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多系統萎縮症の原因は不明?!【症状やリハビリを詳しく解説】

<監修医師 豊田早苗>

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「振戦、筋肉のこわばり、緩慢な動作、歩行困難」これらの症状を聞いて、まず思い浮かぶ疾患はパーキンソン病ではないでしょうか。

しかし、これらと同様の症状を持ちながらも、特効薬がなく、病状の進行が数倍早い多系統萎縮症という病気はあまり知られていません。

 

今回は多機能萎縮症とパーキンソン病の違い、その病態や治療法についてみていきましょう。

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多系統萎縮症とは

 

多系統萎縮症「Multiple System Atrophy:MSA」は、小脳や脳幹といった脳神経系に不可逆的な障害を起こす進行性の病気です。

 

日本では40~50歳代の男性に多い傾向にあり、発生機序や治療法が確率されていないため難病指定されています。

 

多系統萎縮症は症状の出現によっておおよそ3種類に病名が分けられています。

 

以前は違う病気として位置づけられていましたが、症状が進行するに従って同様の症状を起こすようになるため、同一のものとして考えられるようになりました。

 

一つ目は線条体黒質変性症と呼ばれる病気です。

 

初期症状はパーキンソン氏病と似ていますが、神経障害の進行が早く、発症してから数年で車椅子生活になってしまうようです。50歳代の男性に多い傾向があります。

 

二つ目はオリーブ橋小脳萎縮症です。多系統萎縮症の中では1番患者数が多い病気で、40歳以上の男女差なく発生することが特徴です。

 

こちらは歩行困難や痙攣、呂律障害などを主訴にしていますが、リハビリで症状を緩和する事が可能です。

 

三つ目はシャイ・ドレーガー症候群です。シャイ・ドレーガー症候群は尿失禁や起立性低血圧、失神といった自律神経障害が主訴になっています。

 

患者数は多系統萎縮症の患者数の中でも1/3程度ですが、50歳以降の男性に圧倒的に多い病気です。

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多系統萎縮症の4つの症状

 

多系統萎縮症の症状はパーキンソン病と似たような症状を呈しますが、排尿障害や自律神経障害を初期症状とする人もいます。

 

ここでは多系統萎縮症の主な症状を見ていきましょう。

 

歩行時のふらつき、呂律が回らない、手足がうまく使えない

日本人に特に多いとされているのが、小脳症状と呼ばれる上記の症状です。

 

進行性の小脳病変が不可逆的にすすむため運動機能が障害されていきます。リハビリなどで改善は見られますが、基本的に症状は少しずつ増悪していきます。

 

パーキンソン病様の症状

筋肉のこわばりや硬直、動作緩慢、表情が乏しくなる、話しにくさ、転びやすくなる、振戦といった症状が起こります。

 

初期であればパーキンソン病薬の効果もありますが、症状が進むと効きにくくなる特徴があります。

 

排尿障害

多系統萎縮症の中でも、自律神経障害を主訴とするタイプに多い障害です。

 

代表的な自律神経障害症状には尿失禁や排尿困難、起立性低血圧による失神がありますが、他にも汗をかきにくい、睡眠時の強いいびき、勃起障害を起こすことがあります。

 

症状進行時

多系統萎縮症は進行性の難病です。そのため上記症状が進行すると、嚥下障害、起立困難、睡眠時の呼吸障害が現れるようになり、突然死の原因になることもあります。

 

ここまで症状が進行すると、自力での日常生活は困難になるため、車椅子や要介助の生活になっていきます。

 

多系統萎縮主の中でも線条体黒質変性症は特に進行が早いため、発症して数年で車椅子生活になり、約10年前後で寝たきりの生活になると言われています。

 

このため予後は大変難しい病気といえるでしょう。

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遺伝が関係?多系統萎縮症の原因を探る

 

多系統萎縮症の原因は、実のところ未だ解明にはいたっていません。

 

現在では遺伝子単位での調査を進めている最中のようですが、なかなか調査が進まない、というのが現状のようです。

 

というのも、多系統萎縮症の患者数は報告されているだけでも国内では1万2000人程度(2013年発表数)であり、その中でも血縁関係者内の発病数が少ないため、比較検討調査が難しいという理由があります。

 

また前述した多系統萎縮症の種類によっては、家族性の発病が見られないもの、逆に家系内に多くみられるといった報告もあるため調査が難航しています。

 

では、なぜ遺伝子的な要因を疑っているのかというと、多系統萎縮症の原因には異常タンパク質の生成が原因になっているからではないかという見方があるからです。

 

多系統萎縮症を発病した患者さんの神経細胞には、健常者には見られない異常タンパク質が細胞内に同封されている様子が見られました。

 

この原因遺伝子を調べてみると、コエンザイムQ10の合成に関わっているCOQ2という遺伝子に変異が見られたためのようです。

 

この遺伝子配列の異常は日本人に多いとされる異常パターンのようで、COQ2がストレスに対して弱いとされている理由も関係しているのではないかと考えられています。

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多系統萎縮症の特定に検査は不可欠

 

多系統萎縮症は進行性の病気です。特に線条体黒質変性症では病気の進行が他の系統より、早く、不可逆的です。早期診断を行って早めに対策を行う事が望まれます。

 

しかしここで問題となってくるのが、多系統萎縮症の診断は簡単には行えないということです。

 

