口の中が甘いと感じるのは糖尿病の特徴【他の病気の可能性もある】
<監修医師 豊田早苗>
健康に気を使う人が増える世の中、「甘いもの」を食べることを控えることが多くなってきました。スイーツでも「ノンシュガー」をうたったものが店頭によく並んでいますね。
そんな「甘いもの」を食べたわけでもないのに、どうも近頃「口の中が甘い気がする」ということはありませんか?
飲食に関わらず口の中が甘いと感じるのには意外な原因が潜んでいるのです。
気になる所から確認してみよう
口の中が甘いと感じる原因とは
甘いものを食べていないのに、飲んでいないのに口の中が甘いと感じる原因を見ていきましょう。
口呼吸していませんか?
基本的に「鼻呼吸」が健康な状態での呼吸でしょう。しかし鼻づまりなどで口呼吸になっていると口の中が乾燥して唾液の少ない状態になっています。
粘膜の異常?
ひどい風邪をひいたときに「味がおかしい」と感じたことがありませんか?鼻や喉の粘膜とともに口の中の粘膜にも炎症が起こった場合には味覚に変調をきたすことも。
舌の表面に異常が
エチケットとして取り去ることもある「舌苔(ぜったい)」は舌の表面を白く覆うものです。食べ物のカスなどが元となっているので口臭の原因にもなるとして知られています。
舌苔はストレスや体調の変化によって厚くなってきて味覚が変わることもあります。
人工甘味料を取り過ぎていませんか?
ノンシュガーのお菓子やゼロカロリーの清涼飲料水はダイエットの味方として取り入れることも多いでしょう。
しかしそれには砂糖の代用として人工甘味料が使用されています。摂取しすぎると味覚が変わってきたり依存症になることもあるようです。
病気のサイン
ストレスでも味覚の異常が起こることもありますが、何らかの病気が原因として口の中が甘いと感じることもあるのです。
口の中が甘いと感じる6つの病気
飲食していなくても口の中が甘いと感じる、あまり気持ちの良いものではありません。
この「口の中の甘さ」に隠されている病気を知る必要がありそうです。
風邪
風邪をひくと料理をするのも一苦労、という経験がありませんか?鼻づまりで匂いがわからず、味付けまで狂ってしまうことがありますね。
鼻づまりで匂いがわからないというのがいちばんの原因で、「風味」が狂ってしまうのです。
糖尿病
糖尿病は生活習慣病として悪名高い病気です。中でも糖尿病性神経障害として「口の中が甘いと感じる」という症状が出ることもあるようです。
糖尿病性神経障害としての「味覚障害」では味の薄さや苦味を訴えることが多いようですが、必ずしもそれだけではないということですね。
ドライマウス
唾液の分泌が減少することで発症するのが「ドライマウス」です。「口腔乾燥症」とも呼ばれる疾患で、これも味覚障害を起こします。
ストレスや加齢などが引き金になることが多いので注意したいですね。
逆流性食道炎
胃のもたれや胸焼けが特徴的な症状である逆流性食道炎。「苦いゲップが出る」というのを聞いたことがあるかもしれません。
「苦いげっぷ」のはずなのにどうして口の中が甘いの?という素朴な疑問が出ますね。
胃酸が食道へ逆流してくるのですが、そのときごく少量だけ喉まで到達してしまうことがあるのです。
酸性の胃酸がアルカリ性の口の中に入ると「甘い」と感じることもあるようです。
がんの可能性も
がんの化学療法で使用する薬剤や放射線療法などの副作用でも味覚が変わって「食べていないのに口の中が甘い」と感じることがあるようです。
またかなり稀なケースではありますが、口の中の甘さをきっかけに肺がんが見つかったという話もあるようです。
妊娠中の味覚障害
妊婦さんから「好きな食べ物が変わってしまった」という声を聞いたことがありますが、これは比較的数の多いケースのようです。
ものすごくしょっぱいものが食べたくなったとか、味付けの濃いものを好むようになったというのは「好き嫌いが変わった」という問題ではないのです。
舌には「味蕾(みらい)」という細胞があるのを聞いたことがあるかもしれません。
妊娠中の体に「亜鉛」が不足することが原因となり、味蕾の「味を感じる」という機能の低下を引き起こしているということなのです。
亜鉛不足は妊娠以外でも起こりますが、妊婦さんに限っていうならばホルモンや栄養素の摂取量のバランスが変化するため味覚が変わり「口の中が甘いと感じる」現象が起こるようです。
糖尿病ってどんな病気?
