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自覚症状のない肝硬変は放置すると危険【原因や食事方法を紹介】

<監修医師 豊田早苗>

病院 

体の中でも重要な働きを担っている肝臓は、少しの故障は自力で回復する力を持っています。

このため症状が出現しにくく、肝臓に負担をかけた生活を続けてしまいがちです。しかし気付いた時には回復が困難になっていることがあります。

ここでは、肝臓の働きと病気の発生を見ていきましょう。

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肝臓の役割を知る

 

肝臓は3つの大きな役割を持つ化学工場です。

一つ目は食べたものを肝臓内に貯蔵し、放出する役割です。貯蔵された栄養は普段は使われることはありませんが、非常時にエネルギーに変換し使用されます。

 

二つ目は有害な物質の解毒作用です。薬やアルコール、体内で産生された老廃物を解毒・分解して体外へ排出する働きを持ちます。

 

三つ目は胆汁の分泌です。胆汁自体には消化酵素は含まれませんが、膵臓で作られた消化酵素を助ける働きをします。

また胆汁には老廃物を分解した後に出る廃棄物が含まれており、この胆汁に含まれる廃棄物は、便として排出されています。便が茶色であるのは、このためです。

 

自覚症状の少ない肝臓。その悲鳴を聞き逃さないで

 

肝臓の機能が低下すると、これらの3つの機能が低下してきます。そうすると疲労物質の分解が滞ったり、エネルギー合成の機能低下、酸素や栄養がうまく運べなくなるという理由から体が疲れやすくなります。

 

解毒作用が弱くなると、アルコールの分解がうまくいかず、お酒に弱くなることがあります。また体内にアルコールが残りやすくなるため二日酔いも引き起こしやすくなってしまいます。

 

胆汁の産生量が減ると、栄養の分解がうまくいかなくなります。そうすると、食べたものがいつまでも消化管に残るため、吐き気や下痢、不快感を引き起こします。ひどい時は食欲低下を起こすこともあります。

 

これらの症状は肝臓が疲れてきたサインです。しかし風邪の症状と似ている点もあるため、気付かないまま症状が徐々に進んでいきます。

肝臓が炎症を起こしだすと右肋骨下部に鈍痛や発熱を感じるようになり、親指と小指の付け根が斑状に赤くなってきます。

 

肝機能とその低下についてくわしくはこちらも参考にして下さい。

【関連記事】
肝機能低下で起こる4つの症状【その原因や改善方法を徹底解説!】

 

肝硬変とはどういう病気か

 

何も対策せず肝臓の炎症が進むままにしていると、次の段階である肝硬変という病気になってしまいます。

しかし私たちの体内では炎症を治そうとする働きが必ず起こります。ではなぜ肝臓の炎症は治らなかったのでしょうか。

 

理由は「炎症を治す時間」と「炎症が進む速度」が同じではないからです。

炎症を治す時は、まず始めに木の枝状にコラーゲン繊維を張り巡らしてから、その間を埋めるように修復作業を始めます。しかしその間にも肝臓は働き続けているため、炎症は止まることはありません。

このため細胞の修復に取り掛かる前にコラーゲン繊維ばかりが伸びることになり、結果として張り巡らされた繊維で肝臓が覆われ、固くボコボコした肝硬変になってしまうのです。

 

このため肝硬変は慢性肝炎を患う人に多い病気です。肝硬変がさらにすすんでしまうと肝臓がんを起こすリスクが高くなります。

 

肝硬変になると固い細胞に圧迫されて門脈と呼ばれる血管にかかる圧力が増大します。そうすると血管内の血液が流れにくくなり、静脈瘤などの合併症を引き起こします。

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肝硬変の原因はコレだ!

