腹筋がつるのはなぜ?原因や治し方を解説【病気の可能性も疑って】
<監修医師 まっちゃん>
腹筋をつると、胃がねじれるような激しい痛みに襲われます。
しかも、ふくらはぎや太ももなどをつった直後と同様に、筋肉痛のような違和感や不快感が残ってしまうため、できれば予防したいものです。
そこで今回は、腹筋がつる原因や対処法、頻繁につる場合に疑われる病気などについて説明します。
気になる所から確認してみよう
シックスパックだけが腹筋じゃない
腹部にある骨格筋(※)には、腹直筋、外腹斜(ふくしゃ)筋、内腹斜筋、腹横筋があります。
腹直筋は中央・前面にある筋肉で縦方向に走行しており、シックスパックと呼ばれることがあります。
外・内腹斜筋は腹直筋の横にある筋肉で、外腹斜筋は斜め上方向に走行しているのに対し、内腹斜筋は斜め下方向に走行しています。
内腹斜筋は外腹斜筋の内側にあります。ウエスト部分のくびれを作るには外・内腹斜筋を鍛える必要があります。
腹横筋は腹部全体の後面にある筋肉で横方向に走行しています。
また、腹直筋や外・内腹斜筋は表層筋(アウターマッスルとも言います)、腹横筋は深層筋(インナーマッスルとも言います)と言います。
※骨格筋は、その両端が腱や骨に付着していて、運動や姿勢を保持する働きがあります。
また、自分の意志で動かすことのできる筋肉であることから、随意筋に分類されます。(自分の意志で動かすことのできない筋肉を不随意筋と言い、心臓の筋肉である心筋や平滑筋などがあります。)
見せるより重要な腹筋の役割とは
腹直筋は主に体幹を屈曲(前に倒す動作)する際に収縮し、腹斜筋は主に体幹を側屈(そっくつ:横に倒す動作)・回旋(かいせん:ひねる動作)をする際に収縮します。
このように腹筋は体幹の動作に大切な役割を担っています。
また、腹筋は背筋と共に腹腔内の臓器を保護する働きがあります。腹腔とは腹筋と背筋で囲まれた空間のことで、腹腔内には胃・腸・肝臓などの臓器があります。
特に腹横筋と腹横筋は横隔膜と共に、腹腔内の圧力(腹腔内圧)を調節する役割を担っています。
排便時やくしゃみ、咳をする際にはこれらの筋肉を収縮させて、腹腔内圧が高まります。反対に腹腔内圧が低下すると、姿勢が安定せず前傾姿勢、猫背などのトラブルを招きます。
つるとはどういう現象か?
「つる」とは何らかの原因によって筋肉が自分の意志とは無関係に異常収縮(緊張)を起こしている状態で、患部に触れると筋肉が硬直していることが分かります。
つることを正確には筋痙攣(けいれん)と言います。筋痙攣は通常数十秒から数分間続き、治まった後もしばらくは患部の痛みや痺れ、違和感などの不快感が持続します。
今回取り上げる腹筋の他にもふくらはぎ、まぶたなどでも起こります。
なぜ腹筋がつるのか?3つの原因を探る
体内の水分やミネラルのアンバランス
体内においてカリウムやカルシウム、マグネシウムなどのミネラルは筋肉が収縮する際に必要な成分です。
そのため、大量に汗をかく、利尿剤の使用、下痢などがあると、体内では一時的に水分不足やミネラル不足あるいは両者のアンバランスが起こってしまい、筋痙攣の原因となります。
筋肉の使いすぎ(筋肉疲労)
筋トレや激しい運動中及びその直後に腹筋がつる場合は、筋肉に疲労物質が蓄積することで筋肉疲労を起こし、筋痙攣の原因となります。
ただし、「激しい運動」というのは個人の普段の運動量によって異なります。
運動習慣のない人や筋肉が減少してくる高齢者の場合、運動強度そのものは高くなくても、久しぶりの運動によって筋肉疲労を招いて筋痙攣を起こしてしまいやすくなります。
血行不良
筋肉に酸素や栄養(水分・ミネラル成分を含む)を運んでいるのは血管です。血管内の血流が何らかの原因によって悪くなると(血行不良)、筋肉に十分な栄養が供給されないために筋痙攣が起こります。
血行不良の原因としては体の冷え、外気温が低い、長時間の同一姿勢、動脈硬化などがあります。
動脈硬化は加齢によって誰にでも起こるものですが、高血圧や糖尿病、脂質異常症、喫煙習慣があると動脈硬化のスピードが加速し、筋痙攣のリスクが増します。
