胸膜炎の治療期間はどれくらい?【後遺症も合わせて確認】
<監修医師 ドクターTST>
胸膜炎とは、肺を包んでいる膜が炎症を起こして、胸に水がたまってしまう病気です。肺炎や結核、がんなど様々な病気が原因となって発症します。
今日胸膜炎は一体どのような治療を行うのか、そしてどのくらい治療期間が必要なのか、詳しくご説明します。
さらに、胸膜炎の後遺症についても解説します。ぜひ参考にしてください。
胸膜炎の治療方法
胸膜炎の治療方法は、原因によって異なります。一つずつ見ていきましょう。
がん性胸膜炎の場合
悪性腫瘍が原因の場合は、胸腔ドレナージを行います。胸腔ドレナージとは、肋骨の骨の間から細いチューブを入れて、溜まった胸水を体外に汲み出す方法です。
胸水を減らしてから、アドリアマイシンなどの抗がん剤や、ピシバニールを注入して胸水がたまってしまうのを防ぎます。
場合によっては、気胸の治療でも行われる、「胸膜癒着術」を用いて胸水が溜まらないように胸膜の隙間を塞ぎます。
全身には、シスプラチンなどの抗がん剤を投与して、がん細胞を死滅させるようにします。
感染性胸膜炎の場合
細菌に感染したことが原因で起こる胸膜炎の場合も、もし水や膿が溜まっているようなら、チューブを挿して液体を取り除きます。
さらに、抗菌薬を点滴し、細菌の感染に対処します。例えば、ペニシリンやセフェム系、クラビット、クラリスロマイシンなどの抗菌薬が使用されます。
感染の原因となっている菌(起炎菌)が同定されれば、その菌に最も有効な抗菌薬が選ばれることになります。症状が重症な場合は、カルバペネムという強力な抗生物質が投与されます。
結核性胸膜炎の場合
結核が原因で引き起こされた胸膜炎の場合は、ストレプトマイシン、リファンピシン、イソニコチン酸ヒドラジド、エタンブトール、ピラジナマイドなどの抗結核薬を用いて治療を行います。
痛みの緩和方法
胸膜炎に掛かると、胸の痛みに悩まされます。胸の痛み止めにはアスピリン、イブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬が広く用いられています。
また、仰向けになって寝ると痛みが生じやすいので、痛みのある(胸水のたまっている)方を下にすると、患部を圧迫して痛みを少し和らげることができます。
痛みがひどい場合はお風呂に入るのも避けたほうが賢明です。お風呂で体を温めてしまうと、炎症が悪化することがあるからです。
炎症が引くまで、お風呂は我慢して、シャワーで軽く体を流す程度にしましょう。
胸膜炎に聞く漢方とは
胸膜炎に有効な漢方は、小柴胡湯(しょうさいことう)です。この漢方は、「体力中等度で上腹部がはって苦しく、舌苔を生じ、口中不快、食欲不振、時により微熱、悪心などのある人」の症状を緩和させます。
漢方は体質によって効力の大小がありますので、興味のある方はまずは専門家に相談してみてはいかがでしょうか。
胸膜炎の治療にかかる期間
胸膜炎が完治するまでにはどのくらい時間がかかるのでしょうか。胸膜炎の治療には、平均で1〜2か月かかると考えてください。
ただし、病気の状態や、合併症の有無、体力や回復力によっても変わるため、あくまで目安としての数字です。
胸膜炎の治療では、先程お伝えしたように、胸水を抜く、炎症を抑える、原因を取り除くといった治療が行われます。
胸膜炎が単体で生じた場合
胸膜炎が単体で生じていて、他の病気を併発していない場合は、治療期間も少し短めになります。レントゲン撮影をして胸に影が見えたら、胸水を抜いて、さらにその胸水を分析し原因を突き止めます。
場合によっては、すぐに入院となるケースもあります。胸水がたまっていると、その水が肺を圧迫している状態になっています。
圧迫を解消して肺が元の大きさに戻るまで、最短で10日ほどかかります。
胸膜炎と別の病気を併発している場合
多くの場合、胸膜炎は他の病気によって引き起こされます。例えばがんや肺炎、結核などがそうです。
その場合は、胸膜炎の治療を行いながら、他の病気の治療も並行して行います。そうしないと、悪化や再発の恐れがあるからです。
結核性の胸膜炎の場合は、治療開始をしてから2週間くらいで発熱が収まり、6週間程度で胸水が吸収されます。
ですが、がん性の胸膜炎の場合は、治療が数ヶ月にわたることもあります。治療が長期にわたる場合は、できるだけ安静にするようにするのが早期回復への第一歩です。
入院したり、通院が長引くこともありますが、治療に専念することを心がけましょう。
胸膜炎は自然治癒は可能なの?
胸膜炎の自然治癒はありえますが、本当に一部のケースだけです。
気づかぬうちに自然治癒していたという例はないわけではないですが、もし病院で胸膜炎と診断されたなら、自然治癒は難しいと考えてください。
胸膜炎は他の病気と併発して起こることがほとんどであり、またその病気も肺炎、結核、がんなど自然治癒が難しい病気ばかりです。
胸膜炎の症状は風邪やインフルエンザと間違えやすいですが、もし、長引く咳や胸痛、血の混じった痰など、いつもと異なる症状が見られたら、すぐに内科や呼吸器科を受診するように心がけてください。
胸膜炎は、早期発見が早い回復への鍵です。
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胸膜炎の後遺症について
胸膜炎で後遺症が残ることはあるのでしょうか。答えは、はい、いいえの両方です。
一般的に、細菌感染が原因の胸膜炎を患った場合、早めに治療を開始できれば後遺症はほとんど残らないとされています。
胸膜炎が結核性だった場合は、胸膜の肥大が残ったり、慢性的な呼吸機能障害が残ったりすることがあります。
感染性や結核性では、人によっては移動や運動の際に引き攣れ感や痛みが出て、疲れやすくなってしまう人もいます。
がん性胸膜炎の場合は、胸膜炎自体の後遺症というより、がん治療自体が体に与える負担の方が大きいです。
がん性胸膜炎は他の臓器のがんが転移して発症することが多く、がんが進行していることや治療が難しいことが多いからです。
中には治療がうまくいき、長生きできている患者さんもいますが、がんの治療の効果は個人差が大きく、うまく行くケースばかりではありません。
ほとんどの場合、がん性胸膜炎を発症した人は、余命半年〜1年ほどしかありません。
抗がん剤には副作用もあり、吐き気や嘔吐に悩まされる方も多いです。治療を続けながら、いかにQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を保つかが重要になります。
まとめ
今回は胸膜炎の治療方法や治療期間についてお伝えしましたが、いかがでしたか?もし、胸膜炎が疑われる場合は、早めに内科を受診して検査を受けるようにしてください。
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胸膜炎は残念ながら、風邪のようにすぐ治る病気ではありません。
もし、胸膜炎にかかってしまったら、「体が休めと言っているんだな」と思って、しっかりと休養して、治療に専念するようにしてくださいね。
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