水疱瘡の初期症状を見逃さないで【大人の場合入院することもある】
<監修医師 まっちゃん>
水疱瘡(みずぼうそう)は子供が罹るものというイメージの人が多いのではないでしょうか。
確かに感染者の多くは子供なのですが、大人になって初めて感染するという人も少なくありません。
大人になって水疱瘡に感染すると症状が重症化しやすいため、早期発見・早期治療が大切です。今回は水疱瘡の症状や感染経路、重症化しやすい条件などについて説明します。
気になる所から確認してみよう
水疱瘡とは
水疱瘡(みずぼうそう)は水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルスに初めて感染したときに発症する感染症です。空気感染もするため非常に感染力が強いです。
小児(1歳から4歳)に多く見られる感染症で、年間の感染者数は数十万人に上り、特に冬から夏(12月から7月頃)にかけて流行します。
水疱瘡の初期症状は37℃程度の発熱、倦怠感(けんたいかん)、頭痛などがあります。
しかし、子供はこういった症状を上手く言葉で表現することが難しく、「何となく元気がない」、「いつもより不機嫌」といった症状として現れます。
発症後数日でかゆみを伴う発疹(ほっしん)が腹部に出現し、次第に頭皮や手足などの全身に広がっていきます。
赤く小さい発疹は徐々に水疱(すいほう)になりますが、水疱になる前の段階は虫刺されなどと区別がつきません。そのため、水疱瘡と診断されるは複数の発疹が水疱化してからとなります。
水疱瘡と診断されると学校保健安全法に基づき、「すべての発疹が痂皮化(かひか:かさぶたの状態になること)するまで」学校等へ出席することはできません。
帯状疱疹の初期症状についてはこちらを参考にして下さい。
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水疱瘡の初期症状を見極めて
水痘・帯状疱疹ウイルスに感染すると、どのような症状が起こるのか説明します。
発熱
発疹が出現する1~2日ほど前に37度程度の発熱が見られ、数日で解熱します。
この際にだるさ、食欲不振、頭痛などが初期症状として現れることがあります。しかし、この時点では普通の風邪と区別がつきません。
発疹(ほっしん)
赤く小さなブツブツとしたもの(小紅斑:しょうこうはん)が出現し、強いかゆみを伴います。この時点ではあせもや虫刺されなどと区別がつかないことがあります。
発疹は腹部や顔面から出ることが多く、やがて全身に広がります。発疹は手のひらと足の裏には出ないのが特徴です。
水疱(すいほう)
紅斑は次第に膨らみ(丘疹:きゅうしん)、水疱(すいほう:水ぶくれの状態)、膿疱(のうほう:ウミを持った状態)、痂皮(かひ:かさぶたの状態)へと変化していきます。
紅斑が出現してから4日目くらいまでは次々と新しい紅斑ができるため、紅斑・水疱・膿疱・痂皮と、それぞれの状態の発疹が混在するのが水痘の特徴です。
特に水疱の中には水痘・帯状疱疹ウイルスが潜んでいるため、かゆいからといってかきむしってしまうと、ウイルスが空気中に飛散することになります。
かさぶた
一つの紅斑が痂皮になるまでに3日ほどかかります。すべてかさぶたになって剥がれ落ちるまでには1週間から10日ほどかかり、この状態になって水疱瘡が治癒したと判断されます。
合併症として起こりうる症状
子供の場合は、水疱瘡の合併症として熱性けいれん、肺炎、気管支炎などを起こすことがあります。発熱の症状が出た際、一部の子供は40℃以上の高熱となります。
そのとき熱性けいれんを起こすことがあります。熱性けいれんとは発熱に伴って脳が全ての指令をシャットアウトしてしまうために起こる現象なので、突然身体を固くし、手足がバタバタ・ガタガタ震えるものです。
また、大人の場合も気管支炎や肺炎などの合併症を起こすことがあります。
気管支炎についてはこちらを参考にして下さい。
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水疱瘡の感染経路は3つ
水痘・帯状疱疹ウイルスの人への感染経路は接触感染、飛沫感染、空気感染の3つがあり、感染力の非常に強い感染症です。それぞれについて説明します。
接触感染
接触感染とはウイルスが付着した物に手を触れ、手にウイルスが着き、その手で口や鼻、目を触ることによって体内にウイルスが侵入して起こる感染です。
飛沫感染
接触感染とは、水疱瘡に感染している人がくしゃみや咳をした際に、その中(飛沫)に含まれるウイルスを吸い込むことによって起こる感染です。飛沫は1mほど飛ぶと言われています。
空気感染(飛沫核感染)
空気感染とは飛沫核感染とも言い、飛沫が乾燥してその核(中心部分)となっている病原体が感染性を保ったまま空気中を漂います。
飛沫核の状態になると、飛沫よりも長時間空気中に漂うことができます。この飛沫核を吸い込むことによって起こるのが空気感染です。
感染と発症
水痘・帯状疱疹ウイルスが上記のような感染経路で体内に入っても、すぐに発熱や発疹などの症状が現れるわけではありません。
どのような細菌やウイルスにも言えることですが、体内にウイルスや細菌が侵入することを「感染」と言います。
それらが免疫力によって体外に排除されることなく一定量まで増殖し、発熱などの症状が現れるようになった状態を「発症」と言います。
そして、感染してから発症までの期間を「潜伏期間」と言います。潜伏期間は細菌やウイルスによって異なり、水痘・帯状疱疹ウイルスの潜伏期間は10日から21日(平均2週間)です。
帯状疱疹の治療期間についてはこちらを参考にして下さい。
