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トライポフォビアの原因や症状とは【診断の難しい恐怖症】

<監修医師 豊田早苗>

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数ある恐怖症の中でも、集合恐怖症、という恐怖症があるのをご存じでしょうか。

日本では蓮コラといった作品が元になって、数年前から有名になりました。別名トライポフォビアと呼ばれるこの恐怖症は、男性では約10%、女性では約20%という割合で存在していると言われています。

 

恐怖症は放置していると他の恐怖症を引き起こす引き金になることがあります。今回はトライポフォビアについてみていきましょう。

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トライポフォビアとは

 

トライポフォビアとは、小さな粒上の集合体に対して、過剰な嫌悪や恐怖を感じてしまい、不快感、めまい、吐き気、血圧低下といった身体症状を引き起こしてしまう恐怖症になります。

 

トライポフォビアの名前が付けられたのは2005年の事で、アイルラインド人女性がこの症状と恐怖症に名前をつけたのが始まりです。

 

ギリシャ語のtrypo「穴あけ」と英語のphobia「恐怖症」を合わせた造語になります。日本では「集合体恐怖症」といった俗称で呼ばれており、2009年前後に「蓮コラ」として有名になりました。

 

対象となる集合体には、自然界の中では蜂の巣や蓮の実などがそれにあたり、人工物ではパンケーキが焼ける時の穴や熱した牛乳の表面に現れる粒々などになります。

 

トライポフォビアは、その症状から恐怖症の分類に属することになりますが、現時点では精神疾患には正式分類されていないため、医学的な認知はありません。

 

しかしその症状があまりにひどく、日常生活に支障をきたすレベルであれば治療を行う事もあります。

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どんなものを目にすると発症するのか

 

では、どのようなものに対してトライポフォビアが起こりやすいのでしょうか

 

その対象には、同型の物が連続して並ぶ物から、不規則な形がランダムに密集している姿まで様々です。ここでは実際の対象物を例に挙げながら説明していきます。

✅ 蓮の実

✅ 蓮コラ

蓮の実はレンコンの穴の中に、黒い点のある実を押し込んだような形状をしています。一見すると蜂の巣の中に幼虫がいるような印象を受けますが、穴の大きさが不揃いです。

 

一部の研究では、この穴の配列と形が有毒生物の模様と似ているために嫌悪感を抱くのではないかとされています。

 

そして蓮コラは蓮の実をコラージュした画像の事です。日本では蓮の実を女性の写真とコラージュした画像で有名になりました。

 

✅ イチゴの表面

✅ レンコンの輪切り

✅ オレンジの果肉や果実の断面図

✅ ごま

✅ 花托 など

 

こちらは自然界にある粒々の集合体です。

イチゴの表面にある粒や、レンコンを輪切りにした時の穴の並び、柑橘系果物の断面図などに不快感恐怖感を抱く人もいるようです。

 

✅ 蛙、鮭の卵

✅ 蜂の巣

✅ 蜘蛛の巣 など

 

こちらも自然界の造形物ですが、卵を守る粘膜に対する気持ち悪さ、蜂や蜘蛛といった虫に対する恐怖感も関係しているかもしれません。

 

✅ 水玉模様

✅ 大量のビーズやおはじき など

 

一つ一つを見ると、可愛らしく恐怖とは無縁なもののようですが、大量に集合していると虫や何かの卵を連想させ不快感があります。

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トライポフォビアの症状の特徴はコレ

 

トライポフォビアは言ってみれば恐怖症の一つです。

恐怖症には知られているだけでも対人恐怖症、高所恐怖症、閉所恐怖症、先端恐怖症などがありますが、どれにも共通していることは、極度のストレス状態からくるトラウマや自律神経の乱れが原因となって症状を引き起こしている点です。

 

強い不安感や恐怖感

対象を視界に入れると、恐怖や不安を感じます。ごく軽度から重度まで、人によって感じ方は様々ですが、ひどい時には失神やパニック発作を起こす人もいるようです。

 

