右下腹部のチクチクした痛み!原因を女性と男性別に解説!
<監修医師 吉野聖奈>
右下腹部のチクチクとした痛み、片方だけの痛みだと何かの病気かもしれないと不安になりますよね。
また急に強い痛みを感じたり、チクチクと長引くような痛み等、様々な痛みがあります。
右下腹部のチクチクとした痛みの原因は女性と男性では異なる場合が多いです。
原因の中にはすぐに治療が必要となる病気もあります。
そこで今回は気になる右下腹部のチクチクとした痛みの原因を女性と男性別で解説いたします。
右下腹部の痛みの原因(女性)
まず女性の右下腹部の痛みの原因についてご説明します。
女性の場合は子宮や卵巣等の生殖器に関する痛みが多いです。
毎月の月経痛等、日常生活に支障が出る程の痛みを抱えている方もいると思います。
生理痛や月経中の痛み・妊娠時期に現れる痛み・子宮筋腫や子宮内膜症・そして子宮がん・卵巣がん等、女性特有の病気について詳しくご説明します。
生理痛・月経前症候群(PMS)
女性には毎月の月経があり、腹痛・下腹部痛がひどい方や吐き気が強い方、中には生理中は動けない程辛い症状に悩まされる方もいて、症状には個人差があります。
中でも腹痛・下腹部痛の痛みは誰しもが抱える症状です。
生理が始まる時にプロスタグランジンというホルモンが子宮を収縮させます。
その後、子宮内膜がはがれる時の出血を排出する役割を持っています。
そのプロスタフランジンには痛みを発生させる作用もある為、生理痛を引き起こします。
また月経前症候群(PMS)という症状で悩んでいる方も多くいらっしゃいます。
こちらは生理前1~2週間ぐらい前から起こる症状で、ホルモンバランスの乱れによって生理中とほぼ同じ症状が現れます。
月経周期が28日の女性の場合には、排卵が起きるのはちょうど生理が始まる2週間前です。
排卵を境にエストエロゲンとプロゲステロンの2つの女性ホルモンが影響して、月経前症候群(PMS)を引き起こします。
腹痛、下腹部痛、頭痛、胸の痛み、吐き気、イライラ等症状は多く存在します。
そして月経前症候群(PMS)の特徴として、生理前の症状は現れるのに対して、生理中には症状が軽くなったり、無くなったりします。
女性特有の月経は毎月必ずあるものですから、なかなか解決は出来ないものですが、身体を冷やさないようにして上手に付き合っていきましょう。
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妊娠時期
妊娠時期に下腹部痛を感じる場合があります。
妊娠初期・妊娠中期・妊娠後期それぞれの期間に下腹部のチクチクとした痛みやお腹が突っ張るような感覚を感じます。
この症状は赤ちゃんの成長に合わせて子宮が大きくなろうとしている為に起こっているので、特に心配はありません。
問題は流産につながる痛み、胎盤剥離(たいばんはくり)、早産、子宮破裂等による腹痛もあるという事を頭に入れておかなくてはなりません。
安定期に入るまでの妊娠初期では、特に流産に注意が必要です。
下腹部のチクチクとした痛みがズキズキとした痛み、締め付けられるような痛みになったり、痛みが続くような場合にはすぐに婦人科を受診しましょう。
妊娠後期に腹痛と出血が現れる場合には胎盤剥離、強い腹痛と倦怠感やチアノーゼが現れる場合には子宮破裂の可能性があります。
また予定日がまだ先でも、30分に1回にように等間隔な腹痛や、お腹の強い張りがある場合には陣痛を起こしている可能性があります。
いずれの場合にもすぐに病院に行きましょう。
また妊娠中にはホルモンバランスの変化、食生活の変化、疲労やストレスにより便秘を起こしやすくなります。
バランスの良い食生活をして、水分をこまめに摂るようにしましょう。
子宮付属器炎(しきゅうふぞくきえん)
子宮付属器とは卵巣と卵管の事です。
そこに炎症が起きる事を子宮付属器炎といいます。