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水疱瘡の重症化は大人だけではなかった
水疱瘡の発疹数は平均250個~300個ほど出現し、50個以下は軽症、500個以上は重症と分類されます。
水疱瘡は発疹数が多くなると高熱を伴いやすく、肺炎、気管支炎、髄膜炎、脳炎などの合併症を起こす可能性も高くなります。
ここでは水疱瘡が重症化しやすい人、感染に注意が必要な人について説明します。
1歳未満の乳児
乳児(1歳未満の赤ちゃん)は母親の水疱瘡に対する免疫をもらうことができます(ただし母親が水疱瘡に感染したことがない場合を除きます)。
しかし、この免疫も生後6ヶ月ころにはなくなるため、生後7ヶ月からは水疱瘡にかかると重症化しやすくなります。予防接種を受けられるのは1歳以降のため、注意が必要です。
免疫力が低下している人
抗がん剤治療や放射線治療、ステロイド剤を長期に渡って使用している人は免疫力が低下しやすい状態になります。
また糖尿病などの持病がある人も免疫力が低下しています。免疫力が低下していると、体内に侵入した水痘・帯状疱疹ウイルスを排除する力が弱くなるため、重症化しやすくなります。
大人
大人になって初めて水疱瘡にかかると水疱瘡そのものが重症化しやすく、(発疹数が多く、高熱を伴いやすくなります)、肺炎などの合併症も起きやすいのが特徴です。
子供よりも入院治療となる割合が高くなります。
妊婦及び胎児
妊娠期間中に初めて水疱瘡に感染すると、妊婦の症状が重症になるばかりでなく、胎児や新生児にも大きな影響を及ぼします。
妊娠初期に水疱瘡に感染すると、約2%の胎児・新生児に先天性水痘症候群という重い障害が生じる可能性があります。
先天性水痘症候群とは、低出生体重児、四肢形成不全、小頭症、白内障などが起こります。
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妊娠20週から37週頃に水疱瘡に感染すると、新生児の10%近くが帯状疱疹を発症します。
出産直前や直後に産婦が水疱瘡に感染すると、生後5日から10日頃に新生児が水疱瘡を発症します。抗ウイルス薬を投与しなかった場合、約30%は死亡するという報告があります。
妊娠中は予防接種を受けることができません。また、妊娠前1ヶ月から予防接種後2ヶ月間は避妊する必要があります。
妊娠を希望する人は、自身の水疱瘡の罹患(りかん)歴やこういったことを踏まえて家族計画を立てることが大切です。
水疱瘡の予防接種
水疱瘡の予防接種を受けた場合、90%以上の人に抗体ができる(免疫力ができる)ため、水疱瘡にかからない、またはかかったとしても重症化を防ぐことができます。
水疱瘡の多くは1歳から4歳の子供の時期にかかります。2014年10月から、生後12ヶ月から36ヶ月(1歳の誕生日の前日から3歳の誕生日の前日まで)の子供に対して、水疱瘡の予防接種が「定期接種」となりました。
定期接種になると、対象の年齢期間中は無料で予防接種を受けることができます。
大人の水疱瘡は時には入院も必要
水疱瘡と診断されると水痘・帯状疱疹ウイルスの増殖を抑える抗ヘルペスウイルス剤(アシクロビルやバラシクロビル)が飲み薬(重症の場合は点滴)として処方されます。
発疹発症から24時間以内であれば、アシクロビルの効果が高いとされています。
その他にも、かゆみを抑える目的の抗ヒスタミン剤やフェノール亜鉛華軟膏(あえんかなんこう)、化膿を予防する目的の抗生物質などが合わせて処方されることがあります。
このような治療を行っても症状の回復が遅い場合や合併症を引き起こした場合、免疫力が低下するような持病のある場合は入院治療が必要となります。
特に、水疱瘡に感染するのは子供の方が多いのですが、入院する人の6割は大人です。大人は子供より水疱瘡そのものが重症化しやすく、合併症を起こす可能性も高いということが理由です。
大人の合併症として多いのは肺炎や気管支炎、脳炎などです。肺炎や気管支炎になると発熱、咳や痰、呼吸困難が出ます。
脳炎では発熱、倦怠感、頭痛、嘔吐・吐き気、首の硬直、痙攣発作、意識障害などが現れます。これらの症状が当てはまる場合は早期に医療機関を受診しましょう。
意識障害についてはこちらを参考にして下さい。
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水疱瘡は入浴禁止。再開はいつから可能か?
水疱瘡のときに入浴しても特に差し支えはありません(高熱が出ているときは、入浴自体が体力を消耗させるため解熱してからにしましょう)。
しかし、体が温まるとかゆみが強くなり、かきむしりの原因となります。
かさぶたが自然に剥がれ落ちると痕は残りませんが、かきむしったりして無理に剥がすと痕が残ったり、雑菌が入って別の感染症を引き起こすこともあります。
また、水疱の中には多くの水疱・帯状疱疹ウイルスが潜んでいるため、家族内で感染が拡大する危険性もあります。したがって、水疱瘡にかかっている人の入浴の順番は最後にしましょう。
そのほかにも、短時間で済ませる、お湯の温度はぬるめにする、湯船に浸かるのではなくシャワー浴にする、入浴剤が刺激となることもあるため使用しない、体や髪を洗うときはゴシゴシ擦るのではなく、なでる程度に留めるなど工夫をしましょう。
入浴後もタオルは他の家族とは別にする、軽く抑えるようにして水分を除きくようにする、爪は短く切っておくなども大切です。さらに水疱瘡にかかっている人が浴室を使った後は、掃除や乾燥をしっかりしましょう。
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