また恐怖や不安は連鎖しやすく、関連するものにまで恐怖を感じるようになってしまうこともあります。

 

極度の不安に襲われる症状についてはこちらを参考にして下さい。

【関連記事】
不安神経症の症状診断チェック【効く薬や原因を知って治療しよう】

 

動悸、息切れ、喉の渇きなど

人は恐怖や不安を感じると、その状況に対応しようと交感神経が優位になります。交感神経では、心臓を力強く動かし、筋肉を収縮させ、恐怖に対抗しようとします。

 

しかしその反応が行き過ぎる事で、動悸や息切れ、震えといった症状が現れるようになってしまうのです。

 

他にも、喉がカラカラになる、汗をたくさんかく、鳥肌がたつなどの反応が起こります。

 

吐き気、嘔吐

恐怖によって交感神経優位になると、通常であれば胃腸の動きは停滞するのが普通です。しかし恐怖症の場合は、逆に消化器症状が亢進し、吐き気や腹痛を訴える人が多くなります。

 

これは過度のストレス(恐怖対象)に直面することで、自律神経の働きに乱れが生じたために起こる現象です。

 

専門分野では血管迷走神経反射と呼ばれており、交感神経と副交感神経が同時に働くという状態が起きているため起こる症状になります。

 

その結果、恐怖によって手足に冷感を感じるにもかかわらず、汗を大量にかき、腹痛や吐き気に悩まされるという複合的な症状が現れます。

 

失神

血管迷走神経反射の症状の中でも、最も重症なものは失神です。最初は視界が徐々に暗くなる、手先が冷たくなるといった感覚の後、いきなり意識が暗転することがあります。

 

これは迷走神経反射の影響で、血圧が低下し脳血流量が減少したために起こります。

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原因に大きく関わる記憶を探る

 

トライポフォビアの原因には、幼少期の記憶や行動が原因となって起こるものが多いと言います。

 

しかし子供の頃は平気だったものが大人になって怖くなったというパターンもあるようです。ここでは原因となる経験や記憶についてみていきましょう。

 

幼少期のトラウマ

幼少期に体験した記憶が原因となって潜在的なトラウマとなっているパターンです。

 

例えば蜂に刺されて痛かった思い出から蜂の巣に対して強い恐怖を感じるようになった場合や、蛙や鮭の卵に強い不快を感じたためになっている場合などです。

 

また蕁麻疹や発疹が体にできているのを見て不快を感じ、トライポフォビアになってしまったというパターンもあります。

 

トラウマについてくわしくはこちらを見て参考にして下さい。

【関連記事】
PTSDの症状チェック!治療の方法と期間も解説!

 

遺伝子上の記憶

大昔の人は、生きていく上で危険を回避しながら生活しなくてはいけませんでした。特に有毒生物である毒蛇や蜂、毒キノコといったものには、近寄らないに越したことはありません。

 

このため、特定の特徴を持つ物体に恐怖や不安といった感情を潜在的に感じさせ、近づかないようにしていたと考えられています。

 

その情報が現代人の遺伝子にも残っているため、ある特徴を持つ物体に恐怖心を抱いているのだという考え方です。

 

ある研究によると、集合恐怖症を示す対象や画像には、有毒生物が持つ特徴が共通しているという結果が出ているようです。

 

ネット上の映像や画像の影響

近年有名になったトライポフォビアですが、日本で認知度が挙がった要因の一つにインターネット上でのコラージュ映像があります。

 

画像処理によって不快感を増すように作られた作品も多いため、その映像が原因で不快や恐怖を感じ、トライポフォビアになってしまったという人も少なくありません。

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他人に理解されにくい恐怖症。自己診断は要注意

 

トライポフォビア(集合恐怖症)は恐怖症に分類される名称になります。一言で恐怖症といっても、人によって症状や恐怖となる対象は様々です。

 

