動脈解離の症状はコレ【4つの原因や治療法を分かりやすく解説】
<監修医師 ドクターTST>
生活習慣の乱れに伴う病気にはさまざまなものが上げられますが、そのうちのひとつ動脈解離は前触れなく発生し、命を脅かします。
どのような病気なのか知っておくと、リスクコントロールの役に立ちます。そこで今回は、動脈解離の症状について、その原因や治療法を分かりやすく解説します。
気になる所から確認してみよう
動脈解離の原因
まずは動脈解離(どうみゃくかいり)の原因について解説します。
血管の劣化
血管の内壁には本来弾力性がありますが、様々な理由でこの弾力性が失われ劣化することがあります。すると血管内壁に亀裂が入り、剥離を起こします。これが動脈解離です。
血管が劣化する理由には動脈硬化や加齢が挙げられます。
高血圧
高血圧は血管に負担をかけやすく、血管が劣化していると動脈解離を引き起こしやすくなります。また高血圧は動脈硬化の原因にもなります。
食習慣の乱れから発生する高血圧と動脈硬化は互いに切っても切れない仲にあります。
病気
生活習慣の乱れにより血管が劣化した人だけではなく、先天性の病気が原因で血管が弱い人が動脈解離を引き起こすことがあります。
特にマルファン症候群は先天的に血管中膜に脆弱性のある病気であり、破れた中膜に血液が流れ込むと血管が膨らみ、解離性大動脈瘤を形成します。
その他にも合併症として動脈解離を引き起こす病気として、エーラース・ダンロス症候群・ターナー症候群・梅毒・先天性大動脈2尖弁などがあげられます。
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事故
事故の際に負った外傷や手術中の事故、血管を調べるための血管造影検査で血管を傷つけてしまい動脈解離が起きる場合があります。
動脈解離の症状
動脈解離は、血管内壁に亀裂が入り血管が流れ込み、膜が剥離を引き起こす症状です。
内膜だけが裂けるのではなく、放置すると外壁も破れます。外膜が破れると大出血を引き起こし、命に関わります。
また治療が遅れるとそれだけ死亡率や後遺症が残るリスクが高まります。具体的にはどのような自覚症状が起きるのか解説します。
激痛
破裂で発症したことのある人のほとんどが、「いまだかつてない激しい痛み」に襲われたと言います。喩えるならば引き裂かれるような痛み、バットで殴打されたような痛みです。
特に背中や胸に痛みを感じるケースが多いです。
背中や胸が痛む場合はこちらを参考にして下さい。
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痛みが移動する
最初は胸痛だけを感じていても、時間の経過と共に背中、腹部へと痛みが移動します。これは時間が経つと剥離する場所が広がっていくためです。
つまり一時は痛みに耐えられたとしても、症状は治まらず拡大していくということです。痛みを感じたら早めの病院受診をしなければ、命に関わります。
手足の神経障害
亀裂が入った血管の内壁の剥がれ落ちた一部が血液に流され、別の動脈を塞ぐ場合があります。
動脈が塞がれてしまうと手足に神経障害が出るほか、人によっては心臓発作や腎臓障害を引き起こします。
脈が測れない
血管は内側から順に「内膜」「中膜」「外膜」という三層に分かれた構造です。
動脈解離を引き起こすとこの内膜と中膜の間に血液が流れ出し、場合によっては血管が2本に分かれてしまっているような状態になります。
すると手足の脈拍数が低下し、測定できない状態になります。特に動脈硬化を持病として持つ人は、脈が測れなくなったら動脈解離の可能性が高いです。
検査方法
動脈解離は前兆が殆どなく、突然症状が現れます。まずはX線検査や超音波検査、CT検査を行い正確な発生場所を特定します。
また血液検査で血栓の状態を確認する凝固・線溶検査が行われます。
早期に胸部レントゲンやCT検査を行い精密検査を行います。血液検査だけでは正確な診断が出来ません。
また動脈解離はほとんどが突発性のものですが、まれに慢性型も存在します。
動脈解離の治療法
ある日突然発生する動脈解離ですが、早期に発見し適切な処置を行えば治療できます。どのような治療方法があるのか解説します。
保存療法
症状を見て、動脈解離が起きた部位が上行大動脈以外の場合は合併症のリスクが低いため保存療法がとられます。
上行大動脈以外で出来た動脈解離を「スタンフォードB型」と呼びます。具体的には血圧のコントロールを行う治療です。
まずは血圧を下げ、48時間は安静を保ち解離のリスクを下げます。その後は一週間ほど入院したまま状態を見てややゆるやかな安静に移行します。
その後は血圧が上がりすぎないように、生活習慣を管理していきます。
手術を行うことなく動脈解離のリスクを下げる方法ですので、快復率は高くなります。ただし入院して医師や専門家の医学的な指導の下に保存療法を実施する必要があります。
手術
上行大動脈で動脈解離を発症した場合は、脳卒中や心臓発作の合併症のリスクが高まります。そのため保存療法では死亡率が高くなってしまうため手術を行います。
手術に適した動脈解離はスタンフォードA型ですが、動脈解離はどんどん広がっていきます。上行大動脈以外(スタンフォードB型)でも他臓器症状が現れた場合もやはり手術を行います。
手術は症状に応じて上行大動脈を人工血管に取り換える、解離した部分をステントグラフトでつなぎ血液がこぼれ出すのを防ぐといった手段が講じられます。
予防の重要性
動脈解離単体でも恐ろしいですが、もっとも恐ろしいのはその合併症です。脳や心臓など、身体にとって重要な器官に合併症が引き起こされるリスクが高まります。
また破裂など突発的な症状が発生するため、一度発症したらあとは時間との勝負になります。
先天性の病気や突発的な事故以外に、動脈解離を起こす人のほとんどが抱える持病が「高血圧」や「動脈硬化」です。血圧が異常に上がってしまうのは食生活や運動習慣に左右されます。
発症して慌てるのではなく、普段から血圧の管理に気を配っておけばリスクを減らすことが出来ます。
血圧の管理は定期検診でも十分管理できますから、一年に一度は最低でも健康診断を受け、バランスのとれた食生活と適度な運動を心がけるようにしましょう。
動脈解離の症状と原因や治療法について分かりやすく解説しました。いままで経験したことのない激痛に襲われる動脈解離は、前触れがなく突発的に発生します。
治療を受けた場合は受けなかった場合より飛躍的に生存率が伸び、日常生活を取り戻す確率も高くなります。特に発症してから2週間がポイントです。
今回の内容を参考に、「おかしいな」と思ったら無理をせずに医療機関で診察を受けましょう。早期に治療を開始すれば、手術は必要ないかも知れません。
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