昆布の食べ過ぎで腹痛を起こす原因とは【甲状腺異常にも要注意】
<監修薬剤師・食生活アドバイザー 藤沢 淳司>
日本人の誇りでもある和食の旨味の元になる「ダシ」と言えば煮干しにカツオに昆布が代表的ですね。
昆布自体があまり食卓に上らないという人でも、お正月の「昆布締め」なら食べたことがあるでしょう。
滋養に富んだ食材ですが、あまり食べ過ぎると腹痛を起こしてしまうこともあります。なぜ昆布を食べ過ぎると腹痛を起こしてしまうのでしょうか?
気になる所から確認してみよう
昆布は種類によって用途が違います
ダシをとったりサラダ昆布のように生食できるものがあったりと、昆布は種類によって用途が違います。
真昆布や羅臼昆布はダシ昆布にしたり佃煮や塩昆布・おやつ昆布として食べますし、利尻昆布は高級ダシ昆布として知られていますね。
おでんや昆布巻きにすると独特な旨みを出すのは日高昆布で柔らかさが特徴で、ふんわりした美味しさのとろろこぶは細目昆布という1年目の若い昆布です。
昆布に含まれる多くの栄養素とは
その栄養素を見れば「食べなくちゃ!」と思わずにはいられない昆布。健康な体は弱アルカリ性、その弱アルカリ性を保つには必要不可欠とも言える食品です。
粘りの元は水溶性食物繊維
アルギン酸やフコイダンは昆布などの海藻に含まれている水溶性食物繊維です。
生活習慣病の人が気になるコレステロール値の上昇や脂質・糖質の吸収を抑制するものです。
内臓脂肪に効くフコキサンチン
聞きなれない名前のフコキサンチン。海藻特有の「色」の元です。
色素であるフコキサンチンですが、内臓脂肪が蓄積されるのを抑制したり体脂肪や血糖値を下げる効果がある栄養素です。
『旨味』のグルタミン酸
和食の旨味は海外での評価とともに医療現場でも「食」のアプローチに生かされています。
グルタミン酸の旨味で人間の「美味しさセンサー」が働くと、同じ料理でも使用する塩分を減らせるというものです。さらに胃腸の働きを促進する効果も。
身体を作る大切なミネラル
骨に必要なカルシウムはなんと牛乳の6倍!鉄は40倍ほどになることも。
他にもナトリウムやカリウムといった人間の身体に必要なミネラルが豊富で、昆布に含まれるミネラルは他の食物から摂取するよりも吸収率がとても高くなるのです。
発育に必要なヨード
ヨード(ヨウ素)は子供の発育を促進させるために必要な栄養素です。
大人になっても基礎代謝を高めたり糖や脂質の代謝促進に一役買っています。
昆布は弱アルカリ性に保つ健康食品
人間は健康ならば身体が弱アルカリ性に保たれています。しかしなぜ「昆布などのアルカリ性食品をたくさん食べましょう」というのでしょうか。
食の欧米化によって肉類を多く摂取するようになってから、私たちの身体は酸性に傾いているからなのです。そんな昆布の健康に対する効果を解説します。
ダイエット効果
昆布に含まれるアルギン酸が糖質や脂質の吸収抑制効果を発揮します。
また脂肪を合成する酵素自体の働きを抑制するので、脂肪代謝もアップします。
コレステロール値を降下させる効果もあるので、低カロリーな昆布はダイエットに活用するにはもってこいですね。
水溶性食物繊維をたくさん含んだ昆布は便秘解消食材としても名高いものです。
病気に勝つ免疫力を高める
免疫力が低下すると、外的要因によって身体の様々なところに不調が起こります。
フコイダンは腸の免疫細胞や腸管細胞に直接働いて免疫力を活性化させる働きがあります。穏やかに働くことでアレルギーにも効果を発揮するようです。
代謝活性効果
昆布の色素であるフコキサンチンは糖の代謝促進効果があり、血糖値を下げることから糖尿病予防効果を持ちます。
カルシウムやマグネシウムなどのミネラルも代謝や筋肉の働きを良くするのに効果的ですし、高血圧や動脈硬化・むくみ予防の作用もあります。
まだまだある昆布の健康効果
アルギン酸は胆石の予防効果があると言われているようです。また悪名高いピロリ菌を吸着して除去する効果をフコイダンが持っています。
血管が詰まってしまう血栓症は、脳梗塞や心筋梗塞といった深刻な状態を招くもの。しかし昆布にはそれらを予防する効果を持っているのです。
昆布を食べ過ぎたら腹痛になるって本当?