「口の中が甘い」「喉が乾く」などが同時に強く発生する場合に注意したい「糖尿病」について解説します。
食事で必ず食べる「米」や「パン」は糖質(炭水化物)、消化されるとブドウ糖となります。
ブドウ糖を肝臓や筋肉に取り込み血糖値(血中ブドウ糖濃度)を下げるホルモンをインスリンと呼びます。
このインスリンが作用せず、血液中のブドウ糖濃度が上がる病気が糖尿病です。
糖尿病は1型・2型に分類されます。
1型糖尿病は膵臓細胞が破壊されインスリンが作られないというもので、若年層に多い型です。症状が急激に起こることが多く「多尿」「喉の渇き」が元となり発見されます。
2型糖尿病は中年以降に多かったいわゆる「生活習慣病」で、インスリンの分泌量が少なくなってきて起こるものです。
症状は緩やかに進みますが、早期発見できれば生活習慣によってコントロールできる場合もあります。
体質的な遺伝としてインスリン分泌が少ない・肥満・過食・加齢などが要因とされていて、糖尿病患者の9割以上はこの2型糖尿病なのだそうです。
見るからに肥満体でなくても内臓脂肪が多いメタボリックシンドロームでも好発します。
高い血糖値のまま長期間経過すると血管障害や腎臓病・神経障害などの合併症が起こる恐ろしい病気です。
口の中が甘いと感じる時の5つの対処法
何も食べていないのに、ずっと口の中が甘いと感じるのは気持ちが悪いですね。そんな甘さの対処法を考えます。
唾液分泌を増やす
もしも甘いと感じる原因がドライマウスや「口呼吸」からくる口腔内の渇きであれば、唾液分泌を増やしましょう。
それにはまず口呼吸の「癖」を直すことから始めます。
病気治療
糖尿病が原因であれば、まずはその病気の治療から始めます。口呼吸の原因が鼻炎による鼻づまりなどであれば、それもやはり医療機関を受診して治療することが先決ですね。
味が違って感じられる病気に「異味症(錯味症)」というものがあります。味覚障害で原因は不明とも言われていますが、漢方治療で効果が見られることもあるようです。
食生活を改善しよう
食生活を改善すると、甘いと感じていた口の中の環境が変わることもあります。食事が偏って亜鉛やミネラルの不足によって味覚が変わってしまっている場合があるからです。
亜鉛や食物繊維を多く含む食品を摂取するように心がけるとよいでしょう。
亜鉛やマグネシウム・カルシウムなどミネラルのバランスにも注意します。レバーやうなぎ・大豆などを普段の食事に取り入れることをおすすめします。
カルシウムはビタミンDと一緒に摂ると吸収効率がアップするので、干し椎茸も良いですね。亜鉛はクエン酸と同時摂取で吸収が良くなります。
アルコールは大量の亜鉛を使って分解されるので、お酒を飲む方は少し控えましょう。
糖尿病と診察された時はしっかり治療しよう
糖尿病の治療について触れておきます。「口の中が甘いような気がする」「口が渇く」などの症状から発見されることもある生活習慣病です。
治療には食事・運動・薬物のどれも欠かすことができません。
食事療法では摂取カロリーや糖質制限が必須です。昔は「贅沢病」とも言われた糖尿病、初期であればこの食事療法と運動だけでコントロールできる病気なのです。
運動療法は減量効果とともに血糖値改善も期待されるものです。メタボリックシンドロームの予防や内臓脂肪減少も大切な治療となります。
2型糖尿病で食事と運動だけではコントロール不十分であるとされた場合や1型糖尿病の場合には薬物療法である「インスリン療法」が適用されます。
炭水化物の吸収を遅らせて食後の高血糖を抑えるα−グルコシターゼ阻害薬やインスリン分泌を促進させるスルフォニル尿素薬などが使用される薬剤です。
肝臓や脂肪組織でインスリンに対する反応が弱くなっている2型糖尿病や肥満がある人などには、脂肪細胞に作用してインスリン抵抗物質を減少させるインスリン抵抗性改善薬を使用する場合もあります。
1型糖尿病や経口投与で効果が見られない場合にはインスリンを補充して血糖値を下げることが必須となるため、インスリン製剤の注射療法が必要な場合もあります。
糖尿病は食生活の改善で予防を心がけて
できればお薬に頼らずに生きていきたいと考えるのが人間です。
なるべく血糖値を自分でコントロールして糖尿病にならないように、糖尿病と診断されても自身で改善できることはしていきたいですね。
濃い味付けと過食は大敵!
基本的にはきちんと1日3食、間食は控えるようにしましょう。いっぺんにたくさん食べたいという食いしん坊精神はいけません。
味付けも薄味が基本です。コーヒーなど飲み物には砂糖を入れずに飲みたいですが、どうしてもダメ!という方は人工甘味料を取り入れてみましょう。
野菜不足を解消して!
緑黄色野菜を1日350g以上食べていますか?なかなかの量なのでそんなには無理でも、食生活の改善には1日120gは必要です。
緑黄色野菜にはマグネシウムなどのミネラルや抗酸化物質が多く含まれています。
動脈硬化や合併症を防ぐためにも抗酸化作用のある緑黄色野菜を毎日食べるようにしましょう。
野菜の他にも「みかん」に含まれるβ−クリプトキサンチンには糖尿病予防効果が、「昆布」や「もずく」のフコイダンは食物繊維で糖の吸収を穏やかにする作用があります。
白ご飯よりも大麦ご飯!
雑穀ご飯を食べる人が増え、定食屋でも麦ご飯や玄米をチョイスできるところが見られるようになりました。中でも大麦は血糖値を下げる効果がある穀物として注目されています。
大麦βグルカンは水溶性食物繊維。食後血糖値を上がりにくくするとともに気になるコレステロールを低下させる効果があります。
メタボと糖尿病、両方に効果がある大麦を取り入れると良いですね。大麦βグルカンはインスリンの値も改善させ、食欲抑制の作用もあるようです。
間食にはチョコレート?
間食をしてはいけないと言われるほど食べたくなりますね。そんな時にはカカオ含有量が70%以上の「ハイカカオ」のチョコレートが良さそうです。
カカオポリフェノールには抗酸化作用や動脈硬化の予防などの働きがあるとされていますが、インスリン抵抗性を改善させる効果の研究がなされているようです。
くれぐれも医師と相談の上で食べるということをお忘れなく。
アディポネクチンに期待!
食欲はどうしても抑えられないもの、どうにかならないものかと悩ましい存在ですね。脂肪細胞が分泌され、食欲を調整する作用がある「アディポネクチン」というホルモンに期待がかかっています。
このアディポネクチン、インスリンの働きと関係があったのです。インスリンが効かないのは脂肪細胞の肥大によってアディポネクチンが出なくなること。
インスリンの働きを助けて糖尿病を改善していく効果があるアディポネクチンには、あの悩ましい食欲を抑制する作用もあるということがわかってきています。
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