脳貧血の症状チェック!【意外な原因はコレなんです!】
<監修医師 豊田早苗>
脳貧血というと、文字を見ただけでどんなものなのか想像できてしまいます。
脳に血がたりないこと、確かにそれでいいのですが、では貧血といっしょ?といわれるとたちまち答えに詰まります。これに答えられるようになる脳貧血の症状の知識を解説していきます!
脳貧血と貧血。違いは何?
脳貧血と貧血、どちらもイメージ的には、朝礼などの時にふらふらと倒れるものといった印象があります。でもこの二つは全然違う別の症状です。個別に説明します。
脳貧血
まず脳貧血ですが、正式には「起立性低血圧」(きりつせいていけつあつ)とよばれます。座っていて急に立ち上がった時などに、めまいや立ちくらみが起こります。頭部の血圧が急に低くなり、血液の循環する量が減って脳が酸欠状態になったために起こります。
無理に立ち続けるとふらつきや意識が薄れて倒れることがあります。とりあえずその場にしゃがむか、できるのなら横になっていると、数秒から数分で血圧が上がり楽になります。
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貧血
次に貧血です。字面でよく誤解されるのですが、血液が足りないのではなく、血液成分のうち、赤血球数、ヘモグロビン量、ヘマトクリット値が正常値より少ない状態のことを言います。この3つの数値は血液が酸素を運ぶ能力を示すものです。
貧血になると、酸素を運ぶ血液成分が少なくなるので体内が酸欠状態になり、どうきや息切れ・顔面蒼白といった症状が現れます。
鉄分の不足、出血による血液減少が直接の原因で、その先には偏食、妊娠出産による鉄需要の増加、生理や疾患による出血、白血病などによる造血機能低下などの原因があります。
脳貧血の症状
脳貧血は貧血とは違って、血液自体には何も異常はなく血圧の変化によって起こる症状です。症状のもとになっているのは酸素不足、酸欠なので貧血と同じです。ただ、脳貧血は脳の酸欠、貧血は体全体の酸欠になります。
ふらつき、めまい、立ちくらみ
脳貧血の代表的な症状です。寝たり座っている状態から立ち上がった時、血液が脳へ供給されるのが遅れ、ふらついたりします。浮遊感や頭痛のほか、強く現れると視野障害、錯乱、しびれ、意識障害、けいれんなどが起こります。
20~30代の女性に多く現れることが多いのですが、血圧調整機能が衰える高齢者でも全体の20%にも及ぶ割合でみられます。子供も血圧調整機能が未発達なので、朝礼中などに倒れることがあります。
寝起きの悪さ
体質的に低血圧の人に見られ、怠けていると取られがちな症状です。脳に血液が回りにくいので、朝目が覚めても頭がぼんやりしてなかなか起きられません。成長期にある10代の女の子に現れやすく、個別に「起立性調節障害」と呼ばれることもあります。
起立性調節障害についてくわしくはこちらをみて参考にして下さい。
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失神
脳貧血による意識障害の一つで、「一過性意識消失発作」、いわゆる「気絶」です。普通は数分程度で意識が戻ります。記憶喪失など後遺症が残ることはありません。症状の程度が高い場合にはけいれん、錯乱などが起こることもあります。
数秒から数分の内に意識が戻ることが多いのですが、応急処置としては横にして衣服をゆるめるなどです。なお、数分で意識が戻らない場合は別の病気かもしれません。救急車を呼びましょう。病院で酸素吸入すればたいていは回復します。
頭痛、耳鳴り
脳貧血を起こす低血圧症は自律神経の働きが鈍く、血圧の調整がうまくいかないことが原因のひとつになります。この結果として頭を抑えつけられるような緊張性頭痛、耳鳴り、首筋から肩にかけて痛みが出る「衣紋掛け痛」が起こったりします。
脳貧血の原因
脳貧血の原因はただ一つ、血圧の低下です。血圧が下がって脳に必要な血液が不足して、脳貧血が起こります。ではその低血圧はなぜ起こるのか、その理由を見てゆきます。
脱水
低血圧の原因としては、暑さや激しい労働、運動などによる脱水で体液液量の減少が起こったとき、利尿薬、血管拡張薬、降圧薬を使った影響、出血や嘔吐、下痢などが考えられます。
水分が減って血液が流れにくくなり、ポンプ機能が低下して低血圧になります。
自律神経の乱れ
ストレスなどの影響で自律神経の働きが低下していると、血圧の調整機能がうまく働かず、一時的に必要な血液量が不足します。特に脳で不足すると影響がすぐに現われて、脳貧血のさまざまな症状につながります。
10代の思春期では、身体の変化や心の悩み・精神的ストレスなどによって自律神経に乱れが出る自律神経障害(起立性調節障害)が多くなります。この障害が若い年代の低血圧の大きな原因になっています。
自律神経の乱れは血管迷走神経反射によっても起こります。痛み、恐怖、拘束などで血管迷走神経が刺激され、それが交感神経につたわって血圧低下を起こします。あまりの恐怖に血の気が引いて失神するといった場面はこの現象です。
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重力、加齢
体質で血管の収縮力が弱い人は、急に立ち上がったりすると重力負荷に負けて血圧低下が起こります。高齢者では加齢による身体の変化で心機能、血圧調整機能が低下して、低血圧による脳貧血を起こしやすくなります。
脳貧血を予防しよう
朝起きる時に注意する
脳貧血を起こしやすい人は、急な姿勢の変化に気をつけます。飛び起きない、ゆっくり起きる、頭を低くして起き上がる、といったことを実行してください。上半身を高くして寝ると、起きる時の姿勢の変化が少なくなります。ちょっと大変かもしれませんが。
水分補給
脱水は脳貧血の直接の原因になります。アルコールやカフェインは利尿作用があるので、摂りすぎないよう注意してください。たくさん汗をかいたら水分補給を心がけます。
極度の水分不足の場合はこちらの対応を参考にして下さい。
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長時間の立ち姿勢を避ける
長い時間立ったままだと血液が下半身に溜まりやすくなります。この結果脳へ回る血液が少なくなり、脳貧血が起きやすくなります。時々はしゃがむなど、立ち姿勢が長くならないよう心がけましょう。
運動の習慣をつける
ウォーキング、水泳などの運動を、できれば毎日続けます。運動で下半身の大きな筋肉の血流がよくなると、脳に回る血液の循環もよくなります。頭もよくなるかも。
弾性ストッキングをはく
脚の血管を弾性ストッキングで圧迫すると、静脈の血液が脚に滞留せず、スムーズに心臓に戻ります。全身の血流改善につながります。
長湯を避ける
長湯すると血管がゆるんで収縮力が弱くなり、血圧が下がります。風呂上がりに立ちくらみが起きやすい人は長湯は控えましょう。出る時にぬるま湯でかけ湯をすると、体表面の血管が収縮して血圧低下を防ぎます。冷たい水では血圧が急上昇して危険です。
規則正しい生活
自律神経の乱れは血圧調整に悪影響を及ぼします。規則正しい生活でストレスや睡眠不足、疲労を解消することを心がけます。自律神経障害の改善にはストレス解消がもっとも効果的です。これによって脳貧血の予防にもつながります。
まとめ
脳貧血についての知識をお伝えしました。脳貧血のイメージが変わったかもしれませんね。栄養不良ぐらいに考えている人も多いようですが、何と、原因は低血圧だったとは…。
血圧が低い人は長生きするという説も聞いたことがありますが、よくないこともけっこうありますね。高血圧にとかく目が向きがちですが、健康で快適に過ごすために低血圧にももっと関心をもちましょう。
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