深刻な介護うつとは?【症状,病気,治療法など詳しく解説!】
<監修医師 豊田早苗>
高齢人口が増えていく中、介護によってうつ病を発症する人が増加傾向にあるといいます。
育児や子育てと違って介護には終わりが見えません。精一杯介護しても、時間が経つほどに現実が辛くなっていきます。この精神的な負担から介護うつになる人が増えているのです。
では介護うつとはどういう病気なのでしょうか。介護うつについてみていきましょう。
気になる所から確認してみよう
介護うつとは
元々介護うつという病気があるわけではなく、介護者がうつ病にかかるケースが非常に多いため介護うつと呼ばれるようになりました。
厚生労働省の調査では約4人に1人が介護うつ状態ではないかと言われています。
長年にわたって家族や親の介護をしている人の中には、仕事との両立で介護に従事する人、相談できる相手がいない人、責任感から一人で介護をしている人、親の面倒を頼むことに罪悪感がある人も少なくありません。
そういう人は一人でストレスを抱えこんでしまい、段々と精神的不調をきたすようになります。この状態で、何か大きなイベントや環境の変化、辛い体験などが重なる事によってうつ病を発症してしまうのです。
介護うつの4つの精神的不調
無気力
何をするにでも億劫に感じるようになります。通常の無気力と違う事は、今まで興味があったことや楽しかったことに対しても無関心になることです。
また好きな食べ物や嗜好品に対しても同様の感情を持つようになります。
無気力に陥る心理についてはこちらも参考にして下さい。
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気分の落ち込み、悲観的な思考
うつ状態になると、楽しい事をしているはずなのに一向に気持ちが晴れません。1日中憂鬱な気持ちになってしまいます。また物事に対して悲観的になり、悪い側面ばかり気になるようになってしまいます。
不安と焦り
理由がわからない不安や焦りを感じるようになります。強い不安や焦りが続くことで、落ち着かなくイライラするようになります。
不安についてはこちらも参考にして下さい。
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思考力の低下
活気が乏しくなり無口になってきます。集中力や判断力が低下するため、ささいなミスや間違いが多くなり、自身の外見や服装を気にしなくなります。
セルフケアへ関心が向かなくなるため、不衛生な環境にいても気にならなくなります。
介護うつに陥ると体も悲鳴をあげている!
うつになると、心だけでなく体にも様々な症状が現れてきます。
頭痛、肩こり、腰痛
体に起こる痛みには、精神的ストレスや不安、うつ病が原因となるものもあります。これらは心因性疼痛と呼ばれ、頭や肩、腰に出現します。
病院で調べても特に異常がない場合が多く、痛みがなかなか治らないことがしばしばおこります。
耳鳴り、めまい
ストレスが原因となる耳鳴りやめまいでは、ふわふわするような感覚を伴うことが多いです。逆にぐるぐる回るようなめまいであれば耳鼻科の異常が考えられます。
動悸
うつ状態になると過剰なストレスで自律神経のバランスが乱れます。自律神経は体内の動と静のバランスを整えているため、自律神経が乱れると突然動悸が激しくなることがあります。
自律神経のバランスが崩れることで起きる症状についてはこちらを参考にして下さい。
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自律神経失調症の症状チェック!5つの原因も解説!
胃部不快感や胃痛
自律神経の乱れによって消化器系にも影響が出ると、胃酸が過度に分泌され胃痛を感じることがあります。
また消化器全体の働きが悪くなると、食べたものがうまく消化吸収されないため、胃部不快感や便秘、下痢の原因になってしまいます。
食欲減退と味覚障害
自律神経が乱れると交感神経と副交感神経のバランスが乱れることになります。常に交感神経優位の状態になると食欲減退を起こすことがあるようです。
さらにこのままの状態が続くと、味覚障害へと発展することがあります。味覚障害の出現の仕方は人それぞれで、特定の食べ物だけ感じないという場合や、食べ物すべてに味を感じないといった出現の仕方もあります。
味覚障害についてはこちらを参考にして下さい。
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睡眠障害
うつ状態になると睡眠障害が起こりやすくなります。不眠の現れ方は様々で、入眠困難や中途覚醒、早朝覚醒などが起こります。日中に強い眠気を感じてしまうこともあります。
介護うつの原因はコレ
では介護うつの原因には何があるのでしょうか。
ほとんどの介護者が感じているストレスに、精神的な負担があります。
✅ 経済的な不安
✅ 自身の病気や体調不良
✅ 自分の時間がほとんどとれない
✅ 介護行為(食事、排泄、入浴)へのストレス
✅ 相談できる人がいない
✅ 手伝ってくれる親戚や家族がいない、または手伝わない
✅ 認知症の人とのコミュニケーション
✅ 徘徊によるご近所トラブル
などが含まれるようです。
また、介護者自身の性格や性質も介護うつには大きくかかわってきます。
特に責任感があり、なんでも完璧にこなそうとする人は介護の場面に関わらず、うつ病にかかりやすい性格であると言われています。
このような人は親戚や家族からの期待に応えようとプレッシャーを感じてしまい、孤独に悩みを抱えているケースもあります。
また、介護に献身的に当たっている人の中には、介護が終わったあとに介護うつになるケースもあるようです。
これは介護が人生の生きがいのようになっている人に起こりやすくなっています。介護をしている時の緊張が一気に解けることで、無気力状態になってしまうのです。
介護うつは治療で治る病です!