特に卵管は骨盤内の臓器の中でも炎症を起こしやすく、多くの原因は細菌感染です。
症状としては下腹部痛・腹痛・発熱・吐き気・嘔吐・おりものの異常が現れます。
進行して癒着や閉塞を併発した場合には不妊症や子宮外妊娠の原因となります。
またそのまま放置すると、腹膜炎・敗血症・大腸や膀胱に穴が空いてしまう等危険な状態になりますので、きちんと治療を行うようにしましょう。
子宮筋腫
子宮筋腫は、子宮を囲んでいる子宮筋層に腫瘍が出来る病気です。
30歳以上の4人に1人が発症すると言われる程、とても女性に多い病気です。
症状としては、下腹部痛・腹痛・腰痛・多血月経・月経が長い・貧血・便秘・腹部の圧迫感・頻尿・冷え症・疲れやすい等の症状が現れます。
生理痛ととても似ている症状であり、また個人差もある為なかなか気付きにくい病気です。
筋腫が大きくなると同時に症状が強くなっていく為、分かった時にはかなり大きくなっている事もあります。
定期的に検査を受け、少しでも異常を感じたらすぐに病院に行きましょう。
子宮内膜症
生理で排出されるはずの月経血の一部が卵管を通り、腹腔内に逆流してしまう事があります。
その逆流した血液中には子宮内膜細胞が漂っていて、その細胞が子宮以外の場所で子宮内膜と似た組織を作ってしまいます。
子宮以外の場所にできた子宮内膜も、子宮と同じように出血等を起こします。
でも血液や内膜を排出する事ができない為、体内にそのまま留まってしまいます。
その結果、多臓器への癒着等を引き起こします。
症状としては激しい腹痛、不正出血、血尿等です。
いつもより生理痛がひどいと思ったら、子宮内膜症だったというケースもあります。
子宮内膜症は良性の腫瘍ではありますが、骨盤内臓器に癒着した場合には子どもができにくくなってしまいます。
そして卵巣内まで及ぶと、卵巣がんに変わってしまう事もありますので、きちんと治療をしなければなりません。
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子宮頸がん
子宮頸がんは更年期を迎える頃の中年の女性に多く発症します。
ただ10~20代の若い女性にも起こりますので、注意が必要です。
子宮頸がんの症状としては下腹部痛や不正出血等です。
ただ初期ではあまり自覚症状がありません。
進行するにつれて、不正出血やその他の症状が現れます。
自覚症状が出る頃には進行がんとなってしまっている場合が多く、治療が困難です。
上皮から子宮の筋肉、膣や子宮周辺、骨盤内のリンパ節まで転移してしまいます。
早期発見の為に定期的に検査を受けましょう。
卵巣がん
卵巣がんは更年期を迎える頃の40~50代の女性に多く発症します。
卵巣がんの症状としては、下腹部痛・腹痛・腹部の張り・胃腸障害・頻尿・体重減少等が現れます。
ただ卵巣がんの場合には他の病気と比べて、初期症状が非常に現れにくい病気です。
腫瘍が大きくなってから、他の臓器に転移してから気付く場合も多いのです。
気付いた時にはすでにかなり進行をしてしまっている事がとても多いです。
早期発見の為には定期的な検査が必要になりますので、必ず受けるようにしましょう。
更年期障害
更年期とは閉経の前後の期間の事をいいます。
そして、この更年期の間に起きる身体の変化により起こる様々な症状を総称して更年期障害といいます。
更年期にはホルモンバランスの著しい変化により、全身に様々な症状が現れます。
ほてり・のぼせ・動悸・高血圧・吐き気・嘔吐・食欲不振・下腹部痛・腹痛・月経異常・不正出血・肩こり・腰痛・手足のしびれ・多汗・めまい・肥満・痩せる・むくみ・冷え等たくさんの症状が現れます。
そして更年期には加齢による卵巣機能の低下により、卵巣から分泌される女性ホルモンが減ってしまいます。
それが脳の視床下部にある自律神経中枢に影響を及ぼし、自律神経を乱し、精神的な症状も起こるようになります。
