蜂窩織炎の原因や症状とは【治療法まで完全解説!】
<監修医師 まっちゃん>
痛みや腫れ・高熱に見舞われるという「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」をご存知ですか?
感染症で身体中のどこにでも起こる蜂窩織炎は30種類を超えると言われます。重症化すると緊急入院を余儀なくされ死の危険もあり、その進行の速度も驚くほど速いものです。
いつ、誰に襲いかかるかわからない蜂窩織炎の原因から治療法までを詳しく解説します。
気になる所から確認してみよう
蜂窩織炎とは
「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」は「蜂巣織炎(ほうそうしきえん)やフレグモーネとも呼ばれる化膿性炎症です。
傷口や毛穴から侵入した細菌によって皮膚の皮下脂肪組織にかけて、組織が炎症を起こすものです。
炎症を起こしている患部からの浸出物(膿)の中に好中球(白血球の一部)が多量に含まれていて、真皮や皮下組織などにびまん性(その部位に限局しない)に広がって細胞自体を壊死させるものです。
蜂窩織炎が関節の周囲に生じた場合には「感染性関節炎」と「化膿性関節炎」との見極めが難しいと言われています。
「蜂窩織炎」という名前は、患部組織を顕微鏡下で観察すると蜂の巣のように見えるということに由来しています。
風邪に似た蜂窩織炎の症状
皮膚炎のような赤みが初めに現れる蜂窩織炎には、一体どのような症状があるのでしょうか。
皮膚症状
虫刺されや小さな傷のようなものが始まりです。赤みが徐々に広がりあっという間に腫れあがり痛みを伴います。皮膚は熱を持って水疱やボコボコとしたあばたのようなものができることもあります。
皮膚症状が出てから医療機関を受診するまでに応急処置と称して薬を塗ったりはしないほうが良いそうです。
また熱を持ってパンパンに腫れ上がっている時には皮下に膿が溜まっているかもしれません。医療機関で切開してもらわないと破裂してしまう危険があります。
風邪と勘違いしやすい症状
38度以上の高熱と寒気、震えや倦怠感に加えて関節痛や筋肉痛・頭痛・吐き気も加わります。
ちょっと疲れからのひどい風邪なのかな?と思っていたら重症化することがあるので注意して観察しなければなりません。子どもの場合には特に注意しましょう。
風邪による関節痛についてはこちらを参考にして下さい。
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急激に現れる重篤な症状
心臓がドキドキするという心拍上昇やめまいのような低血圧が起こります。熱が40度を超えることもあり、そうなると錯乱や意識喪失が発生することもあります。
このような場合には迷わず救急車を要請して直ちに救急診療のできる医療機関を受診しなければなりません。
蜂窩織炎は感染した場所で呼び名が変わる
身体中のどこにでも毛穴はありますし傷口もできます。蜂窩織炎が身体中のどこからでも感染することが可能であるというのはこれが理由なのです。
手指・足指の先端
四肢での発症が多い蜂窩織炎ですが、手足の指先に発症した場合には「ひょう疽(そ)」と呼ばれます。
足先であれば「趾ひょう疽」、手指は「手指ひょう疽」・爪ならば「爪下潰瘍」や「爪床炎」など細かな呼び名があります。
眼の周囲・顔面
眼の周囲に発生すると「眼窩蜂窩織炎」とされます。その他の顔面では「顔面蜂巣炎」や「下顎部蜂巣炎」などもあります。
口腔内
口の中に発症すると「口底蜂窩織炎」と呼ばれます。
すべての肌表皮
肌表皮に発生した場合に限り「伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)」と呼ばれます。小児に発生する「とびひ」と言われるとわかりやすいですね。
蜂窩織炎は真皮から皮下脂肪の「皮下組織」に感染するもので、伝染性膿痂疹(とびひ)は肌表皮のみに限定されます。
とびひについてくわしくはこちらを見て参考にして下さい。
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とびひの治療期間はどれ位?この方法ですぐに治る!
なぜ蜂窩織炎にかかったのか?7つの原因を探る
放置すると死にも至るという蜂窩織炎は耳慣れないものですが案外身近な病気です。どのような原因で罹患するのでしょうか。
原因となる菌はこれだ!