おしゃぶり昆布はよく食べますが、さすがに腹痛を起こすほどは食べたことがありません・・・しかし、世の中には昆布を食べ過ぎて腹痛を起こしたという人がいるようです。
便秘改善効果というメリットがある昆布の水溶性食物繊維は食べ過ぎることでその効果がデメリットとして裏目に出てしまいます。
そもそも食物繊維というものは消化が悪いので、量が過ぎると大腸で水分を吸収される間も無く下痢として排泄されてしまうのです。
とろろ昆布はつい食べ過ぎてしまうような美味しさですが、食物繊維そのものなので注意した方が良さそうですね。佃煮など昆布の加工食品も注意した方が良いでしょう。
おしゃぶり昆布のようなそのままつまめる食品に加工する場合、添加物として人工甘味料が使用されています。これもまたお腹が悪くなる要因にもなります。
昆布は食べ過ぎると危険!妊婦さんは特に注意して
栄養素が豊富で身体に良い昆布ですが、食べ過ぎは危険です。
特に妊婦さんは昆布だけでなくわかめ・ひじき・海苔など海藻全般を食べ過ぎないようにした方が良いとされています。その理由は昆布に含まれるヨードにあるのです。
ヨードと聞いて思い浮かべるもの、ありますか?例えば喉が腫れたときに塗るルゴール液、造影剤として使用されるアイソトープなどですね。
同じように妊婦さんが昆布を食べ過ぎると、ヨードが胎児に蓄積されて先天性の甲状腺機能低下症で生まれてくる危険性があるからです。
甲状腺機能低下で治療中の方は昆布の摂取を制限されます。
甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモンの合成が抑制され、体重増加・倦怠感・抑うつなどが発生する病気です。
新陳代謝や臓器の動きも鈍くなるため冷えや肌荒れ・皮膚乾燥などの症状が出ることもあります。
女性なら月経異常が起きることもありますし、記憶力の低下や眠気・傾眠・脱毛・嗄声など身体の様々な部分に症状が起こる病気です。
専門医を受診するまでに時間がかかることもあり、注意したい疾患です。
昆布には妊婦さんが摂取したい葉酸が含まれていますが、食べ過ぎないように注意ということですね。
昆布の正しい1日の摂取量はコレ
海藻を比較的多く食べている日本人ですが、ダシや合わせ調味料も使うとヨードの摂取量が多くなる傾向にあります。
おしゃぶり昆布やとろろ昆布のように手軽に食べられるから尚更かもしれません。
基本的に1日のヨウ素(ヨード)摂取量の上限は2,200マイクログラムと言われています。
1日に昆布1g強ぐらいでヨウ素1,000~4,000マイクログラムとなり、それが適量ということになります。
摂取量が気になるときにはヨードの吸収を阻害する大豆や大豆製品(豆腐など)と一緒に食べたり、ヨードが昆布よりも少ないわかめやひじきに変えてみてはいかがでしょうか。
昆布に含まれるアルギン酸はアルコールを飲み過ぎた翌日のあの気持ちの悪い二日酔いの症状を抑えてくれる効果があるとも言われています。
しかし食べ過ぎると発がんリスクがあるとさえも言われている食材です。
健康に良さそうだからといって食べ過ぎるのではなく、なんでも偏りなく食べるようにした方が結果的に健康な体を保てるということですね。
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