自閉症の遺伝確率は高い?【特徴や傾向を丁寧に解説】
<監修医師 WASHIO>
自閉症は社会的な集団や組織、また対人関係においても困難やつまづきが生じたり、こだわりが強くなるなどの神経発達症の一つです。
親戚や家族など身近に自閉症の人がいる場合には、結婚や出産を考える場面において、自閉症が遺伝するのでは?と気になる人が多いのも事実です。
自閉症の遺伝確率は高いのでしょうか?さらに特徴や傾向についても解説していきます。
気になる所から確認してみよう
自閉症が遺伝する確率は高い?
自閉症の遺伝確率
自閉症の発症には遺伝的なものが大きく関わっていることを裏付ける例として、
遺伝子が全く同じである一卵性双生児で、自閉症が同時に発症する率は50~85%であるとの報告があります。
遺伝子が違う二卵性双生児で同時に発症する率の約20%より明らかに多いことから、自閉症には遺伝の要因が大きいことが分かります。
父親、もしくは母親が自閉症、またはその兄弟やいとこなどの親戚の中で自閉症の人がいる場合、遺伝で受け継ぐ可能性は高くなるのは事実です。
また生まれてくる子どものうち兄が自閉症なら弟も自閉症になる可能性が、そうではない場合の2倍の確率があるという報告もあります。
しかし確率が高くなるというだけで、100%遺伝するとは限らないのが生命の神秘なところです。
父親の年齢
最近のアメリカでの研究では、父親の年齢が40才以上の場合、生まれてきた子どもが自閉症などの症例のあるケースが、39才以下に比べて1.5倍であるとの報告がされています。
また30才未満の場合と比べると約6倍にもなると言われています。
ただ、高齢で父親になるという遺伝子上の特性が関連しているのか、単なる加齢によるものなのかはまだ分かっていません。
母親の年齢による自閉症発生の影響は報告されていません。
遺伝原因の解明
現在では、自閉症と関連がある可能性を持つ100以上の遺伝子が報告されています。
関わりがあるとされている遺伝子が複数において交差している場合もあり、
その他の遺伝子以外の要素も多様に関連するため、自閉症がスペクトラムを呈している(自閉度と知能指数をもとに分類されている)と言われるのです。
数ある疾患の中でも脆弱X症候群(ぜいじゃくエックスしょうこうぐん)は、
知的障害や自閉症の様な症状などの精神発達障害症状を伴うために、自閉症の発症の原因であるという説もあります。
この疾患は遺伝性で、人間の性染色体のうちX染色体の異常により起こることが確認されています。
自閉症の遺伝子検査について
自閉症発症に関わりがあるとされている遺伝子は数多くあるので、一つ一つの遺伝子を解析して影響を調べるのは困難を極めています。
自閉症に関する遺伝子診断などにも詳しい分子生物学者は、
「利益を上げるために、ほとんど有用性がないにもかかわらず自閉症の遺伝子診断を商品化している企業が出ている」と警鐘を鳴らしています。
自閉症の遺伝子治療について
現在のところ遺伝子に対しての直接的な治療法はなく、本人やその家族に適した療育や指導を行いながら、できるだけより良い生活を送ることができるようにサポートすることが重要視されています。
自閉症スペクトラムに含まれる場合と、そうでない場合があるレット症候群については、遺伝学的原因検索や遺伝カウンセリングを行っている病院もあります。
ただその特定の遺伝子があると確定診断されても、治療法や進行を食い止める方法さえもないために、対症療法を行うにとどまっています。
自閉症の特徴や傾向
自閉症は5つのグループに分けられる広汎性(こうはんせい)発達障害の一つである、自閉症スペクトラムの中に分類されています。
自閉症スペクトラムには特定不能の広汎性発達障害、アスペルガー症候群も含まれます。
そのうちの従来型自閉症を一般的な呼び名の自閉症と言うことが多いです。
自閉という言葉から連想される意味や感覚から、内気で自分の殻に閉じこもるような精神状態や、うつ病などのイメージを抱きがちですが、全く誤った認識です。
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自閉症の特徴
<自閉症の赤ちゃんの特徴>
お乳をあげている時に目線が合わなかったり、エビ反りになるほど抱っこを嫌がるなどがあります。
またフラッピングと呼ばれる、手を目の前にかざしたり、ひらひらさせる動作を長い時間行う赤ちゃんもいます。
<自閉症の子供の特徴>
3才を過ぎても会話の時に目線が合わなかったり、言葉の発達の遅れからクレーン現象と呼ばれる、
大人の手をクレーンのように操り物を取らせる動作が見られたり、物を積み重ねる・並べ替えるなどの行動を繰り返し行うこだわりが現れてきます。
その場でくるくる回り続ける、また回るものを見続けるなどの反復的なものへの熱中も見られます。子どもによっては一般的と言われている特徴が出ない場合もあります。
<自閉症の成人(大人)の特徴>
子どもと同様に自閉度合いや人によって多彩です。
主な特徴としては、職場や組織などで仕事上のトラブルが生じたり、対人関係においても上手くいかないことが多く、本人も周囲の人も困難を感じることが多々あります。
自閉症の人の容姿や顔つきには取り立てて特徴はありません。
ただ周りの皆が笑っている中で1人だけ表情が変わらなかったり、目の前で起こっている事の意味が理解できずに無表情であったりするために、顔つきが違うと言われてしまうことがあるようです。
自閉症の傾向
職場などでは自身も顔の表情や身振り手振りなどが使えず、また相手のも読み取ることができないために、いわゆる空気が読めない状況になりがちです。
また上司や同僚の指示が曖昧な場合には理解ができず、自分勝手な解釈をしてミスを起こすことになります。
さらに全体的なスケジュール管理が苦手で、細部にこだわってしまい、期限を守ることができず遅れてしまうこともあります。
人間関係では相手の言葉をそのまま受け取ってしまうことで騙されたり、皮肉や冗談が通じないために、良好な人間関係を築くことが難しくなります。
また自分の興味のあることだけを延々と話し続ける独特な話し方をしたり、相手の立場になって考えることが苦手なことから失礼な発言をしてしまうことなどもあります。
これらのような仕事上の失敗や人間関係を築けないことによる人間不信などで、パニックを起こしたリ、また二次障害としてうつ病や適応障害を引き起こす場合もあります。
これらのことから、自閉症独特の傾向があるとしても、本人が苦手だと思う部分をあらかじめ用意した工夫で補ったり、または回避する決定をすることも必要です。
自閉症の特徴の一つであるこだわりや、特定のものに夢中になることなどを生かして、職業選択をしていくことも重要になってくるでしょう。
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まとめ
子どもの頃に自閉症と診断されると、そのまま症状を持ち続けながらも、療育などで少しずつ社会性を身に付けていき、特徴を自分のものと受け止めて生活していくことができます。
健常者と言われていても、完璧な人間などひとりもいません。
遺伝確率を心配して子どもをもつことを諦めるのも、また遺伝を覚悟で出産することのどちらも、その人にしかできない重要な決断です。
人間に生まれて、子どもを産み育てて親になる経験は、一生のうちのほんの短い期間でしかできません。親にならなければ分かり得ないことはたくさんあります。
家族や周りの人とよくよく相談しながら、自分の中で納得のいく結論を出していくことが大事です。
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