レプトスピラ症の人の症状まとめ【治療法や予防法も徹底解説】
<監修医師 春田 萌>
「レプトスピラ症」をご存じですか?
あまり馴染みのない名称なので、ピンと来ない方も多いかと思います。しかし症状を聞くと「ああ、あの病気か」と納得する人も多い、古来より存在する感染症の一種です。
今回は知っているようで知らない「レプトスピラ症」について解説します。
レプトスピラ症の人の症状まとめから、治療法・予防法まで徹底解説しますので健康管理に役立てて下さい。
レプトスピラ症とは
まずはレプトスピラ病とはどのような病気なのか解説します。
レプトスピラ症とは
レプトスピラ症は「ワイル病」「秋やみ」とも呼ばれる細菌感染症で、人獣共通のリスクを負う感染症です。日本では「七日病」「用水病」と呼ばれ、長く農業従事者に恐れられてきた病気です。
1915年に世界で初めて、日本で病原体が特定されました。菌の血清型により「季節性」「軽症」「重症」など症例が変わります。
もしも飼い犬が感染(イヌ型レプトスピラが原因)した場合は、保健所に届け出の必要な感染症となります。
感染が確認されやすい地域としては、中南米や東南アジアといった熱帯・亜熱帯地域が多いです。特に流行が見られるのは7~10月の夏期から秋季です。
日本国内では感染症法の改定より2003年以降保健所への届け出が必要な感染症となっています。報告されるようになってからの感染例は主に沖縄県に集中しています。
レプトスピラ症の原因と感染ルート
病原性レプトスピラに感染して引き起こる感染症ですが、原因菌は保菌動物であるドブネズミなどの腎臓に存在します。
同じネズミの仲間でも、ハムスターは感染すると人間に感染させる間もなく死亡してしまうため害は少ないです。
しかし感染してもなかなか発症しない家畜類(馬、牛、豚、羊など)やペット(犬など)から人間に感染するケースもあります。人だけではなく、ほ乳類全般に感染のリスクがあるため用心が必要です。
感染経路についてですが、腎臓は排出に関わる器官であり、病原性レプトスピラを含む尿が腎臓から体外に排出されると、水や土壌が汚染されます。
この汚染された水と土壌を介して、経口感染あるいは経皮感染により人に感染します。かつては汚染された水や土壌に直接触れる確率の高い農業従事者に発症例の多い感染症でした。
しかし現在はカヤックなどのマリンスポーツや海外渡航者からも検出されることがあり、ペットの国際移動により罹患することもあります。
レプトスピラ症の診断方法
レプトスピラ症が疑われる場合には、菌を採取して顕微鏡で観察したり、抗体を検査する方法、PCR法(菌の遺伝子の存在を調べる)などがあります。
最も時間をかけずに病状を特定できるのはPCR法ですが、治療のための血清型を調べるためには抗体検査が最も有効です。
また顕微鏡下凝集試験法(MAT)と呼ばれる血清診断法も治療方針を決定するために有効です。
レプトスピラ症の症状
レプトスピラ症は病原性レプトスピラのうちどれに感染したかによって、軽症か重症化が変わってきます。
潜伏期は5~14日とやや長く、発症してからの症状の変化は劇的に早いので心当たりのある行動を取り、なおかつ症状が出た人は早めに医療機関を受診しましょう。
どのような特徴的な症状が出るのかを解説します。
悪寒・発熱・頭痛
初期の風邪の症状に似た悪寒・発熱・頭痛が発生する場合があります。ただしこの場合は比較的軽症で済み、すぐに回復するため心配いりません。
その他コレラの症状が出た場合に心配される病気についてはこちらを参考にして下さい。
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倦怠感
全身の倦怠感を覚えることがあります。
充血
眼球結膜が充血し、なおかつ発熱症状が出た場合、レプトスピラ症の可能性があります。
筋肉痛・腰痛
ふくらはぎの筋肉痛や腰痛が発生し、流行地域に渡航した経験のある方はすみやかに医療機関を受診し、心当たりについて医師に相談するようにしましょう。
黄疸・出血・腎障害・肝臓障害
黄疸・出血・腎障害の症状が出た場合、まとめて重症型(ワイル病)の疑いがあります。特に黄疸出血性は感染から4~6日以内に発生する可能性が高い症状です。
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肝脾腫
非常に稀でありますが、肝脾腫を引き起こす場合があります。肝脾腫が起きる場合、ほとんどが重症のケースです。すぐに医療機関を受診しましょう。
レプトスピラ症の治療法
かつては原因が分からず治療法も確立していませんでしたが、現在では原因がハッキリしているため治療できる感染症となっています。
どのような治療方法があるのか、解説します。
抗生物質による治療
レプトスピラ症に感染した場合、主に抗生物質の投与での治療が行われます。感染から早めに症状が見つかった場合は「ペニシリン系」「テトラサイクリン系」が効果的です。
しかしレプトスピラ症の経過は非常に早く、発症から二日までに治療を開始することが重要です。重症になってくると、ストレプトマイシンが有効になります。
事前に行う用心
東南アジアや中南米に出かける人、また水田で作業を行う機会や土木作業に従事する人は、レプトスピラ症に感染する確率が高くなります。
事前にドキシサイクリンを摂取すると予防効果がありますので、未然に防ぐためにも摂取しておきましょう。
レプトスピラ症の予防法
レプトスピラ症は原因がハッキリしているため、予防することが可能です。どのような予防方法が有効か解説します。
事前にワクチンを接種する
人と犬向けの予防ワクチンが存在します。日常的に自然界の水と接する職業の方や、海外旅行に出かける人にはワクチンがおすすめです。
ただしワクチンは万能ではなく、中にはワクチンの対応外である血清型もあるので注意が必要です。
海外で注意に必要な感染症についてはこちらも参考にして下さい。
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水に入らない
最も有効な予防方法は、そもそも「水に入らない」ということです。
レプトスピラ症に感染した不潔な水や土壌に触れないことが、最も確実な予防方法です。特にレプトスピラ症の流行地域に渡航する場合は、不用意に川や水場に近付かないようにしましょう。
また洪水の後の地域も、水に触れなくても感染の危険性がありますので要注意です。東南アジアや中南米は夏から秋にかけて流行地域となる可能性が高いので、渡航前には現地の状況を調べておくことをおすすめします。
保菌動物の駆除
ドブネズミなど、病原性レプトスピラのキャリアとなる動物を駆除することで感染を予防できます。
レプトスピラ症について解説しました。名称こそ知名度は低いものの、感染例が比較的多い感染症です。
特に海外に出かける人や農業従事者は用心すべき病気です。症状を理解し、治療法や予防法に役立てましょう。
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