トマトの食べ過ぎは要注意【低カロリーなのに太るって本当?】
<監修食生活アドバイザー 藤沢 淳司>
トマトはヘルシーで様々な栄養素も含んでいます。しかし一方で、トマトで太るという声も耳にします。
今回はトマトの栄養素や効果を整理し、食べ過ぎによるデメリットを説明していきます。
気になる所から確認してみよう
トマトは野菜か果物か?
トマトはナス科に属す植物で、その果実が食用として利用されています。原産は南アメリカのアンデス山脈で、世界には8000種以上の品種があるとされる緑黄色野菜の一つです。
日本では約120品種が栽培されていて、大きさも色も実に様々な品種があります。
日本では熊本県の生産量が全国トップになっており、全国シェアは14.3%(平成22年農林水産省より)です。
トマトはナス、きゅうりなどと同じく、夏に旬を迎えて栄養価が高くなる夏野菜です。
(品種改良によって果物並に糖度の高いトマトが開発されており、トマトは野菜か果物かといった議論もあるようですが、分類上は野菜です。)
トマトは低カロリーで栄養の宝庫
トマトは100g当たり19キロカロリーと低カロリーで、その中にはβカロテン540μg、ビタミンCが32mg、ビタミンEが0.9mg、カリウム290mg、食物繊維1.4gなどが含まれています(五改日本食品標準成分表より)。
βカロテン、ビタミンC、ビタミンEには体内で活性酸素という呼ばれる物質の活動を抑える働きがあります。これを抗酸化作用と言います。
活性酸素は、細胞や血管を傷つけてしまい、老化や動脈硬化などを促進します。
食物繊維は食事に含まれる糖質や脂質の吸収を穏やかにして(食後高血糖や食後高脂血症の予防)、排出を促進する働きがあります。
そのため、脂質異常症や糖尿病などの生活習慣病の予防や改善に効果的です。さらに、腸内の善玉菌のエサになって腸内環境を整えてくれるため、便秘改善効果もあります。
また、トマトと言えば赤く、酸味があるのが特徴です。
トマトを赤くしているのはリコピン(100g当たり7~12g)という色素成分(抗酸化作用など)があるためで、酸味があるのはクエン酸(100g当たり約0.4g)という成分(疲労回復効果など)によるものです。
さらにトマトの皮の部分には、ポリフェノールの一種であるケルセチンという成分(血流改善効果・血管強化)が含まれています。
トマトの嬉しい4つの効果
トマトには見出し2に挙げた成分の他にも多くの栄養素を含んでいますが、ここではβカロテン、ビタミンC、ビタミンE、カリウム、食物繊維、リコピン、クエン酸、ケルセチンから得られる効果について説明します。
様々な生活習慣病の予防だけでなく、肌を内側からケアする効果も期待できます。
抗酸化作用
トマトには、抗酸化作用をもつ成分がいくつも含まれています。βカロテン、ビタミンC、ビタミンE、リコピン、ケルセチンが抗酸化作用を持つ成分です。
見出し2でも触れましたが、体内で発生する活性酸素の働きを抑えるため、体内の細胞が傷つくのを防いでくれます。
これによって、血管壁にコレステロールが付着するのを防いで血管を強化し、血流を改善(血液サラサラ)します。
こうして血流が改善すると、肌の老化防止(美白作用、シミ・しわ・たるみ防止)、風邪・インフルエンザなどの感染症の予防、アレルギー症状の緩和、動脈硬化(動脈硬化は心筋梗塞や脳卒中などの生活習慣病のリスクを高めます)やがんの予防などの様々な効果が期待できます。
ダイエット効果
トマトに含まれる13-oxo-ODAという物質(脂肪酸に似た物質)には、肝臓での脂肪代謝を助ける働きがあり、血液中の中性脂肪を下げるという報告があります。
そのため、肥満や脂質異常症のある人にとってはお勧めです。
また、見出し2でも触れたように、食品に含まれる糖や脂質の吸収を穏やかにする作用、それらの排出を促進する作用、腸内環境を整える作用のある食物繊維が含まれています。
そのため、脂質異常症や肥満の予防・改善に加えて、糖尿病の予防や宿便の改善にも効果が期待できます。
高血圧予防
トマトに含まれるカリウムには、体内の余分なナトリウム(塩分)を尿として排出を促進する作用があります。
そのため、高血圧やむくみの予防や改善に効果的です。(※低血圧の人は、カリウムの過剰摂取は控えるようにしましょう。)
疲労回復効果
トマトに含まれるクエン酸は、体内の糖質や脂質のエネルギー代謝を促進するという働きがあるため、疲労回復を促進してくれます。
さらに、複数の抗酸化作用を持つ成分がトマトに含まれているため、その相乗効果もあって疲労効果を促してくれます。
食べ過ぎるとトマトで太るのはなぜ
トマトそのものは100g当たり19キロカロリーと低カロリーであるのに、「トマトを食べ過ぎると太る」という声を耳にするため、その理由として考えられるものを以下に述べます。
腹持ちが悪い
トマトは様々な栄養素を含んでいますが、その主な成分は水分です。そのため、腹持ちが悪く、空腹感からつい他の食品を食べてしまいがちになることが考えられます。