イライラ・不安・うつ・神経質・意欲低下・睡眠障害等があげられます。
更年期障害に対するお薬もありますので、病院を受診しましょう。
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右下腹部のチクチクした痛み 男性・女性両方に起こる病気
急性虫垂炎・慢性虫垂炎
そして右下腹部の痛みが現れる急性虫垂炎。
この病気は女性だけでなく男性もかかる病気です。
盲腸は正式名称ではなく、急性虫垂炎が正式病名です。
虫垂は右下腹部にある盲腸から出ている細い器官の事をいいます。
その虫垂が炎症を起こしている状態を虫垂炎といいます。
虫垂炎にかかりやすい年齢は10~19歳が最も多い年齢層です。
ただ5歳以下の乳幼児や高齢者もかかる事があるので注意が必要です。
乳幼児の場合にはまだ身体の機能が未発達な為、炎症の進行が早く、腹膜炎を起こす可能性があります。
高齢者の場合には痛みに鈍感な場合が多く、状態が悪くなってから病院にかかる事もあり、腹膜炎を起こしてしまう可能性があります。
初期症状として、胃の辺りに不快感を感じる事があります。
そして下腹部中心から右下腹部へとチクチクした痛みが移動していくのが特徴です。
虫垂炎にも3つのタイプがあります。
<カタル性虫垂炎>
急性虫垂炎の中で最も症状が軽く、抗生剤の投与で治療が可能です。
唯一薬剤での治療が可能な虫垂炎です。
状態によって再発の可能性がある場合や、妊婦、乳幼児の場合には手術を勧められる事もあります。
<蜂窩織炎性虫垂炎(ほうかしきえんせいちゅうすいえん)>
虫垂の中に膿が充満している状態で、カタル性虫垂炎より重い状態の虫垂炎です。
治療方法は手術が必要になります。
<壊疽性虫垂炎(えそせいちゅうすいえん)>
急性虫垂炎の中で最もひどい状態の虫垂炎です。
虫垂組織が壊死(えし)してしまい、膿で破裂してしまいそうになっている場合が多いです。
そのままにすると腹膜炎を引き起こす可能性が高いです。
また急性虫垂炎の手術方法は2つの方法があります。
開腹手術と腹腔内視鏡(ふくくうないしきょう)による手術です。
以前は開腹手術が一般的でしたが、今は身体への負担が少ない腹腔内視鏡手術で行う事が多くなりました。
ただし、重症化している場合には開腹手術をしなければなりません。
早期発見・早期治療が大事になります。少しでも異常を感じたら、すぐに病院を受診してください。
虫垂炎はまれに慢性化して慢性虫垂炎である場合もあります。慢性虫垂炎の場合には急激な痛みはなく、時々痛みが現れるのが特徴的です。
それ以外の症状に関しては急性虫垂炎ととても似ています。
慢性虫垂炎の場合にも治療は必要です。医師の指示に従い、治療を受けましょう。
痛み以外の症状としては、食欲不振・吐き気・嘔吐・発熱が現れます。
進行していくと痛みも激しい痛みへと変わっていきます。
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腸閉塞・腸捻転(ちょうねんてん)
下腹部には消化器もあり、痛みの原因は腸閉塞や腸捻転の可能性があります。
これらの病気も女性だけでなく男性にも起こる病気です。
腸閉塞や腸捻転は命に関わる危険な病気ですので、早期発見・早期治療が必要です。
腸閉塞は腸が閉塞した状態をいいます。
腸内が狭くなったり、詰まる事で、消化物が滞ってしまう病気です。
症状として、下腹部痛・腹痛・背中の痛み・腹部の張り・吐き気・嘔吐等があげられます。
症状は突然現れる事が多いです。
腹痛は突然現れ、和らいだと思ったらまた急激に痛みが現れるのが特徴的です。
腸捻転は腸閉塞の一種で、腸がねじれてしまっている状態をいいます。
腸がねじれると腸を通過する消化物が腸内で滞ります。
症状としては下腹部痛・腹痛・背中の痛みです。
