肺に水がたまる5つの原因や病気【症状も確認しておこう】
<監修医師 ドクターTST>
肺に水がたまるというと非常に恐ろしい物に聞こえます。肺には無数の毛細血管が走っていますが、この血管にはもともと微細な穴が空いており、血液の血漿成分が出入りしています。
これにより、細胞に栄養や酸素を与えたり、老廃物を血液の中に回収したりしています。
しかし、しみ出す量が回収される量を上回れば、それがあふれ、肺に水がたまるようになります。この状態は肺水腫(はいすいしゅ)と呼ばれています。
また、肺の外側にある胸膜という膜と肺の間に水が溜まる胸水(きょうすい)という状態もあり、両者が同時に発生することもあります。
肺に水が溜まる原因は様々ですが、原因を問わず肺に水がたまることで生じる症状としては、まず呼吸困難があげられます。
特に仰向けになると息が苦しくなるので、夜中に突然目が覚めたり、横になりづらくなったりします。
また、喉の奥でゼーゼーという音や咳が出たり、ピンク色の泡のような痰がでたりもします。
進行すると体の酸素が足りなくなり、唇や皮膚が紫色になり、血圧の低下や意識の混濁などが起き、命の危険が生じます。
気になる所から確認してみよう
肺に水がたまる5つの原因や病気
心不全
心不全とは文字通り、心臓の収縮・拡張機能が不完全になった状態です。これにより体に十分な血液を怒ることが出来なくなり、様々な障害が発生します。
肺水腫が生じるのは、心臓の左側(左心)の機能が低下した左心不全の時です。
左心の機能が低下すると体に送り出す血液の量が低下し、肺を循環する血液がなかなか回収されずに溜まりがちになります(うっ血)。
この結果、肺の血管の圧力が高まって水がしみ出し、肺水腫や胸水が溜まる状態になります。心不全は肺水腫の原因となる病気としては、最も一般的なものです。
心不全の症状としては、頻脈、尿の量の減少、血圧の低下、手足が冷たい、意識が混濁する、すぐに疲れて息が切れるなどがあります。
心不全の治療は循環器内科で、総合病院の場合は内科を受診→循環器に回されます。治療法は投薬と、生活習慣の改善が主になります。
腎不全
腎臓は体に溜まった老廃物や余分な水を尿として体外に排出する役目があります。
しかし、腎臓の機能が低下するとそれらが排出されにくくなり、血圧も高くなって肺に水がたまりやすくなる状態が作り出されます。
腎不全の症状は、思考力の低下、全身のだるさ、むくみ、尿の量の減少、手足のしびれ、胸が苦しい、脈が乱れるなど、非常に多岐にわたります。
腎不全を起こす原因として多いのは糸球体腎炎や高血圧で、腎臓に大きな負荷がかかることで腎不全が起こります。
また、感染症も腎不全の原因です。これ以外にはタバコや過度の喫煙、糖尿病などがあげられます。
腎不全を根本的に治す方法はないので、透析によって腎臓の働きの一部(老廃物や余分な水分の排出)を行うことで症状を緩和させます。
腎機能についてはこちらを見て参考にして下さい。
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肺炎
肺炎は肺、特に肺胞(肺の奥にある小さな袋)に炎症が生じている状態です。肺炎はインフルエンザなどによる感染症で引き起こされることが多く、重症化した時には肺水腫になることがあります。
炎症を起こして弱った肺の血管の壁は水分を通しやすくなり、水が漏出すしやすくなるためです。
肺炎の一般的な原因は感染症ですが、アレルギーで肺炎が起きることもあります。これは吸い込まれたアレルゲンが肺胞に接触し、肺胞が炎症を起こしてしまうことが原因です。
肺炎はただでさえ呼吸困難が生じているので、重症化した状態で肺水腫まで生じるのは極めて危険です。
肺炎になっているときは、咳や痰、喉の痛み、胸痛といった呼吸器の症状だけでなく、発熱や全身のだるさなどが生じます。
高齢者ほど肺炎にかかりやすく、90歳以上の老人では死因の上位を占めています。原因が細菌の場合は抗生物質などが使われますが、ウイルスが原因の時は対症療法が主になります。
アレルギーの時は、何より原因の物質がある場所から非難することが第一になります。
時には入院が必要なこともあり、検査を兼ねても1週間程度で済むこともあれば、重症の場合は治るまでに1か月以上もの入院期間を要することもあります。
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胸膜炎
胸膜炎とは肺の外側を覆う胸膜という膜に生じる炎症です。かつては肋膜炎という名前で呼ばれていました。