蜂窩織炎の原因となる「菌」は
✅ 黄色ブドウ球菌
✅ レンサ球菌
✅ 溶連菌
これらの嫌気性菌が皮下組織などに侵入することで発症します。
刺された!噛まれた!傷口から
虫さされや咬傷(噛まれてできる傷)・擦り傷などの傷口から細菌が侵入します。
体力が低下していると毛穴から
高齢者や病気などで免疫力が低下していると、水溜りなどの汚れた水によって感染することもあります。毛穴や汗腺が侵入経路です。
皮膚のバリア機能が低下していても
アトピー性皮膚炎や湿疹ができている、あるいは水虫持ちなどは皮膚のバリア機能が低下しています。
バリア機能が低下していたり皮膚炎があったりすると細菌が侵入しやすくなります。水虫のある人は特に足指の間の皮膚が弱い場合が多いので、そこから感染しやすくなります。
リンパ浮腫やむくみ
リンパ浮腫は女性のがん切除手術後に発生するものですが、意外にも蜂窩織炎の原因となっています。
リンパ浮腫に限らず妊婦さんなどむくみがちな人は性別や病歴を問わず要注意です。リンパの流れが悪いと細菌に抵抗する力が弱くなっているからです。
糖尿病
糖尿病は体の免疫力が低下するとともに毛細血管が弱くなっています。
コントロールがうまくいかない場合や痛みの感覚が鈍化している場合には細菌に感染しやすく、歩行困難になってから症状に気づくということもあるようです。
脂肪吸引や皮下注射
皮下注射でも傷口から感染する場合があるので注意が必要です。
脂肪吸引の手術を受けてその後蜂窩織炎を発症したという例もあるようです。
皮下注射についてはこちらを参考にして下さい。
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蜂窩織炎の重症化は命に関わる危険性がある
「これはいけない!」と思って病院をすぐに受診して診断が降れば幸いですが、蜂窩織炎に対する知識がない場合には放置する期間が長くなります。
応急処置などと素人考えで治療までに時間がかかるほど悪化・重症化してしまいます。死亡率は約30%ほどにも昇ると言われる危険なものなのです。
感染して時間が経過するほどに患部皮膚の血管が詰まります。そうなると組織が栄養不良に陥り壊死します。
壊死してしまうと神経も働かないため無痛で感覚がなくなります。
壊死が筋肉に沿うように広がると「壊死性筋膜炎」という外科手術で切除しなくてはならないような事態に陥ります。まずは患部に溜まった膿を取り出すということが先決です。
蜂窩織炎は重症化すると合併症を引き起こします。代表的なものには敗血症・菌血症など血液にまつわるものや髄膜炎・筋膜炎など神経や筋肉にも及びます。
リンパ管炎・リンパ節炎、眼窩蜂窩織炎では頭蓋内続発症というものまであります。
蜂窩織炎をしっかり治療しよう
蜂窩織炎の診断は専門医の所見によるものです。血液検査をして炎症反応があり白血球数が上昇していれば抗生物質の点滴や経口投与を行います。
軽傷ならば自宅で運動や入浴を禁止して安静にし、睡眠を多くとっての通院治療となります。過度のストレスを避けること、禁酒を言い渡されることもあるようです。
発熱やその他の既往症により重症化の恐れがある場合には入院加療となります。
リンパ浮腫などでは浮腫抑制のための弾性ストッキングを着用することもあり、治療期間はおおよそ半月程度かかるようです。
皮下組織での化膿が進んでいれば外科手術をすることになります。膿を押し出す際には圧力をかけるため痛みはしますが、膿が出てしまえば身体的にとても楽になります。
この時に取り出した膿で最近の培養検査をして、対応する薬剤を決定することもあります。
蜂窩織炎は完治したと思っていても再発することがあります。完全に治療を終え、免疫力向上を図らないとまた同じ箇所から発症するのです。
糖尿病やリンパ浮腫などの既往症や水虫の人などは足指の間の皮膚が弱っていたりしますし、白血球の働きを抑制する副腎皮質ステロイドの投与中などでも免疫力が落ちやすく再発もしやすいのです。
白血球のはたらきについてはこちらを参考にして下さい。
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