非常に強い痛みの場合には非常に危険な状態です。
腸内にガスが溜まり、腸が壊死してしまうのです。
本来、腸内の中のガス、いわゆるおならは排便時に体外へ排出されます。
それが腸がねじれてしまう事でガスや便の排出ができなくなり、腸を壊死させてしまいます。
腸閉塞・腸捻転は命に関わる危険な病気です。
少しでも異常を感じたらすぐに病院に行ってください。
大腸憩室症(だいちょうけいしつしょう)
大腸憩室症は、大腸にある憩室という部分で炎症が起きる病気です。
憩室に便が詰まる事により、炎症を起こしてしまいます。
こちらの病気も女性だけでなく、男性にも起こる病気です。
右下腹部の痛みの場合は、大腸の始めの上行結腸という部分の憩室に炎症が起きています。
痛み以外の症状として発熱や血便の症状も現れます。
食生活の欧米化がこの病気を増加させている可能性が高いですので、バランスの良い食生活を心掛けましょう。
少しでも異常を感じたら、すぐに病院に行ってください。
右下腹部の痛みの原因(男性)
続いて男性の右下腹部の痛みの原因についてご説明いたします。
男性特有の右下腹部の痛みの原因となる病気は前立腺の病気です。詳しくご説明いたします。
前立腺炎
前立腺に炎症が起きている状態を前立腺炎といいます。
主な原因としては細菌感染による炎症です。
20~50代に多く発症しますが、他の前立腺の病気よりも若い年齢層にも発症する病気です。
症状としては頻尿・残尿感・排尿痛・血尿等の排尿障害がまず現れます。
急性の場合の症状として、下腹部の強い痛みや高熱といった症状が現れます。
また慢性的に下腹部痛を感じる場合もあります。
症状がひどくなる前に、少しでも排尿の状態がいつもと違うと思ったら必ず受診しましょう。
前立腺肥大症
前立腺が大きく肥大する病気を前立腺肥大症といいます。
50歳以上の中高年の方に多く、若い方にはほとんど見られない病気です。
まだはっきりとした原因は分かっていませんが、男性ホルモンの働きが関係している事は明らかです。
女性で言うと更年期を迎える中高年の時期に、男性もホルモンバランスが崩れる事が原因で前立腺が肥大してしまいます。
また肥満、高血圧、高血糖、脂質異常症、メタボリックシンドロームとの関係も深いとされています。
前立腺が肥大する事により、尿道が圧迫されます。
症状としてまず排尿障害が現れます。
✅ 尿の勢いがなくなる
✅ 尿を出し始める時に時間がかかる
✅ 尿が出にくい
✅ 尿が細くなったり、分かれて出る
✅ 排尿途中で途切れる 等の排尿症状が現れます。
また
✅ 頻尿
✅ 急な尿意に襲われる
✅ もらしてしまう 等の畜尿症状(ちくにょうしょうじょう)が現れます。
排尿後の症状として
✅ すっきりしない
✅ 残尿感
✅ 尿漏れ 等の症状が現れます。
尿が溜まるとだんだんと強い下腹部痛を感じるようになります。
しっかりとした治療が必要です。
少しでも異常を感じたら、ひどくなる前に病院を受診してください。
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前立腺がん
前立腺にがんが発生した状態を前立腺がんといいます。
前立腺肥大症と症状が似ていますが、全く別の病気です。
前立腺がんは前立腺の外側にある外腺に発症する悪性腫瘍です。
症状としては、尿がでにくい、頻尿、残尿感、夜間頻尿等の排尿障害が現れます。
進行すると排尿痛、尿閉、下腹部痛が起き、骨に転移すると腰痛や下半身の麻痺が現れます。
前立腺肥大症ととても症状が似ていますが、前立腺がんの場合には進行すると多臓器に転移してしまいます。
きちんとした治療を行う必要があります。
定期的に検査を受けましょう。また少しでも異常を感じたら、すぐに病院を受診してください。
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