン値が低下することが起きてきます。そして主な症状には以下の様なものがあります。
1. 疲れやすい
これは貧血に起こりやすい症状の1つとなります。ただし、貧血を病気として有している方はそもそも疲れていることが多いですので、これだけでは貧血と言えるかは分からないところがあるかもしれません。
2. 動悸、息切れ
貧血の症状も悪化してくると動悸や息切れを引き起こしてくることがあります。このような症状になった場合には特に注意が必要となります。
3. めまい
これもまた、貧血の症状によく見られる症状の1つとなります。
貧血とは様々な要因によって起こることが知られているのですが、血液の濃度が薄くなりそれに準じてめまいなども起きてくることが注意する点の1つと言えます。
エポジンの使用に注意が必要な人とは
1. 各種梗塞のある患者
エポジンには副作用に血栓塞栓症を引き起こす可能性のあることが知られています。そのために、心筋梗塞や肺梗塞、脳梗塞の既往歴のある方には注意が必要です。
2. アレルギー症状がある
これはどんな方にとってもそうではあるのですが、アレルギー反応や副作用などの薬物過敏症などを有している人にとっては少し注意が必要となります。
これは一度は使用してみないと分からないことではありますが、エリスロポエチン製剤に対して副作用歴のある人にとってはかなり注意が必要です。
その他にも、もともとお薬に対してよく副作用が発生すると言う人にとって、多少なりとも注意が必要となります。
3. 血圧に関連した疾患を有している
このエポジンの代表的な副作用の1つに血圧の上昇が挙げられます。そのため、高血圧症を持っている方は特に注意が必要です。
また、直接的というよりも間接的な影響とはなるのですが、脳室内出血や脳実質内出血傾向のある方にとっては、この様な副作用が発生しやすいため特に注意が必要です。
4. 年齢的に注意が必要な方
これは薬剤を使用する上で特に重要なことなのですが、年齢的に注意が必要となる方もいます。それは高齢者であったり妊婦、小児への投与となります。
具体的には少し話が複雑にはなっていますが、基本的には有益性が考慮されない限り、つまり使用した際にデメリットよりもメリットが優先される場合のみ使用されるべきだとされています。
また、未熟児貧血にも使用されることはあるのですが、未熟児貧血に対しても注意が必要となります。
エポジンの5つの副作用
ここでは、代表的な副作用についていくつか紹介していきたいと思います。また、それに加えてその周辺症状についても簡単に紹介したいと思います。
1. 血圧上昇
エポジンを始めとした様々なエリスロポエチン製剤の代表的な副作用として血圧の上昇が挙げられます。
また、この血圧上昇はその他の様々な周辺症状を引き起こします。例えば、頭痛であったりひどい状態であれば高血圧性脳症、脳出血などを引き起こすこともありますので注意が必要です。
2. 肝機能障害
エポジンは肝機能を低下させる様な副作用を有しています。AST、ALTの異常を引き起こすこともありえます。
また、肝臓というのは基本的に沈黙の臓器と言われることもあるくらい、状態が悪化するまで症状が出ないこともあるのですが、そんな中でも黄疸などの症状がでると分かりやすいです。
3. 各種血栓症
この薬剤の少し怖い副作用として血の塊を作りやすいという特徴があります。
そのため、それに準じて知られている副作用として、特に心筋梗塞であったり、肺梗塞、脳梗塞が知られています。この様な副作用は命に重大に関わってきますので特に注意が必要です。
4. 皮膚症状
皮膚症状が出るということも特徴の1つです。特に痒みを伴うそう痒感があります。
5. 赤芽球癆
これは、他の薬剤からすると少し珍しい副作用ですが、血液の様々な成分に影響を与えるのもこの製剤の特徴の1つです。
エポジンとネスプを比較して違いを知ろう
ここではエポジンとヒトエリスロポエチンのアミノ酸配列の一部を改変したネスプという薬剤の違いについて紹介したいと思います。
どちらも静脈や皮下に投与するという点では似ているのですが、少し違いがあります。
ただし先に簡単に説明しておきたいのですが、基本的にお薬は使う人によって効果が違いますので、全てが同じとは言えないのは事実です。
1. 作用時間
これは大きな違いの1つでもあります。エポジンの場合には作用時間が短いために何度も注射をうたなければならなかったところ、ネスプになるとその回数が減りました。
というのも作用時間が伸びたからです。また、最近出されたミルセラは更に長い作用時間となりました。
2. 適応症
同じ薬ではありますが、実は適応症に多少違いがあります。例えばネスプには骨髄異形性症候群による貧血に対しての効果があるのに対して、エポジンにはその様な適応はありません。
3. 値段
値段も多少違いがあります。治療の回数などが多少違うのでひとえには言えませんが、基本的には同じような治療を行えばエポジンが高くなり、ネスプの方が安くなる傾向にあります。
4. 薬効
薬の効果にも多少違いはあることが報告されています。
さきほども少し話はしましたが、基本的には同じ薬効の薬ではあるのですが、お薬によっては最近ではジェネリックなども出てきておりそのあたりも微妙に違いあります。
まとめ
今回は簡単ではありますが、エポジンについて解説させていただきました。みなさまの参考に少しでもなればと思います。
ただし、もっと詳しく知りたい方は近くの看護師や医師、薬剤師に相談してみるとよいと思います。
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