 

ウィルス感染症

ウィルス感染症の中には、肝臓の炎症を起こすものがあります。それが肝炎ウィルスです。肝炎ウィルスにはA型からE型まであり、それぞれ感染経路が異なっています。

A型とE型は食べ物を介して感染するため、生水や調理が不十分な食べ物は口にしないようにしましょう。B型、C型、D型では血液体液を媒介して感染します。

肝炎についてはこちらも参考にして下さい。

【関連記事】
b型肝炎は完治するの? 【新薬の効果や注意点を徹底解説!】

 

お酒とおつまみ

肝硬変の原因として特に多いのがアルコールです。アルコールは肝臓によって解毒されますが、解毒能力を越える摂取を続けると、肝臓の炎症が進みます。

お酒の席で好まれるおつまみには、塩分過多、たんぱく質と脂質が多めといったものが多いため、これらも肝臓を疲れさせる要因になっています。

 

病気によるもの

一部の病気には、肝臓の炎症を伴うものがあります。

自己の免疫で肝臓を攻撃してしまう自己免疫性、胆汁の排泄がうまくいかなくなり炎症が起きてしまう胆汁うっ滞性、何らかの原因で血液が固まりやすくなり肝臓内の血管が詰まってしまう血管病変性の3つです。

 

肥満と生活習慣病

近年増加傾向にあるのが肥満と生活習慣による肝硬変です。特に多いのが脂肪肝から肝炎を起こす事例です。

高カロリー食品や高脂肪・高たんぱく食品を摂取した後、燃焼不十分のまま次の食事をしてしまうため、肝臓に負担をかけることが原因と考えられています。

メタボリックシンドロームの診断を受けている人は肝臓の機能にも気を遣うようにしなくてはいけません。

脂肪肝についてくわしくはこちらを見て参考にして下さい。

【関連記事】
脂肪肝の6つの症状!【意外な原因に驚愕!】

 

加齢によるもの

年齢を重ねると、肝臓の機能は少しずつ落ちてきます。

しかしそれにもかかわらず若い頃と同じような生活を続けると、肝臓に負担をかけることになってしまいます。

また高齢者には他の合併症を患っている人も少なくありません。糖尿病心臓病といった病気によるものや、薬の飲みすぎが原因となることもあります。

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肝硬変の7つの症状

 

肝臓は症状がわかりにくく、出にくい臓器であることから沈黙の臓器と呼ばれています。ここでは初期から末期まで症状を解説していきます。

 

初期は風邪のような症状

肝臓機能が低下してくると、風邪のような症状が出現します。

体のだるさ、食欲の減退、便秘や下痢をたびたび起こす、といった症状です。なかには足がつりやすくなる「こむら返り」を訴える人もいます。アルコールに弱くなるといった症状も初期から出現します。

 

またメカニズムは詳しくわかっていませんが、微熱が続く人もいるようです。これは肝臓の炎症から発熱を起こしているのではないかと言われています。

 

色素沈着、血管が浮き出てくる

肝臓の機能が低下すると、肌のターンオーバーが低下してしまいシミ・くすみといった色素沈着が起こりやすくなります。全体の色合いも黒や土気色に近くなってしまうため、顔色が悪い印象を与えてしまいます。

 

また肝臓は女性ホルモンを分解する作用を持つため、この機能が低下して女性ホルモンの作用が必要以上に出てしまうことがあります。

それが血管を拡張させてしまい、手や胸、お腹の血管を大きく浮き上がらせることがあるのです。男性においては、乳房が発達する、睾丸が委縮するといった症状が出る人もいます。

 

便が白くなる

これは胆汁の分泌に障害がある場合ですが、便に消化液が混じらないまま排泄されるため白くなってしまうことがあります。また脂肪分を摂取しても分解できないため、脂肪と便が一緒に排泄される時などに見られるようです。

 

便の色から見る健康状態についてはこちらを参考にして下さい。

【関連記事】
便の色が薄い意外な原因!【分かりやすい色別全集】

 

強いむくみと随伴症状

肝臓には血液中の水分を一定に保つ働きがあります。この機能が低下すると血液中の水分が血管外に漏れやすくなってしまいます。このため全身にむくみを起こしやすくなってしまうのです。

