寝てる時ビクッとなるあの現象!実は・・・【原因や予防も解説します】
<監修医師 豊田早苗>
ウトウトしているときや睡眠中にビクッと体の一部が痙攣したことのある人は意外に多いものです。この現象をジャーキングと言います。
今回はなぜジャーキングが起こるのか、防ぐためにできることは何かについて説明します。
気になる所から確認してみよう
寝ることは体に不可欠な行動
ここでは睡眠の役割と重要性について説明します。
レム睡眠とノンレム睡眠
睡眠はレム睡眠とノンレム睡眠の大きく2種類に分かれており、睡眠時は90分周期で交互に現れます。
入眠後1時間程経過してから、まず現れるのはノンレム睡眠の方です。
レム睡眠のときは体が休んでおり、脳が活動している状態です。夢を見るのはレム睡眠のときだと言われています。
反対に、ノンレム睡眠のときは脳が休んでおり、体が活動している状態です。つまり、睡眠を取ることによって、体と脳の休息をとり、それぞれの疲労を回復することができます。
ノンレム睡眠と成長ホルモン
ノンレム睡眠の時間帯に、脳の脳下垂体(のうかすいたい)という部分から成長ホルモンが分泌されます。
この成長ホルモンには体内組織の修復・代謝を行う働きがあり、古くなった血液・骨・筋肉などの生まれ変わり(再生)を助けます。
血液の中には免疫力に関わる白血球などがあるため、睡眠不足になると免疫力が低下します。
レム睡眠と記憶
レム睡眠時、脳は活動して日中の様々な記憶を整理し、学習しています。
レム睡眠は睡眠の後半に多く現れるとされているため、トータルでは7時間程度の睡眠時間を取る必要があると言われています。
睡眠と交感神経
睡眠中は交感神経が抑制された状態です。交感神経の興奮状態が続くと、血圧が上昇し、心臓や血管に負担がかかります。
したがって睡眠不足は高血圧や狭心症や心筋梗塞など心疾患のリスクを高めます。また、交感神経は血糖値を上昇させる作用もあるため、糖尿病のリスクも高まります。
このように睡眠不足は様々な病気のリスクを高めます。
さらに、睡眠不足は、食欲を抑制する働きのある物質(レブチン)の分泌が減り、食欲を増進する働きのある物質(グレリン)の分泌が増え、食べ過ぎから肥満につながります。
睡眠とメラトニン
メラトニンは睡眠ホルモンとも呼ばれ、脳から分泌されて睡眠のリズムを整えたり(夜になると分泌量が増えるために眠くなり、朝になると分泌量が減るために目覚める)、抗酸化作用(体内の組織の老化を防ぐ)があります。
このメラトニンはセロトニンという物質から生成されます。
セロトニンは幸せホルモンとも呼ばれ、精神のバランスを整えてくれます。「寝てストレス解消」というのはセロトニンによる効果もあると思われます。
また、うつ病はセロトニンの分泌量が減ることによって起こると考えられています。
寝てる時にビクッとなる現象はジャーキング
自分の意志とは関係なく筋肉が痙攣する現象をミオクローヌスと言います。この現象がウトウトしているときや睡眠時に起こることをジャーキングあるいはスリープターツと呼びます。
どちらかの脚に起こることが多いようです。しゃっくりは横隔膜という筋肉がミオクローヌスを起こした状態であり、しゃっくりもジャーキングも生理現象の一つだと言えます。
成人の半数以上が経験したことがあるとされています。
ジャーキングは通常一度につき一回だけのことが多いですが、何度も起こる場合もあります。こむら返りやてんかんなどとは異なります。
なぜジャーキングが起こるのかは解明されていません。覚醒状態から睡眠状態に入るときというのは脳が不安定なため、脳が勘違いをして筋肉に収縮するよう誤った司令を出すためだと考えられています。
疲れているとき、強いストレスがかかっているとき、眠いのを我慢してウトウトしているとき、長時間起きているときなどに起こりやすい現象です。
ジャーキングと同時に起こる現象とは
高いところから落ちる夢を見ているときにジャーキングが起こることがあります。
これは脳が本当に高いところから落ちていると錯覚を起こすためと考えられています。この他にも幻覚、明るい光を感じるなど筋肉以外の症状が伴うこともあるようです。
ジャーキングの原因は4つ考えられる
ここでは、ジャーキングが起こる原因として考えられているものについて説明します。
脳が勘違いするという場合以外は睡眠環境(姿勢、疲労など)が原因となっています。
脳の勘違い
見出し3でも述べたように、高いところから落下するなどの夢を現実と脳が誤認(誤って神経伝達が脳から筋肉に行われ、筋肉が短く痙攣します)してしまうことが一つの原因と考えられています。
眠りに入る際は、脳が覚醒状態から睡眠状態に移行するため不安定になりやすく、誤認が起きやすくなります。
窮屈な姿勢
机に伏せた姿勢、ソファにもたれかかった姿勢など寝ている姿勢が窮屈な場合にジャーキングが起こりやすいと言われます。
布団に寝ていてジャーキングが頻発する場合は、寝具(枕、マットレス、敷布団)が柔らかすぎたり、硬すぎるために体に負担がかかって起こることもあります。寝具を工夫するのも一つです。
疲労などの身体的ストレス
睡眠不足、睡眠時間がバラバラ、眠気を我慢するという状態は体に負担となります。
また、肉体労働や運動強度の高いスポーツ(特に夕方以降)によって疲労感が強いときもジャーキングが起こりやすいと言われています。
精神的ストレス
人間関係などの精神的ストレスも身体的ストレスと同様、脳に負担をかけてジャーキングの原因の一つとなります。
