脂質異常症に効く食事の2つのポイント【6つの原因も知っておこう】
<監修医師 田中 恵文>
脂質異常症とは、体内に余分な脂肪が溜まってしまった状態のこと。
メタボリックシンドロームと診断される基準の一つにもなっていますし、動脈硬化を悪化させて、心臓や脳に大きなダメージを与える可能性もある危険なものです。
しかし、脂質異常症は食生活を変えるだけで、大きく改善することもある病気。今日は、脂質異常症にはどのような食事が有効なのか、脂質異常症の原因とともに解説していきたいと思います。
気になる所から確認してみよう
脂質異常症ってどんな病気?
脂質異常症はこんな病気
脂質異常症とは、血液中の脂質が多い状態のこと。食生活や運動不足などが原因で、血液がドロドロになることにより、動脈硬化を助長してしまいます。
動脈硬化になると、心筋梗塞や脳卒中になるリスクも高くなり、最悪の場合、死に至ることも。他にも痛風患者の8割が脂質異常症であるとされ、意外なところだと、頭皮の血流悪化により薄毛の原因にもなってしまいます。
疫学的に見て、女性よりも男性に多いもので、男性では30代以降、女性は50代以降から増加傾向にあるとされています。
症状についてくわしくはこちらも参考にして下さい。
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脂質異常症の基準
脂質異常症は、今までは「高脂血症」という病気でした。それに新しい基準値を提示して「脂質異常症」となったのが2007年のこと。
脂質異常症の基準値は、血液検査でもよく目にする3つの数値に設定されています。
✅ LDLコレステロール:140mg/dl以上
✅ HDLコレステロール:40mg/dl以下
✅ 中性脂肪(トリグリセライド):150mg/dl以上
これらのうちの1つ、または複数で当てはまる人が脂質異常症と診断されます。
コレステロールと中性脂肪の作用機序
コレステロールと中性脂肪というと、どうしても悪いイメージが定着していますが、本来は私たちの身体になくてはならない大切な存在です。
コレステロールは本来、細胞やホルモン、胆汁酸の材料となります。
コレステロールは、そのままでは血液中に溶けないため、LDLコレステロールと結合して全身へと運んでもらいます。その全身へ運ばれたもののうち、使われずに余っている分を回収して肝臓へと戻すのがHDLコレステロールの仕事。
中性脂肪に関しては身体のエネルギー源。そのパワーは糖やたんぱく質の2倍にもなると言われています。
脂質は、食事から摂る以外にも、肝臓などの体内でも生成しています。脂質異常症と診断された人は、食事からの摂取量に気を付けるようにしましょう。
脂質異常症の5つのタイプ
高LDLコレステロール血症
LDLコレステロール値が140mg/dl以上の人。脂質異常症の中で、もっとも多いタイプとなっています。
LDLコレステロールは、コレステロールを全身へと運ぶ役割を持っています。それが多すぎると、全身へと運ばれる量が増えてしまい、体内にコレステロールが溜まりやすくなってしまいます。
さらに、LDLコレステロールは活性酸素と結びつくことで、「酸化LDLコレステロール」というものになってしまいます。
酸化LDLコレステロールは、血管内に付着して血流を悪くし、それが剥がれると血栓になってしまいます。血栓ができやすくなると、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まってしまうため要注意です。
なお、逆に低すぎると別の問題も引き起こします。くわしくはこちらを参考にして下さい。
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低HDLコレステロール血症
HDLコレステロール値が40mg/dl以下の人。コレステロールというとLDLが注目されるため見落としがちですが、HDLコレステロール値が低くても問題が起きます。
全身の血液中で余っているコレステロールを回収して排出する手助けをしているHDLコレステロール。これが少なくなると、余分なコレステロールが回収されず、結果、体内にコレステロールが溜まってしまうのです。
高トリグリセライド(中性脂肪)血症
トリグリセライド(中性脂肪)値が150mg/dl以上の人。中高年の男性に多いタイプとなっています。
