レット症候群の特徴や顔つきを解説【2つの原因や症状をチェック】
レット症候群をご存じですか? まだ認知度が低く、あまり聞き慣れない病名だと思いますが、レット症候群とは自閉症スペクトラム障害の一つで、日本では小児慢性特定疾患とされている難病です。
今回はレット症候群の特徴や顔つきについて、またレット症候群になる原因や症状についても詳しく見ていきたいと思います。
レット症候群の特徴や顔つき
発症するのは女性
レット症候群とは、ほとんどの場合が女児に発症する進行性の神経疾患です。その確率は女児の出生率1万~1万5千人に対して1人です。妊娠周期や出産は正常であり、出生時の頭囲も正常です。
生後6ヶ月までは精神・運動ともに正常に発達するため、産後の検診や1ヶ月検診でこの診断がつくことはないでしょう。
妊娠中の胎児の成長についてはこちらを参考にして下さい。
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特徴的な仕草
この疾患の特徴としてあげられるのは、特徴的な手の動きです。手をもむ、手をたたく、手を口に入れるなど、独特な手の仕草からこの疾患が疑われることになります。
独特な顔つき
色白で丸顔、唇が赤い、目がきれいなどの特徴が顔にあらわれます。
レット症候群の原因
遺伝子の異常
レット症候群の原因となるMECP2(メックピーツー)という遺伝子です。80%~90%はこの遺伝子の異常によるものです。
MECP2は遺伝子発現制御に関わっており、神経細胞以外の細胞でも広く見られますが、MECP2の異常が脳神経特異的な疾患を引き起こす原因についてはまだ詳しく分かっていないのです。
そのほか、数%の非典型例ではCDKL5やFOXG1の異変によります。
細胞の異常
レット症候群の患者の突然死は、健常児の300倍にもなります。
マウスによる実験では、レット症候群と同じ遺伝子異常があるES細胞由来の心筋幹細胞を使って解析した結果、心筋細胞同士の情報伝達機能が正常に機能していないことがわかりました。
この結果は、レット症候群患者の突然死の原因を解明する手がかりになると言われています。
ポイント
この病気は突然変異により発症するものなので、親の遺伝子に問題があるわけではありません。つまり、2人以上の子どもがいる場合、1人が発症したからと言って他の兄弟姉妹も発症するということはありません。
レット症候群の症状
この病気は乳児期の早期に発症します。生後6ヶ月頃から発症するため、その頃になると疑わしいと感じられる症状が見られるかもしれません。
乳児期の症状
自閉傾向・筋力低下が見られます。おとなしくてよく眠る手のかからない子であることが多く、一見して正常と見られるため生後数ヶ月は見逃されてしまいがちです。
1期(生後6ヶ月~1歳6ヶ月)
精神発達遅滞が見られます。はいはいや一人歩きが遅れる、または喃語や有意後を発した後に言語発達が止まってしまいます。
姿勢ジストニアにより、筋肉が収縮したり硬くなったりするため、不随意運動が起こります。
精神発達遅滞についてくわしくはこちらを見て参考にして下さい。
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2期(1歳~4歳前後)
知的障害・後天性小頭症(頭囲が小さくなり顔つきが変化する)・言語能力の消失などが見られます。これまでに獲得した言語能力や運動能力が退行していきます。
小頭症についてはこちらを参考にして下さい。
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3期(2歳~10歳)
手の常同運動・呼吸の異常・歯ぎしり・てんかん・筋緊張の亢進による側彎などが見られます。てんかんは70~80%におこり、約30%は抗けいれん薬に抵抗性がある難治てんかんです。
この頃になると、2期で見られたような症状が落ち着いてきます。この後、数年から数十年間同様の症状が持続します。また、自閉傾向も落ち着いてきます。
4期(10歳以降)
症状が再び重くなります。車いすの生活になってしまう人もいます。側彎の進行により運動機能が低下し、歩行困難になります。これもジストニアによると考えられています。
さらに、運動機能の低下により手足の萎縮が起こります。誤嚥・肺炎・筋緊張の亢進による不随意運動なども見られるようになります。
レット症候群の寿命
オーストラリアの調査では25歳まで生存した女性が77.8%。アメリカのテキサスでは70%が35歳まで生存したと言われています。
死因として主にあげられるのが肺炎や呼吸障害、誤嚥などで、これらに注意して生活していけば寿命も延びることになります。
治療について
ジストニアに対しては、理学療法で手の常同運動に対する上肢機能の指導を行っていく必要があります。脊柱が曲がってしまう側彎が悪化してしまった場合は、手術や矯正治療が必要になってきます。
また、レット症候群の患者は睡眠のリズムの発達が遅れるため、日中はできるだけ活動させ、寝る時間と起きている時間の区別をしっかりと習慣づけてあげることが大切です。
最後に
遺伝子の突然変異が原因であるため、治療法は確立されていないというレット症候群。現在はMECP2の研究により遺伝子異常を明らかにし、治療に役立てる研究が進んでいます。
現時点では、この病気にかかってしまったら対処療法で症状の悪化を防いでいくことが最善だと考えられています。患者さんの親御さんなど周りが注意深く見守ってあげることが大切ですね。