亜硝酸ナトリウムの毒性が怖い【発がん性ニトロソアミンを生み出す】
<監修医師 WASHIO>
「亜硝酸ナトリウム」という物質をご存知でしょうか。
これはハム・ウィンナー・ソーセージなどの加工肉製品には必ずといっていいほど添加されている食品添加物です。
添加されている場合はその包装には原材料名として必ずその名前が明記されていますので見聞きした覚えのある方も多いと思います。
知らず知らずに日常的に摂取している添加物なのですが、実は毒性が強いことが明らかになっており発がん性の疑いもあるのです。それなのに、毎日何気なく食べている食品の中に高確率で入っているので心配なところです。
その反面、現在の食生活を便利にしてくれているものであることも確かですから、亜硝酸ナトリウムがどのようなものなのかを理解し、どんな毒性があるのかを認識して上手に利用できる策があれば、それが一番いいのですが、その様な策はあるのでしょうか。
亜硝酸ナトリウムとは?
亜硝酸ナトリウム(亜硝酸Na)は食品添加物として使われ、食品の黒ずみを防止する発色剤です。
市販の加工肉(ハム・ベーコン・ソーセージ・魚肉ソーセージなど)や魚卵系加工品(イクラ・タラコ・明太子など)に使うと鮮やかな色を保つことができるので見た目がきれいで美味しそうに見せることができるため多くの商品に使用されています。
亜硝酸ナトリウムが添加された商品は外装を見ると原材料名の欄に「亜硝酸Na」と記載されています。
発色剤の他にも様々な使われ方がされ、海外では食中毒の原因である猛毒性ボツリヌス菌の増殖を抑える保存料として使われています。また、食品添加物としてだけでなく工業や医薬品としても利用されています。
亜硝酸ナトリウムの毒性
食品添加物として
亜硝酸ナトリウムには強い毒性があることがわかっています。「食品添加物事典」では合成着色料(タール色素)と同じ『危険度2』に分類されています。
また、注意事項として、発ガン性のほかアレルギー発症の疑いもありますのでできるだけ摂取しないようにすること、乳児は摂取しないこと、下処理をして体内に入る量をできるだけ少なくして食べることが薦められると書かれています。
中毒症状
亜硝酸ナトリウムの中毒症状には嘔吐・動悸・チアノーゼ・血圧降下・下痢などがあります。
下痢症で悩む人たちの中にはその原因がこの中毒症状である可能性がある場合があり、この下痢がさらに大腸がんへ進行すると考えられるという報告もあります。
なお、中毒例から計算されたヒト致死量は0.18~2.5 gとされ、最低用量の0.18 gは猛毒で有名な青酸カリの致死量0.15 gに匹敵します。
チアノーゼの症状についてはこちらを参考にして下さい。
【関連記事】
チアノーゼの症状チェック【3つの原因と対処法も確認しておこう】
急性毒性
厚生労働省がそのホームページ内で掲示している「職場の安全サイト」において、ラットのLD50値(半数致死量)が77 ~150 mg/kg(4件のデータより)と掲示しています。
この値から考えると、体重40 kgの人では最低用量で3.1 g、最大用量で6 gを摂取した場合となりますから食品から直接摂取することを考えると難しい量です。
食品として摂る上では急性毒性は考えにくいですが、毎日少しずつ摂取していることが考えられますので、やはり一番怖いのは長期摂取による慢性毒性ではないでしょうか。
慢性毒性
厚生労働省がそのホームページ内で掲示している「職場の安全サイト」から、反復投与毒性試験や生殖発生毒性試験(慢性毒性試験)ではメトヘモグロビン血症や血液系への毒性作用がみられています。
発がん性物質の生成
亜硝酸ナトリウムを摂取すると発がん性物質である「ニトロソアミン」を体内で生成することが分かっており、問題視されています。
硝酸塩と亜硝酸ナトリウム
硝酸塩は天然由来で野菜などに含まれる成分です。この硝酸塩についての農林水産省の見解をご紹介します。
「硝酸塩は、通常摂取する程度では、それ自体は特に人体に有害なものではありません。しかし、ヒトの体内で還元され亜硝酸塩に変化するとメトヘモグロビン血症や発ガン性物質であるニトロソ化合物の生成に関与するおそれがあるということが一部で指摘されています。」(農林水産省ホームページより)。
つまり、亜硝酸ナトリウムを摂取した場合も当然、硝酸塩を摂取した場合と同じくメトヘモグロビン血症や発ガン性物質であるニトロソ化合物生成の関与のおそれがあるわけですが、この見解は前述の慢性毒性試験の結果報告と一致します。
発がん性の物質を含むおそれのある成分についてはこちらを参考にして下さい。
【関連記事】
カラメル色素は安全性が低い?【実は発がん性があるかも!】
二酸化チタンは発がん性物質?【食品添加物なのに安全性は大丈夫?】
発がん性ニトロソアミンを生み出す!