この漏れ出た水分がお腹にたまる事を腹水と呼びます。腹水がたまると内臓が圧迫され食欲減退や息切れ、便秘などの症状が起きるようになります。

 

易出血

肝臓は血液凝固に大きく関係しています。肝臓が弱ってくると、出血しやすく、血が止まりにくい状態になっていきます。

歯茎や鼻、消化管といった粘膜部位は特に出血しやすい部位です。症状が悪化すると全身の血管が出血しやすくなります。

 

肝硬変になると、門脈と呼ばれる太い血管への圧力が増大し、食道の血管が大きくコブのように盛り上がる事があります。これは食道静脈瘤と呼ばれるコブです。

この食道静脈瘤が食べ物などで傷つくと、大出血を起こし大量の吐血と下血をすることがあります。

 

黄疸と痒み

赤血球は古くなってくると肝臓で分解されます。分解の過程で出る廃棄物は黄色い色をしており、通常ならば便として排出されます。

しかしこれがうまく排出されなくなるため、血液中に漏れだし皮膚が黄色くなってきます。これは黄疸と呼ばれ、皮膚の痒みを伴います。

 

肝性脳症

肝硬変が進むと、血液中の毒素を十分量に分解することができなくなります。こうなると毒素が脳にまで達し、意識障害や不明言動、異常行動を起こすようになります。

またうまく体が動かせなくなる運動失調症が出現することもあります。

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もし肝硬変になってしまったら

 

内科的治療

肝硬変の診断を受けたら、入院し薬物治療をはじめます。

 

肝硬変を起こした原因にもよりますが、まずは安静の保持、肝炎の原因治療、肝臓の保護、栄養補充が最優先課題になります。ウィルスによる肝炎の場合には、抗ウィルス剤をつかった薬物治療も使われます。

肝臓機能の低下で全身のむくみを起こしている場合は、むくみから危険な合併症を起こすことがあります。むくみに対してアルブミン製剤と利尿剤を併用していきます。

 

外科的治療

肝硬変に対する外科的治療は食道静脈瘤や肝がんに対する治療になります。

食道静脈瘤はそのままにしておくと破裂し大出血を起こしてしまう危険な病気です。これを内視鏡下で破裂しないようコーティングしたり取り除いたりします。

 

肝硬変が悪化すると肝がんが発生することがあります。これを外科的治療で除去するのですが、症状と状態に合わせて開腹手術か内視鏡焼灼術のどちらかを選択していきます。

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日頃の生活から予防を意識しよう

 

肝硬変を予防するためには、肝臓の炎症を放置しないことが大切です。肝臓が疲れているサインを出している時は、肝臓を休ませてあげましょう。

 

食事は適正カロリーをバランスよく摂取し塩分は控えめにしましょう。過剰なたんぱく質や脂質は肝臓にとても負担を与えます。野菜を多めにとりたんぱく質は適切な量をとるようにしましょう。

 

肥満や運動不足では肝臓に脂肪がたまりやすくなってしまいます。脂肪肝では肝硬変のリスクが高まるため、体重管理を心がけ有酸素運動をするようにしましょう。

 

脂肪肝の治療方法についてくわしくはこちらを見て参考にして下さい。

【関連記事】
脂肪肝の3つの治療方法【食事での改善はコレが重要!】

 

アルコールは適度な量を守るようにし、休肝日を設けるようにしましょう。特に日本人はアルコールに弱い体質のため、毎日飲み続けることは肝硬変のリスクを高めることになってしまいます。

 

ストレスも肝臓に良いとは言えません。規則正しい生活を心がけ、良質な睡眠をとるようにしましょう。

 

また、定期健診などで肝臓の数値をチェックしましょう。生活習慣病を放置すると肝炎のリスクが高くなるため、早めの受診を心がけ、早期診断・早期治療を開始しましょう。

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