エネルギーとして使われずに余った中性脂肪は、皮下・内臓脂肪として体内に蓄積され、肥満や生活習慣病の原因となります。中性脂肪が多いとLDLコレステロールも増加しやすい傾向にあるため要注意。
また、脂肪を分解する消化酵素を分泌している膵臓に負担がかかりやすくなるため、急性膵炎を起こすリスクも増してしまいます。
脂質異常症になる2つの原因
脂質異常症になる人は、さらにその原因で2つのタイプに分けられます。
まずは「原発性(家族性)高脂血症」。
これは遺伝による先天性のもので、家族に脂質異常症の人が多いと発症しやすくなってしまいます。脂質異常症は、全体的に自覚症状がないことが特徴ですが、原発性高脂血症の場合は唯一、「黄色腫」という目に見える症状が出ます。
黄色腫は、コレステロールの塊がひじや膝、アキレス腱などの関節周辺にできるもの。医師と相談して、適切な治療を受けることが求められます。
もう一つのタイプは「二次性高脂血症」。
これは脂質異常症になる原因として、病気や薬の服用が関係しているもの。その原因への対策をすれば、脂質異常症の改善も望めます。
原因となる病気には、甲状腺機能低下症や糖尿病、肝臓病、腎臓病などが挙げられます。薬では、ステロイド剤や利尿薬、避妊薬の使用が原因となります。
肝機能の低下によって起こるトラブルについてはこちらを参考にして下さい。
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脂質異常症の6つの原因
遺伝による先天性のものや、病気や薬の影響が関係していることもありますが、脂質異常症になる最も大きな要因は生活習慣にあります。大きく分けると、食生活、肥満、運動不足の3つとなっています。
動物性脂肪
✅ 肉の脂身や皮の部分
✅ バターやチーズ、生クリームなどの脂肪分の多い乳製品 |
これらの摂り過ぎは、LDLコレステロール値を上げてしまいます。
コレステロールの多い食品
✅ 鶏(鶏卵、皮など)
✅ レバー
✅ 魚卵
✅ 丸ごと食べられる小魚(しらす、ししゃもなど)
これらも同じようにLDLコレステロール値を上げてしまうので、食べ過ぎには注意しましょう。
糖分や脂肪分の多い食品
✅ ショ糖(ケーキやお菓子など)
✅ 果糖(果物に多く含まれる) ✅ ファーストフード・スナック菓子・揚げ物など |
注意したいのは果物に含まれる果糖。もちろん、全く食べないというのも良くありませんが、果糖は吸収が良いので体内に溜まりやすくなってしまいます。
糖分や脂肪分の摂り過ぎは、LDLコレステロールや中性脂肪値を上げてしまいます。
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アルコール
お酒は適度に飲む分にはHDLコレステロールを増やしてくれますが、過剰摂取は中性脂肪値を上げてしまいます。
アルコール摂取の目安は、1日当たり25g。これは、ビールなら中ビン1本、ワインならグラス1杯、日本酒なら1合ほどです。
タバコ
喫煙はHDLコレステロール値を下げて、中性脂肪値を上げてしまいます。
タバコに含まれるニコチンには、血管収縮作用があるため、動脈硬化の悪化を招いてしまいます。
ニコチン中毒による害についてはこちらを参考にして下さい。
【関連記事】
ニコチン依存症の症状チェック【目安となる期間と治療法をお伝え】
運動不足・肥満
運動不足は肥満の原因。
筋力低下のほかにも、基礎代謝が落ちることでエネルギー変換が上手くいかなくなります。また、生活習慣病を発症するリスクも高くなったり、身近なところだと、肩こりや腰痛の原因にもなったりします。
肥満というと、メタボリックシンドロームという言葉をよく耳にしますね。脂質異常症以外にも、高血圧や高血糖への注意も大切になってきます。
HDLコレステロール値の低下には、食生活のほか、この運動不足による肥満が大きく関係していると言われています。
脂質異常症に効く食事の2つのポイント
脂質異常症の治療には「食事療法」「運動療法」「薬物療法」の3つがあります。その中でも重要なのが「食事療法」。
ここから、脂質異常症に効く食事のポイントを解説します。健康診断の検査値で、コレステロールや中性脂肪が気になる方も、ぜひ参考にしてみてください。
この食材を控えよう
