入院費用の相談ガイド【平均の相場や健康保険の適用についても解説】
<監修医師 ドクターTST>
いつ自分が入院するかは知る由もありません。健康に自信がある人でもケガをする必要だってあります。平成25年の調査では、過去5年間に入院したことがる人の割合は15%を超えています。
入院経験者でも退院の時、清算待ちで「一体入院費用がいくらかかるんだろう」とドキドキしたことがあるかもしれません。
大部屋はイヤだけどいくらになるのか、また施された治療内容が分かっていてもその金額はわからないものです。
十中八九避けて通れない入院費用の相場やその内容、利用できる公的制度などについて解説します。
入院費用の内訳 どれが保険適用されるの?
一口に入院費用といっても、請求明細を見たところですべてがわかるのは医療事務経験者ぐらいでしょう。何をどう書いてあるのか、解読できるように内容を見ていきましょう。
保険が適応されるもの・されないものがある
国民皆保険制度の日本では、健康保険料を納めることで自己負担額以外は健康保険組合などが支払ってくれるように決められています。
これは平均的な医療を国民に施すための制度で、適応条件が決まっています。保険適応のあるなしで、入院費用は大きく変わります。
入院基本料(保険適応)
入院すると必ずかかる基本的な料金です。一般病棟や結核病棟・精神病棟など、病棟の種類によって9分類されています。
診察・看護・寝具などの1日の料金が設定されていますが、その病棟の入院患者の「平均在院日数」や「看護師配置」など比率や地域・診療科による加算で料金が変わってきます。
大きな病院ほど高い、と言われる所以かもしれません。
治療費(保険適応)
「治療費」と言われるとほんのり内容がわかる気がしますが、内訳が色々とあります。治療内容によって大きな変動があるのがこの「治療費」です。
✅ 投薬料:薬の料金「薬剤料」とお医者様の指示である「処方料」、薬局の薬剤師が受け持つ「調剤基本料」と薬剤を調整する「調剤料」が内訳です。
✅ 注射料:静脈・筋肉・点滴などで技術料が変わります。薬剤料(注射器の中身)と合算になります。注射する部位(関節・角膜など)によっても変わります。
✅ 手術料:術式(方法)や部位によって料金が決まっています。
手術料には「包括」というものがあり、例えば内視鏡手術でイレウスの手術を行っている最中盲腸を摘出しても「一連のもの」として別料金が発生しないなどというものです。
手術料には薬剤料・材料費(包帯やガーゼなど)・輸血なども加算されています。
✅ 検査料:エコー検査や内視鏡検査・血液や組織の採取と検体検査などです。内容や項目数で金額が違います。
✅ 画像診断料:X線・核医学(シンチグラム)・コンピューター断層撮影(CT)などの画像を使用する検査で発生します。撮影枚数などで料金が変わり、診断料金も別になります。
✅ リハビリ料:機能回復訓練を理学・作業療法士のもと行う時の料金です。症状と時間で「単位」が設定されています。
リハビリの必要な疾患についてはこちらも参考にして下さい。
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食事負担額(保険適応)
入院していても絶食以外は食事を食べます。平成28年4月から100円値上がりして1食あたり360円に変更されました。
住民税非課税の場合などは減額されます。治療食(疾患に応じた食事(肝臓食・脂質異常食・糖尿食など)では加算されます。
差額ベッド料(保険適応外)
入院費を大きく左右するのはこの差額ベッド料、保険適応外で全額自己負担です。
明細には「差額室料」「特別療養環境室」「特別室」などと記載されていて、大部屋と呼ばれる部屋以外の1人部屋を使用した時に発生すると思われがちですが、基本的には1人から4人部屋に入院した時から費用が発生します。
差額ベッド料金が発生するのは次の要件を満たしている時です。
✅ 1病室が4病床以下
✅ 病室の面積が1人当たり6.4平方メートル以上 ✅ 病床のプライバシー確保できる設備を有する ✅ 私物収納設備・机や椅子・照明など個人用の設備がある |
あくまでも「本人の意思と同意」のもとでこれらの設備がある部屋を選択し私用した場合に限り請求され、6人部屋が空いていなくて2日間だけ1人部屋を使用したなどの場合には請求されません。
先進医療(保険適応外)
保険診療として現在認められていない先進医療や高度医療にかかる費用は自己負担です。実費として300万円もかかるような治療もあります。先進医療にはいろいろなものがありますが、一番有名なのはがん治療です。
「陽子線治療」「重粒子線治療」などは聞いたことがあるでしょう。これらは200万円以上の費用が掛かりますが、眼科領域の「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」は53万円ほどです。
10万円以下の治療もありますが、それなりの金額になることはお分かりいただけますね。
