ヘマトクリット値が高い！【原因や改善策を分かりやすく解説】
＜監修医師 豊田早苗＞
血液検査の項目に必ず含まれているヘマトクリット値、この検査項目から一体何がわかるのでしょうか。
ヘマトクリット値は血液の濃度を表した数値です。この数値を参考にして様々な病気を予想していくことができます。
ここではヘマトクリット値の見方と異常時の治療についてみていきます。
気になる所から確認してみよう
ヘマトクリット値とは？
ヘマトクリットは、血液中における赤血球の容積の比率を表した数値で主に貧血検査時に指標となる値です。
ただしヘマトクリット値のみで病気の判定は行われず、必ずほかの検査項目と比較した上で判断されます。
一般的にヘマトクリット値が低くなると赤血球数とヘモグロビン量も減少します。
ヘマトクリット値にとって重要な赤血球の役割
赤血球は血液中に含まれる血球細胞の一つで、中にヘモグロビンという赤いタンパク質を含みます。
このヘモグロビンが血液を赤く見せています。ヘモグロビンは酸素と二酸化炭素と結びつく作用を持つため、赤血球が肺で酸素を受け取り、老廃物である二酸化炭素を肺へと運ぶのです。
ヘモグロビンについてくわしくはこちらを見て参考にして下さい。
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ヘマトクリットは、血液中における赤血球の体積比を調べる検査のため、赤血球が減少するとヘマトクリット値も低くなり、逆に数が増えるとヘマトクリット値も高くなってきます。
赤血球数が少なくなることを貧血、多くなりすぎることを多血症と呼びます。
貧血では酸素の供給が不足し低酸素状態に陥りやすくなり、多血症では血液がドロドロするため血栓ができやすく、血管がつまりやすい状態になってしまいます。
貧血についてはこちらを参考にして下さい。
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ヘマトクリット値の正常値を把握しよう
正常値
✅ 男性は４０～５２％
✅ 女性は３５～４４％
異常値の時
ヘマトクリット値は血液の濃さにつながっているため、低ければ血液が薄く、高ければ血液が必要以上に濃い事を意味します。
しかしヘマトクリット値は性別や年齢、環境に大きく左右されやすい検査項目のため、一度異常値が出ても他の検査項目に目立った異常が見られない場合は、再検査や要観察となることがあります。
特に、女性では生理前後や妊娠前後に正常を逸脱することがあり、心配する必要のない場合も多くあります。
生理中の身体の変化についてはこちらを参考にして下さい。
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ヘマトクリット値が高い４つの原因
ではヘマトクリット値が高くなってしまう原因には、どのようなものがあるのでしょうか。ここではヘマトクリット値が高い時に考えられる原因を挙げていきます。
脱水
ヘマトクリット値は血液の濃さを表しています。そのため値が高い場合には、まず脱水を疑いましょう。
これは血液中の水分量が減る事で、相対的に赤血球の量が増えてしまうためです。これを相対的多血症と呼びます。
脱水が原因であれば、水分を補えばすぐに正常値に戻るでしょう。ただしひどい下痢や嘔吐が原因の場合には経口摂取が難しいため、必要に応じて点滴による補水も必要となってきます。
真性多血症と二次性多血症
真性多血症では、血液に脱水傾向が見られなくても常に赤血球数が多い状態を言います。
赤血球が増える原因には、赤血球の産生が亢進している事が考えられます。真性多血症であれば血球細胞を生産している骨髄の異常、二次性多血症であれば肝臓や脾臓の腫瘍が原因となることもあります。
ストレスによるもの
ストレスにより多血症が起こる場合があります。
この場合の多血症は、脱水の場合と同じ相対的多血症です。
赤血球の数そのものは増加していませんが、ストレスにより交感神経が刺激されたことで血管が収縮し、血液量が減少したことで、相対的に血液中に占める赤血球の容積が増加し、ヘマトクリット値が高くなります。
酸素不足
体内に取り込める酸素の量が減少すると、体は赤血球の数を増やして酸素不足を解消しようとします。
このため酸素濃度が薄い高山地帯に住む人はヘマトクリット値が高い傾向にあります。アスリートが高山トレーニングをするわけは、この作用を利用し体内の酸素運搬能力を向上しようとする狙いがあるのです。
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また、愛煙家は肺のガス交換機能が落ちているため、ヘマトクリット値が高くなってきます。
特に注意したいのはヘマトクリット値が継続して高値を示している場合です。一過性に高値を示す場合は問題ありませんが、継続して高いようならば多血症を疑わなければなりません。
また、特定の疾患には二次的に多血症を引き起こすものもあるため、それらの特定にも役立ちます。
多血症の症状には、息切れ、めまい、のぼせ感、頭痛、易疲労、耳鳴りなどがあります。一見すると風邪のような症状に見えるため、早期発見が遅れることがあり、重篤な疾患を引き起こしてしまうことがあります。
真性多血症であれば早期治療を開始することで合併症の予防にかなり効果的と言われています。
ヘマトクリット値の検査方法
ヘマトクリット値の検査は、採血によって行われます。測定方法は2種類あり、血液を放置して自然溶血を待つ方法と、遠心分離機を使用する方法です。
自然溶血を待つやり方では、採血後の血液を一定時間そのままにしておくと、自然に溶血が進み上澄みと沈殿物に分かれます。
この沈殿物には血液中の血球成分が含まれるため、沈殿物と上澄み液を測定して検査する方法です。
もう一つの方法では、ヘマトクリット管を使って遠心分離機にかけ、強制的に溶血を引き起こすことで沈殿物を作り出していきます。
ヘマトクリット管内の血漿と血球を測定することで値を算出します。
ヘマトクリット値が高い時の４つの改善方法
ここでは、ヘマトクリット値が高値だった場合の治療法を紹介します。病院での専門的な治療から日常生活での注意点を挙げていきます。
病院での治療
治療には抗凝固薬の服用と、血液を抜く「瀉血」という治療方法があります。
瀉血は血液を一定量抜いてヘマトクリット値が正常値に近づくよう調整を行いますが、一度だけでは改善しないこともあるため、複数回にわたって行うこともあります。
上記の治療を行いながら、ヘマトクリット値上昇を引き起こしている原因疾患を探すことになります。
脱水に注意
前述したとおり、脱水は血液をドロドロにしてしまいます。
熱めのお風呂に長時間つかる、炎天下の作業、乾燥した部屋での活動などは脱水の要因になるため、こまめに水分補給をして脱水予防に心がけましょう。
注意点として、多量に汗をかいた後に水分のみの補給では低Na血症を引き起こしてしまうことがあります。経口補水液や塩をほんの少し入れるなどの工夫を行ってください。
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規則正しい生活
ヘマトクリット値が異常値を示す人の中にはストレスや不規則な生活習慣が原因の事があります。
特に肥満傾向の人に多いため、規則正しい生活とバランスの良い食事、質の良い睡眠をとるように心がけましょう。
また、適度な運動習慣を取り入れダイエットやストレス発散を行いましょう。
禁煙
喫煙には肺の機能低下から赤血球数の増加を招きます。ヘマトクリットの異常を指摘されたら、喫煙習慣を見直すようにしてください。可能ならば禁煙することが望ましいでしょう。
血液濃度が高い状態が続くと、血液内の血小板が固まりやすくなり血栓ができやすくなります。
血栓が血管内に詰まってしまうと、脳梗塞や心筋梗塞、深部静脈血栓症といった重大な病気に発展してしまうため、必ず適切な治療を受けるようにしましょう。
定期的に健診を受けるように心がけ、自分の体の状態を常に把握するようにしましょう。
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