胸膜に炎症が起きると、肺炎の時と同じように胸膜の中にある血管から水分やたんぱく質がしみ出し、肺と膜の間にある胸腔というスペースに水が溜まります。
胸膜炎はそれ単体で起こることはあまりなく、肺炎や癌など、何らかの病気に伴って一緒に発生します。
肺炎の場合は、肺炎の原因となった細菌が胸膜にまで達することで炎症が発生します。
癌が原因の物は、血流やリンパに乗ってばらまかれたがん細胞が胸膜に達したことが原因です。胸膜炎の原因になる癌は肺がんが最も多く、次いで胃がん、乳がん、卵巣がん、膵臓がんとなっています。
それ以外にも、胸膜そのものに癌が生じる悪性胸膜中皮腫(あくせいきょうまくちゅうひしゅ)になったときも、胸膜炎が起きて水が溜まるようになります。
胸膜炎が起きると、特に深呼吸や咳をしたときに胸に痛みが生じるようになります。また、水が溜まると肺が圧迫されるので、呼吸が苦しくなって息切れが生じやすくなります。
治療方法としては元の病気を治療しつつ、肺にたまった水を抜くことが重要です。
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肺がん
肺に水が溜まるのは、肺がんの末期症状の一つです。肺に癌が生じる原因は様々ですが、一番多いのはタバコです。
また、粉塵を長期間吸入したことで起きる肺の異常、いわゆるじん肺で肺がんが起きることも良くあります。
肺がんの手術をした後には肺に水が溜まりやすくなるのですが、そちらは排水のための管を挿しておくことで2~3日で回復します。
手術をしていないのに肺に水が溜まっているときは、既にリンパや血液にまで転移しているとみることが出来ます。
4つに分類できる肺がんの進行度では、既に3か4の状態にあると思ってよいでしょう。
肺に水が溜まっていると放射線治療の効果は期待できないケースが多いので、化学療法がメインになります。
しかし、4の状態まで肺がんが進行していた場合、余命は半年~1年半しかなくなっていることが普通なので、たまった水を抜いて苦痛を和らげることしかできないケースが多くなります。
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肺に水がたまるのを予防する方法
喫煙をやめる
喫煙は肺に様々な有害物質を取り込む行為なので、当然ながら肺がんが生じる確率は大きく高まります。
肺の機能も低下するので各種の病気も生じやすくなり、感染症で肺炎が発生する危険性も増えます。
更にタバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、血圧を上昇させます。
この結果、心臓や腎臓には大きな負担がかかり、心不全や腎不全が起こりやすくなります。肺に水がたまるのを予防したいときは、まずたばこをやめましょう。
高血圧の治療をする
血圧が高ければ心不全や腎不全も起きりやすくなります。喫煙以外にも過度の飲酒のほか、塩分過剰の食事や運動不足といった不摂生も高血圧の原因です。
生活習慣の改善や降圧剤などによる治療を受ければ、肺水腫になったり胸膜が溜まったりする原因の病気になるのを防ぐことが出来ます。
高血圧についてくわしくはこちらを参考にして下さい。
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がん検診を受ける
どの部位で生じる癌であっても、胸膜炎を引き起こす原因となります。
家族に癌歴のある人は定期的に病院で検査を受け、特に中年以降になると喫煙をしていなくても肺がんが発生することもあるので、一層の注意が必要になります。
感染症を予防する
肺炎の原因として最も多いのはインフルエンザです。インフルエンザは予防接種を受ければ感染する確率が大きく減るので、毎年流行する時期の前に予防接種を受けるようにしましょう。
その他、人込みは避ける、マスクをする、手洗い・うがいを欠かさないなども、単純ですが非常に重要な予防法です。
地上で生きる動物の肺は、水が入っていれば呼吸が出来なくなって死んでしまいます。そのため、肺に水がたまる状態は陸上でおぼれているのと同じで、かなり苦しい状態です。
肺に水がたまる症状はそれだけで出ることはあまりなく、他の場所で生じた病気がかなり進行しているときのサインです。
横になると息苦しい、異様なまでの息切れ、水っぽい咳、ピンク色の泡のような痰、胸の痛みといった症状があれば、内科を受診して検査してもらうようにしましょう。
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