というのも、多系統萎縮症は症状がパーキンソン病に似ている事が多く、鑑別が困難なためです。

 

そのため、パーキンソン病の症状に加えて前述した症状が現れている場合や、パーキンソン病薬の効果が十分得られなくなってきた場合には、以下の検査をして多系統萎縮症の診断を行う必要があります。

 

脳血流シンチグラフィ

脳の血流を調べる検査です。薬剤を注射後、ドーム型の機械に横になり体を回転させながら撮影をしていきます。検査時間は1時間以内です。

 

PET検査

脳内の代謝を調べる検査です。薬剤を注射後、ドーム型の機械に横になり撮影していきます。検査時間は30分程度です。

 

MRI検査

脳内の血流体の断面図を撮影する検査です。

 

ドーム型の機械に横になるだけなので、負担も少なく行える検査ですが、体内金属がある人、閉所恐怖症の人には行えないことがあります。事前に必ず伝えるようにしてください。

 

検査時間は30分程度です。

 

MIBG心筋シンチグラフィ

心臓の筋肉における交感神経の反応性を調べる検査です。

 

パーキンソン病と鑑別するために大切な検査になります。薬剤を注射後、数十分かけて2回程撮影を行います。

 

所要時間は撮影時間が数十分×2回、待機時間も合わせると半日ほどかかります。

 

終夜睡眠ポリグラフ検査

睡眠時の呼吸や脳波を調べる検査です。

 

この検査では1泊入院し、専用の機械を体に取り付けて睡眠をとることで検査を行います。そのため検査にかかる時間は丸1日と考えた方がよいでしょう。

 

遺伝子検査

体の組織から遺伝子情報を読み取り、遺伝子的に病気の原因がないか調べます。

 

家系内での発病が報告されてから導入されるようになりました。粘膜、毛髪など様々な部位から検査可能です。

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多系統萎縮症の改善にリハビリは欠かせない

 

多系統萎縮症の特効薬は現在開発されていません。

 

しかし初期の症状には抗パーキンソン病薬が一部有効な事もわかっているため、薬で症状の進行を食い止めながら対症療法を進めていくことになります。

 

多系統萎縮症の症状として代表的なものが運動失調です。

 

徐々に歩行時のふらつきや立ち上がり・起き上がり困難、バランス障害が悪化してくるため、ADL(Activities of Daily Living=日常生活動作)が低下し、廃用症候群に陥ってしまう恐れがあります。

 

症状の進行を遅らせるためにも、専門家の指導の元でトレーニングやリハビリを行ってQOL(quality of life=生活の質)を維持していく努力をしなくてはいけません。

 

✅ バランス機能訓練

まっすぐ歩くことが困難になり、ふらついて転倒しやすくなります。この症状の改善には、バランス機能訓練を行っていきます。

 

四つん這いや膝たちでの歩行訓練、片足立位保持といった訓練を行っていきます。

 

✅ 立ち上がり、起き上がりの練習

症状が進んでくると頭を上げようとしたときに一緒に足も上がってしまうなど、思ったように体が動かしにくくなります。

 

そのため今までの日常動作を見直して、起き上がりやすい、立ち上がりやすい動作を身に着けていきます。

 

寝た状態から起き上がる時は、体を横に向け肘を立てて起き上がるようにします。

 

床に座った状態から立ち上がる時は、まず片膝を立て、立てた膝を支点にして立ち上がる訓練を行います。

 

✅ 歩行訓練

ふらついてまっすぐ歩くことが難しい場合に行われる訓練です。転びにくく、ふらつきが少なくなるよう歩き方を見直していく練習から始まります。

 

重心を下げ、歩幅を小さく膝を曲げながら歩くように訓練していきます。

 

✅ 会話の訓練

運動失調が進むと、呂律が回らない、言葉がすぐ出てこないなどのコミュニケーション障害を起こしてきます。

 

この訓練では今までのコミュニケーション方法を見直すために、自分の声の調子や話し方、話すスピードを一緒に考えていきます。

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多系統萎縮症とパーキンソン病は似ている

 

多系統萎縮症とパーキンソン病の鑑別が難しい理由の中に、両者の症状の現れ方、好発年齢、性別差が似ているという点が挙げられます。

 

多系統萎縮症とパーキンソン病では、好発年齢が50歳前後と同時期に発症しやすく、男女比では年齢を重ねるごとに男性の患者数が増加する傾向です。

 

また、どちらも家族性の遺伝なのか、単体の発症なのかもはっきりわかっていません。

 

このように原因や家族背景、生活習慣などが不明瞭な点に加えて、どちらも初期症状に手足の震え、ふらつき、運動失調がみられるケースが多いため特定が難しくなっています。

 

しかし症状が進行してくると、パーキンソン病では考えられない自律神経障害症状や小脳症状、パーキンソン病薬の効果が減弱するため、ここで疑いを持つ場合が多いようです。

 

以上のように、パーキンソン病と多系統萎縮症は、鑑別が非常に難しい疾患になっています。診断には専門医の判断を受けるようにする事が望ましいでしょう。

 

またパーキンソン病の診断を受けていても、薬効が弱くなったり、排尿障害や起立性低血圧といった自律神経障害を感じたりしたら、一度主治医に相談するようにしましょう。

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