脂質異常症の原因として挙げられる食材は、まとめると以下のようになります。
✅ 飽和脂肪酸(動物性脂肪)
✅ コレステロールの多い食品
✅ 糖質や脂肪分の多い食品
✅ アルコール
飽和脂肪酸は融点が高いため、体内で固まりやすい性質をもっています。そのため、摂り過ぎると血液がドロドロになってしまうのです。
この食材を積極的に摂ろう
食物繊維の中でも、水に溶ける性質を持つ「水溶性食物繊維」は積極的に摂りたいですね。余分なコレステロールの排泄を助けてくれるほかにも、便秘解消の効果も期待できます。
水溶性食物繊維は、きのこ類、海藻類、こんにゃく、ネバネバ・ヌルヌル系(オクラ、納豆、山芋など)に多く含まれています。
飽和脂肪酸は控えたほうが良いですが、反対に「不飽和脂肪酸」は意識して料理にプラスしたい食材。血液をサラサラにする効果があり、余分なコレステロールを減らしたり、血栓を予防してくれたりします。
不飽和脂肪酸には、青魚(イワシ、サバ、サンマなど)に含まれるDHAやEPA、食用油(亜麻仁油、エゴマ油など)に含まれるα-リノレン酸などがあります。
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LDLコレステロールの酸化を防ぐために、「抗酸化物質」を含む食材も積極的に取り入れましょう。抗酸化物質を多く含む栄養素と、代表的な食材には、以下のようなものが挙げられます。
✅ ビタミンA(βカロテン):かぼちゃ・ピーマン・ニンジンなど緑黄色野菜
✅ ビタミンE:アボカド・ナッツ類・オリーブオイル ✅ ビタミンC:柑橘系の果物・ブロッコリー・パプリカ(赤、黄) ✅ ポリフェノール:赤ワイン・チョコレート・りんご・ブルーベリー |
また、「お酢」が内臓脂肪の減少を助けてくれるとのデータもあります。
最近では、飲むお酢なんかも種類豊富に出ていますし、黒酢は様々な料理にも合うので、ぜひお好みの方法で取り入れてみてください。
運動療法と薬物療法
運動療法
食事療法と合わせて行いたいのが運動療法。有効なのは、軽く汗ばむ程度のウォーキングなどの有酸素運動です。
ただし、心臓に障害を持つ人の場合、運動制限がありますので主治医の指示に従う必要があります。ほかにもひじや膝に痛みのある人や、高血圧の人などは制限もあるので、行う際は必ず医師に相談しましょう。
同じく注意が必要なのは、サウナです。一見効果的にも見えそうですが、大量の汗をかくサウナは、血液がドロドロになっている脂質異常症の人にとっては逆効果。突然の心臓発作や脳卒中の危険性もあるので控えましょう。
運動療法で大切なのは水分補給です。脂質異常症は血液がドロドロの状態のため、積極的に水分を摂取して、血流を良くしたいところ。
人間の身体は、何もしなくても1日に1.5リットルは水分を失うと言われているので、運動した時には2.5~3.0リットルは摂りたいですね。もちろん、一気に飲むのではなく、運動の合間にこまめに飲むようにしてください。
薬物療法
糖質異常症の治療で使われる薬は主に2種類。LDLコレステロールを下げる薬と、中性脂肪を下げる薬です。
ほかに、場合によっては漢方薬の使用も効果的です。漢方薬は体質を根本的に改善することに特化しているので、食事療法や生活習慣の改善と合わせて使用すると良いでしょう。
体力がある人は「防風通聖散」や「大紫胡湯」、体力中程度なら「紫令湯」、虚弱体質の人なら「加味逍遥散」や「当帰芍薬湯」が適しています。
興味のある方は、医師や薬剤師に相談してみてはいかがでしょう。
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セルフチェックをしよう
最近の体重計では、乗っただけで体重と一緒に体脂肪率を表示してくれるものも多くなりました。
体脂肪率は、体内の脂肪量が分かっていないと計算で出せない数値となっています。そのため、もし体重計にその機能がなければ、体脂肪率の代わりに「BMI」を計算して、自己分析してみましょう。
BMIは、体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で出すことができる肥満度のこと。この数値が22に近いほうが良く、25を超えると肥満となります。
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