他の食品が高カロリー食品ばかりであれば、かえって太る可能性はあるでしょう。
代謝が低下する
東洋医学において、トマトは体を冷やす食品の一つとされています。そのため、冷えた生のトマトばかりを摂っていると、胃や腸を始めとした内臓が冷えます。
すると基礎代謝量(睡眠中や安静時でも消費されるカロリー)が低下していき、痩せにくく、太りやすい体質になるということが考えられます。
加工品の摂り過ぎ
トマトはサラダとしてだけでなく、ピザ、パスタ、ケチャップ、トマトジュースといった様々な料理・加工食品に使われます。
しかし、これらの糖質や脂質はトマト1個よりも多く、摂り過ぎはかえって太ることになるでしょう。
要注意!トマトの食べ過ぎは下痢や病気の元
ここではトマトの食べ過ぎが引き起こす病気や体調不良について説明します。
ちなみに腎機能の低下があるなど一部の人を除いて、1日1個(大)程度のトマト(あるいはトマトジュース1本)を摂取する分には問題はありません。(多くても1日最大3個までにしましょう。)
冷え
見出し4でも述べたようにトマトは体を冷やす食品です。冷えた生のトマトは体を冷やし、胃腸の冷えによる下痢を引き起こす可能性もあります。
全身が冷えていくと基礎代謝量も低下し、万病の元となります。特に冬場は、体を冷やさないように加熱調理したトマト料理を摂るようにしましょう。
低ナトリウム血症
トマトに含まれるカリウムはナトリウムの排出を促進します。高血圧やむくみを改善してくれる一方で、摂り過ぎすると血液中のナトリウム濃度が低下し、低ナトリウム血症を引き起こします。
低ナトリウム血症が進行すると、だるさ、吐き気、筋肉の痙攣(けいれん)などが起こります。
健康のためにトマトを継続的に摂取している人もいるかと思います。
しかし、カリウムを多く含む食品の摂り過ぎは、ストレスに対抗するホルモン(コルチゾール)を分泌してくれる副腎という臓器を疲弊させ、副腎疲労症候群を招きます。
副腎疲労症候群の主な症状としては、朝に弱い、慢性疲労、睡眠障害、情緒不安定、思考力・記憶力の低下などです。
柑皮(かんぴ)症
トマトやみかんの食べ過ぎによって皮膚が黄色くなることがあります。これは柑皮症といって、トマトなどに含まれる色素成分の摂り過ぎによるものです。
柑皮症は目に見えるものですので、症状が現れたらトマトの摂り過ぎと考え、摂取量を抑えるようにしましょう。
逆流性食道炎や胃食道逆流症を悪化させる
トマトの酸味成分であるクエン酸やリンゴ酸には胃の粘膜を保護する効果があり、ビタミンUには胃壁の修復効果もあります。
しかし、トマトの酸自体が強いため、摂り過ぎると胸焼けを引き起こし、逆流性食道炎や胃食道逆流症といった病気を悪化させます。
結石のリスクを高める
トマトはバナナやほうれん草と並び、シュウ酸という成分を多く含んでいます。シュウ酸は体内でカルシウムと結合し、シュウ酸カルシウムとして蓄積します。
摂り過ぎによって体内に蓄積していくと、蓄積した場所(臓器)によって胆嚢(たんのう)結石、尿管結石、腎臓結石などと呼ばれます。
体外に結石が排出される際は、激しい痛みやときに吐き気を伴うことがあります。
プラス食材と一緒にトマトを食べて効果アップ
ここではトマトとの食べ合わせが良いとされる食材を紹介します。
高血圧の改善を期待する人
トマトと一緒にカリウム含有量の多い食品を摂ると良いでしょう。一般的に野菜や果物にはカリウムが豊富に含まれますが、例えば、パセリ、カリフラワー、バナナなどがお勧めです。
但し、低血圧気味の人はカリウム含有量の多い食品を重ねて食べるのは控えましょう。
疲労回復効果を期待する人
疲労回復を目的とするのであれば、クエン酸に加えて、ビタミンB1やビタミンCも積極的に摂りたい栄養素です。
ビタミンCを多く含む食品はいちご、アセロラ、ピーマン、ブロッコリーなどです。ビタミンB1を多く含む食品は豚肉、ハムなどです。
抗酸化作用を期待する人
高い抗酸化作用を持つリコピンは熱に強く、油と一緒に摂ると吸収率が上がります。また、朝に摂ると吸収率が高まるという研究データもあります。
そこで、オリーブオイルやアボカド、牛乳などと一緒に摂るとリコピンの持つ作用を高め、美肌効果、感染症予防、動脈硬化予防などに効果が期待できます。
トマトはトマトジュースやケチャップなどの加工品でも構いません。
血行促進作用を期待する人
トマトは生のままで摂取すると体を冷やしてしまうため、加熱調理して摂取しましょう。
にんにく、しょうが、長ネギ、玉ねぎ、根菜類(にんじん、ごぼうななど)などは体を温める食材とされているため、一緒に摂ると良いでしょう。
※一般的に色が濃く、寒い地域で栽培される食材が体を温める食材とされます。
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