また、そもそも栄養状態が良くないと(栄養不良)筋肉への栄養供給量も不足してしまうため、筋痙攣の原因となります。
そのため、食が細くなりがちな高齢者、身体疾患がある人などは栄養不良による筋痙攣にとくに注意が必要となります。
腹筋がつった!対処法をしっかりマスターしよう
ここでは腹筋がつってしまったときの対処法を説明します。ふくらはぎなどその他の筋肉がつってしまったときにも効果があります。
えびぞりの姿勢をとる
見出し3で述べたように「つる」とは筋肉が異常に収縮している状態のため、筋肉が「弛緩」する方向に伸ばすと、症状は軽減して消失します。
腹筋(腹直筋)の場合であれば、前に倒す動作時に筋肉が収縮するため、後ろに体幹を倒すと筋肉が弛緩するということです。無理のない範囲で、えびぞりの姿勢を取りましょう。
ただし、脇腹に近い部分がつってしまったときは腹斜筋の筋痙攣の可能性があるため、左右どちらかに体幹を倒す姿勢の方が効果的と言えます。
マッサージやストレッチを行う
筋痙攣が治まった後の痛みや痺れなどの不快症状を緩和するためには、患部のマッサージや全身のストレッチを行いましょう。
マッサージは揉むよりもさするようなイメージで行うと良いでしょう。筋痙攣を予防するためには、こまめにストレッチなどを取り入れるのも方法の一つです。
ミネラルを摂る
ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルは筋肉の収縮に関わっています。
これらのミネラルバランスが崩れると、特に大量に汗をかいてミネラルが失われると筋痙攣が起こりやすくなります。
スポーツドリンク、塩などを補給しましょう。スポーツや炎天下での作業を行う際は、こまめに水だけでなくミネラルを補給することが大切です。
また、筋肉疲労の回復を早めるにはタンパク質やクエン酸を摂取すると良いとされています。
患部を温める
筋痙攣を起こす原因の一つが冷えです。冷えによって血流が悪くなると、筋肉が異常収縮を起こしてしまうことがあります。
そのため、患部をホットタオルや湯たんぽ、カイロなどで温めると血流が改善し、痛みなどの不快症状を緩和することができます。
また、予防策としても冷やさないということを心がけましょう。
何度もつる時は病気が隠れている可能性も疑って
予防策を取っても頻繁に筋肉がつるような場合は、何らかの病気の可能性があります。可能性として考えられる病気を紹介します。
薬による副作用
病気ではありませんが、飲んでいる薬の副作用として筋痙攣が起こるケースは比較的多いものです。
一部の利尿剤や降圧剤は体内の水分やミネラルバランスが乱れて筋痙攣が起こる場合があります。薬を飲む前よりもつりやすくなったと感じる場合は、主治医に相談しましょう。
糖尿病
糖尿病によって血液中の血糖値が高い状態が続くと、神経細胞が障害されて糖尿病性神経障害という合併症を引き起こします。
糖尿病の合併症には他にも腎症(腎臓の機能が低下して、重症化すると人工透析が必要となります)や網膜症(重症化すると失明する可能性があります)などがありますが、神経障害が最も早期に起こる合併症だと言われています。
糖尿病性神経障害を起こすと手足の感覚が鈍くなったり、痺れや痛みが現れます。
既に糖尿病という診断を受けている人は、主治医の指導の下で血糖コントロールをしっかり行うようにしましょう。
定期的な健康診断を受けていない人の中で、「食後の異常な眠気」、「異常に喉が渇く」、「夜間の尿の回数が増える」、「尿が泡立つ・甘い臭いがする」、「(心当たりがないのに)体重が減ってきた」などの項目が該当する場合は、糖尿病の可能性があります。
一度血液検査を受けるようにしましょう。
閉塞性動脈硬化症
閉塞性動脈硬化症とは、動脈硬化によって血管が細くなったり、詰まってしまい、血液の流れが悪くなるために様々な症状が現れます。
「運動をすると痛み・しびれ・冷感が出る」のに、「しばらく休養を取ると痛み・しびれ・冷感が取れる」というのが特徴です。
専門の診療科は循環器科(内科・外科)、心臓血管外科です。
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