先進医療についてはこちらも参考にして下さい。
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その他の料金(保険適応外)
✅ レンタル料:病衣(寝巻など)やタオル
✅ 文書料:診断書や会社に提出する入院証明書など
✅ 備品使用料:テレビや冷蔵庫など
入院費用の相場は?自己負担額を確認
入院費自己負担額の平均は23万円弱です。
割合としては10万円から20万円が35%程度と一番多いのですが、結構な出費になることは言うまでもありませんね。これを入院日数で割ると一日当たり平均金額は2万円になります。
診療明細書に記載されている内容を見ると、検査や手術などの金額ではなく点数が記載されています。この点数1点が10円で計算すると金額がはじき出せます。
✅ 自己負担額の計算方法(3割負担の場合):診療明細書の合計点数が5,642点の場合
5,642点×10円=56,420円(診療にかかった合計金額)
56,420円×0.3%=16,926円(3割の自己負担の金額)
窓口で請求される金額は10円未満の端数は四捨五入されるため16,930円になります。計算ミスだと思われがちですが、これは診療報酬の計算方式として決められていることです。
保険適応になる入院基本料・治療費・食事などを合算して個人の負担額を算出し、保険適応外の差額ベッドや文書料などは実費となります。これらは厚生労働省によってきめられているものです。
入院費用は平均して1日20,000円と言われると、自分で貯金するにも限度がありますね。でもこの金額を見たことで、医療保険から支払われる「お見舞い給付金」など保障額が見えてきますね。
専門家のファイナンシャルプランナーなどに相談してみるのもひとつの手段ですね。
入院費用は取り戻せる!5つの制度
入院費用は思っていたよりも高額になる可能性が高いということです。そうなった時にどうしたら経費を削減できるのかということについて考えてみます。
必要額以上の出費を抑えるためには公的機関の還付や軽減制度を利用するという方法があります。
高額療養費制度
1日から月末までの同一月に公的医療機関でかかった医療費の金額が自己負担限度額を超えた分を後で払い戻すという制度です。
70歳未満で医療費が高額になることが分かっている場合は限度額適用認定証を先に提示すると良いでしょう。医療機関から出された診療報酬明細書を健康保険組合などが審査し、3か月程度払い戻しまで日数がかかります。
このため、高額療養費貸付制度を利用すると払い戻されると見込まれる額の8割相当貸し付けを受けることができます。
限度額認定証は先に申請が必要ですが、医療費の支払い額が国が定める自己負担限度額を超える場合に窓口で支払う金額を自己負担限度額までに留められるものです。70歳以上の人は高齢受給者証で対応できます。
傷病手当金制度
病気やけがで会社を休んでいて十分な報酬が受けられない場合、逸失収入相当の支給を受けられますが、4つの支払条件に該当する場合にのみ支給されます。
✅ 業務外の病気やけがの療養で休業・休職している
✅ 仕事につくことが不可能である ✅ 連続する3日間を含んで4日以上仕事に付けなかった ✅ 休業期間中に給与の支払いがないか、手当金よりも少額である |
その他、病気が原因で退職しなければならない場合に受けられる制度についてはこちらも参考にして下さい。
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医療費控除
自分でできる対策として、年間で自分以外にも家計を共にする扶養者・親族の医療費を合算して一定額を所得税から控除を受けられるものです。医療保険金等で補てんされた額を差し引いて、10万円以上200万円以下に適用されます。
領収書は家族みんなの分を1年間保管しておきましょう。風邪薬などドラッグストアで購入した場合も領収書が適応対象になるので、10万円以上になる場合は確定申告で還付を受けましょう。自営業者にも適用されるものです。
入院費用の支払い方法を活用
医療機関は月末締めで翌月10日までに請求書を届けるというサイクルです。カード払いが利用できる医療機関が増えているので、現金が用意できない場合はカード払いを選択しましょう。
カード会社によってはポイントがたまったりするので、少額かもしれませんが取り戻すことができます。
月初めに入院した方がちょっとお得
高額療養費は1日から月末までの同一月に公的医療機関でかかった医療費の額で払戻額が決定します。例えば20日間入院するにも別個の期間の医療費として請求できる額も分割されます。
こうなると、限度額というラインに届かずに申請できなくなる場合が出てきます。だからといって病気になる日を選べませんが、できれば月初に入院・月末までに退院でまるまるひと月分を申請したいですね。
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