うつ病に一番良い治療は、ストレスとなっているものから離れて十分な休養をとることです。さらに以下の治療を組み合わせることで、十分な効果を得ることができます。
家族に介護うつが疑われる人がいるなら、すぐに医療機関を受診するようにしましょう。
薬物治療
うつ病の治療に使われるお薬には、SSRIとSNRI、NaSSAという抗うつ薬が使用されます。これらは脳のセロトニンやノルアドレナリンに作用し、その作用を助ける働きがあります。
これにより意欲向上や活力が湧いてくるようになります。
特にNaSSAと呼ばれる薬は、近年開発された新薬で、副作用の出現が少なく効果の出現も早いことから、うつ病を早期に改善できるのではないかと期待されています。
またいずれの薬も副作用として口渇、排尿困難、眼圧の上昇があるため、服用の際は医師に持病などを忘れずに伝えるようにしましょう。
抗うつ剤の種類についてはこちらも参考にして下さい。
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抗うつ剤の8つの副作用に注意!【効果と合わせて確認しよう】
精神療法
うつ病になりやすい人は責任感が強く、完璧主義者、落ち込みやすいといった性格の人が多く、ストレスを感じやすい傾向があるようです。
精神療法ではストレスに負けにくく、再発を起こさないよう働きかける治療になります。
精神療法には
✅ 支持的精神療法
✅ 認知療法
✅ 対人関係療法
の3つがあります
支持的精神療法
支持的精神療法とは精神療法の基本的な治療になります。カウンセラーや治療者がうつ病患者の悩みや不安を聞いていき、それに対して否定も賛成もしません。
ただ聞いてもらうだけですが、悩みや不安を誰かに聞いてもらうだけでもうつ病治療に高い効果があります。
認知療法
何か障害にぶつかった時に、それを延々と悩み続ける自身の癖を見つけだし、改善していこうとする治療です。自身がマイナス思考の悪循環に陥っていることを認知することから始まります。
対人関係療法
対人関係療法は重要な人との関係と、それに伴う感情を見直して自分の自尊心を高めていく治療法になっています。
行えるセッション回数に限りはあるものの、ほかの二つの治療法と併用することで、うつ病患者の支援に役立っている治療法です。
介護うつの4つの予防法
うつの症状が出ていないか注意
うつ病患者のほとんどは、自分がうつ状態にあると気づかない人がほとんどだと言います。そのため人に指摘を受けるまでは自身が危険な状態にあると自覚のない人が多いようです。
これを防ぐためにも、まずは自分にうつ様の症状が出ていないかチェックしてください。前述した症状に覚えがあれば、うつ状態と言えるでしょう。
休養も大事
ストレスによって疲れていると自覚したら、すぐに休養することです。この時、ストレスとなっているものから離れる事が望ましいでしょう。
十分な休養をとることが難しい場合は、家族や介護サービスに依頼し、ゆとりをもって介護ができるよう環境を整えましょう。
相談する
一人でストレスを抱え込まず、いろいろな人に相談するようにしましょう。家族や友人、ソーシャルワーカー、病院関係者でも構いません。
大事な事は、他人に悩みを打ち明け、話を聞いてもらうことです。また介護講座や勉強会などに参加し、同じ悩みを持つ人を友人を持つことも良いかもしれません。
社会サービスを活用
介護負担を減らす方法は、何も家族の援助だけではありません。
近年では公的な介護サービスも便利になってきており、ショートステイやデイサービスなど、期間を選んで利用できるものがあります。
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また介護認定は一度認定されても、状態に変化があれば再認定を行う事が可能です。詳しく情報を知りたい場合は、市区町村やソーシャルワーカーに相談してみるとよいでしょう。
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