亜硝酸ナトリウムは肉や魚介類に含まれるアミンと反応して非常に強い発がん性を持つ「ニトロソアミン」に変化します。
そのため、亜硝酸ナトリウムを含むハム・ソーセージ・明太子をはじめとする加工食品を食べることで発がん性の危険性があります。
動物実験
ラットの餌に微量のニトロソアミンを混ぜ長期間与えると高確率で肝臓がん・腎臓がんが発生することが確認されています。
また亜硝酸塩(亜硝酸Naは亜硝酸塩の1つ)とアミンを同時に動物の餌に混ぜて与えたところ胃の中でニトロソアミンが検出され、胃がんの発生も確認されたとの報告があります。
使用基準
発がんの可能性は人間でも充分にあり得ますので、厚生労働省から使用上限が厳しく設定されています。
なお、肉や魚肉より魚卵にアミンが多く含まれていることから、魚卵に添加する亜硝酸ナトリウムは肉や魚肉より厳しい基準となっています。
厚生労働省の「添加物使用基準リスト(平成27年9月18日改正)」で定められています。
✅ 魚肉ハムや魚肉ソーセージ・・・・・・重量の0.005%以下の使用
✅ 肉加工品や鯨肉ベーコン・・・・・・・重量の0.007%以下の使用
✅ いくらやすじこ、たらこなどの魚卵・・重量の0.0005%以下の使用
発がん性についての各国の見解
硝酸塩の摂取と発がんについての研究も各国で実施されているところですが、 FAO/WHO合同食品添加物専門家会合(JECFA)は、硝酸塩の摂取と発がんリスクとの間に関連があるという証拠にはならないと言っています。
したがって、発がん性があるという根拠はないということから使用を禁止する理由はないとして現在も使用されており、日本でも同様の見解がなされています。
しかし、硝酸塩も亜硝酸ナトリウムもどちらについても厚生労働省と農林水産省は安全なものとは認識しておらず、むしろ危険性があるという考えを述べています。
何故、亜硝酸ナトリウムは使われているのか
これまで述べたように、亜硝酸ナトリウムは決して体に良いものではありません。それなのに何故、使われ続けているのでしょうか。
現在、多種多様な食品が流通し、生産地から遠く離れた地にも製品が届けられています。
少しでも見た目をよく、少しでも保存期間を長く、少しでも安全(細菌などの発生がない)に、という生産者とそれを買い求めたいという消費者の声がこれら添加物を使う理由となるでしょう。
厚生労働省も農林水産省も使用を禁止するに至らないのであれば、少しでも体に害のあるものは食べたくないという考えをお持ちの方は「買わない」という自己規制をする他ないのかもしれません。
とは言っても「食べない」と決めて一切食べずに生活することはかなり難しいことではないでしょうか。市販品だけでなく外食品にも入っているかもしれませんから。自給自足の生活ができれば別ですが。
現代生活を続けていく上では「食品添加物事典」や農林水産省が言うように、できるだけ控えることが今のところの一番の策なのかもしれません。今後の食品加工技術の進化に期待したいです。
当記事は医師、薬剤師などの専門家の監修を受けておりますが本サイトで提供する情報、文章等に関しては、主観的評価や時間経過による変化が含まれています。 そのため閲覧や情報収集は利用者ご自身の責任において行っていただくものとしその完全性、正確性、安全性等についていかなる保証も行いません。