頻発するジャーキングは病気の可能性も疑って
ジャーキング自体は生理現象であり病気ではありません。しかし、ジャーキングと似たような症状が出る病気がいくつかあるため、見分ける方法などについて紹介します。
周期性四肢(しし)運動障害
周期性四肢運動障害とは睡眠中に「つま先や足首がピクピク動く」、「肘や膝を素早く動かす」もので、睡眠障害の一つです。
年齢が上がるにつれて発症する人が多くなり、50歳以下では5%であるのに対し、65歳以上では45%に上るというデータもあります。
ジャーキングが1回あたり1秒未満の短い筋肉の痙攣なのに対し、周期性四肢運動障害は1回につき0.5秒から5秒程度の手足の運動が、1時間に15回以上見られるものを言います。
睡眠の前半に多く見られる傾向があります。睡眠の前半というのは深い眠りが現れる時間帯であり、眠りが深いほど疲労回復効果が得られます。
この時間帯に手足の無意識な運動が起こって疲労回復が妨げられると、日中の眠気・疲労感につながります。
また、自分の手足の運動によって夜中に目が覚めることもあります。しかし、本人には手足を動かしている自覚がないため、一緒に寝ている人から指摘されて病気が発覚するケースが多いです。
腓(こむら)返り
腓返りとはふくらはぎの筋肉が痙攣することを言い、「足が攣(つ)る」とも表現されます。
痙攣が数秒間から数分に渡るため、ジャーキングよりも長いという特徴があります。
また、腓返りが起こっている筋肉は硬く、痛みが伴い、痙攣が治まった後も数日間不快感が残るケースもあります。
健康な人でも激しい運動後や睡眠中に起こることがあります。これは脱水や電解質異常などによって腓腹筋(ひふくきん:ふくらはぎにある筋肉)が過興奮するために起こると考えられています。
しかし、心当たりがないのにもかかわらず腓返りが頻発する場合には、筋肉や神経系の病気が隠れている可能性があります。
睡眠てんかん
てんかんとは慢性の脳疾患で、何らかの原因によって脳から過剰な信号が伝って発作(全身がガクガクと震えたり、ピーンと硬直する)が起きます。
睡眠てんかんは睡眠関連てんかんとも呼ばれ、就寝後2時間以内あるいは起床後2時間以内に症状が出ます。
睡眠てんかんはジャーキングと異なり、手足の他にも症状が現れます。発作時には突然睡眠から覚醒して顔面の痙攣、舌を噛む、尿失禁、発作後の深い眠りなどが現れます。
現在は薬物治療によっててんかん発作を抑えることができるようになったため、睡眠てんかんの患者自体は減少傾向にあります。
むずむず脚症候群
むずむず脚症候群とは、脚がむずむずする、じっとしていられない、火照る、かゆい、痛み、針で刺されているような感覚といった様々な不快な異常感覚を生じます。
これらの症状が睡眠時に現れると、寝付きが悪くなったり、入眠後も無意識に脚が動くため、睡眠の質が低下し、睡眠障害の原因となります。
また、昼間の眠気、倦怠感、集中力の低下などを招きます。レストレスレッグス症候群や下肢静止不能症候群とも呼ばれます。
ジャーキングと異なるのは日中でも症状が出ること、症状が続く時間が長いということです。
はっきりとした原因はまだ解明されていませんが、脳内の神経伝達物質の一つであるドーパミンの働きが悪くなったり、鉄分の不足によって引き起こされているという仮説が有力です。
したがって鉄欠乏性貧血、抗うつ薬などの抗精神病薬を服用している人に見られる他、パーキンソン病や慢性腎不全、糖尿病などの病気を持った人にも見られます。
現在は、むずむず脚症候群から周期性四肢運動障害が現れることもあることから、これらは表裏一体の関係にあるとされています。
目指せ快眠!ビクッとせずに眠りたい
ここではジャーキングを予防するためにできることを説明します。それでも改善しない場合は、睡眠外来などの専門医のいる医療機関を受診するのも一つです。
規則正しい生活リズム
睡眠不足であったり、寝る時間や起きる時間がバラバラといった不規則な生活を続けると、ジャーキングが起こりやすくなるとされています。
ジャーキングが出たら体からのSOSと考え、睡眠時間は7時間程度確保し、規則正しい生活を心がけましょう。
運動
夕方以降の激しい運動はジャーキングの原因となるため控えるようにしましょう。
食事
食事は炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルの各栄養素のバランスがとれたものを心がけましょう。
またカフェインの摂り過ぎは交感神経を興奮させて睡眠の質を低下させるため、夕方以降の摂取量には注意しましょう。
こまめにストレス解消をする
心身のストレスの蓄積はジャーキングの原因となるため、こまめにストレスは発散するようにしましょう。
ストレス解消法は人それぞれですが、ゆっくりお風呂に浸かる、アロマなど好きな香りを嗅ぐ、ストレッチを行うなどのリラックスできることを寝る前に行うのがお勧めです。
無理な姿勢で寝ない
窮屈な姿勢で寝ていたり、寝具が体に合っていないとジャーキングが起こりやすくなります。
姿勢、使っている枕・マットレス・敷布団などの環境を整える工夫をしましょう。
当記事は医師、薬剤師などの専門家の監修を受けておりますが本サイトで提供する情報、文章等に関しては、主観的評価や時間経過による変化が含まれています。 そのため閲覧や情報収集は利用者ご自身の責任において行っていただくものとしその完全性、正確性、安全性等についていかなる保証も行いません。