全く恐怖を感じない人からしてみると、理解が難しい疾患の一つになるでしょう。

 

他人に理解し難い恐怖症の具体例として、日本人に多く、海外の人に理解が難しい恐怖症「対人恐怖症」があります。

 

別名「あがり症」と呼ばれるこの恐怖症は、会議や発表会といった多数の人から注目を集める場面では、思うような実力を出せないといった症状で有名です。

 

対人恐怖症の原因は「人前でうまくできなかったらどうしよう」という不安が過剰に意識されることで起こります。

 

軽度の対人恐怖症であれば数をこなせば改善することができますが、ひどい場合には対人恐怖症が原因となって会議や発表会が恐怖の対象になり、さらには会社や学校への移動手段が恐怖の対象になる、といった風に、別の恐怖症を発症してしまう恐れもあります。

 

これは集合恐怖症にも同じ事が言えます。軽度の恐怖であれば自然に克服することが可能ですが、生活が困難なレベルであれば放置しておくことはあまり望ましくないと言えます。

 

また、現在ではインターネットで気軽に自己診断を行うことができるようになりましたが、なかには悪質なイタズラ目的で蓮コラや極端に不気味な画像をサイト内に設置しているサイトもあり、症状が悪化する危険性があります。

 

セルフチェックの際は、十分に気を付けて行ってください。

 

人の目が気になる心理についてはこちらを参考にして下さい。

【関連記事】
人の目が気になる原因はコノ病気かも【3つの克服法で解放されよう】

 

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トライポフォビアを克服しよう

 

見ないようにする

一番簡単で効果的な方法の一つです。自身が恐怖や嫌悪感を抱く対象を、視界に入れない、じっと見つめない、視線を逸らす、ことで考えないようにします。

 

またインターネット上でむやみに検索しないことです。ネット上では悪意のあるコラージュ画像なども多く、悪化させる原因になることもあります。

 

慣れてしまおう、エクスポージャー療法

これは一つ前の克服法と真逆の方法になります。恐怖や不安を感じる対象を、あえて見る事で慣れてしまおうというものです。

 

この方法はエクスポージャー療法、別名「暴露療法」とも呼ばれており、PTSDやパニック障害の正式治療法としても使われています。

 

やり方は恐怖や不安の対象となる物の中でも、一番“恐怖度が軽い物”から体を慣れさせていくというものです。

 

軽いものに慣れたら、次は恐怖度のランクが少し上がる物を見る、そして慣れたらまたランクを上げていき…と、最終的に克服してしまおうという方法になります。

 

しかしやり方を間違えると悪化させることもあるため、注意が必要です。不安ならば専門家指導の元で行うようにしましょう。

 

別の事を考える、別の事をする

恐怖によって身体症状が引き起こされる前に、別の事を考える、別の行動を起こすなども有効な手段です。恐怖の感情は、深く考えれば考える程に増幅していくという特徴があります。

 

例えば暗闇に対する恐怖ですが「暗闇で何も見えない」「何か潜んでいるかもしれない」「危害を加える物がいるかもしれない」と言う具合に、恐怖は妄想から膨らんでいく傾向があります。

 

この連鎖を止めるために、違う事を考えたり、別の事で体を動かし思考を中断するようにしてみましょう。

 

専門家の治療を受ける

トライポフォビアは精神疾患の認定は受けていませんが、恐怖症の一つでもあるため専門医による治療も可能です。生活に支障をきたすレベルの症状が出るようであれば専門医の治療を受けるようにしましょう。

 

集合体恐怖症は、画像技術が向上した現代の恐怖症と言えます。日常的な粒々の集合には何も感じない人でも、ネット上の画像を見たことでトライポフォビアを自覚する人も少なくありません。

 

インターネットで画像を閲覧する際などは、身体症状などに注意してみるようにしてください。

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