血清アミラーゼの基準値とは【高い場合と低い場合の原因はコレ】
<監修医師 まっちゃん>
我々の体では食べ物を摂取すると、食べ物は胃に入り、その後腸へ入り込み様々な栄養素が体内へ吸収されてゆきます。
胃に入った食べ物は胃液によって消化され、小さくなります、また小さくなった食べ物は腸で分解されてゆきます。
この一連の食べ物の分解に大事な働きをするのが消化酵素です。消化酵素は胃液に含まれる胃酸が代表的ですが、この他にも消化酵素が分泌される臓器やその分解する栄養素によって様々な種類があります。
今回はそんな消化酵素の一つであるアミラーゼについてどのような働きをするのか、またこの酵素に関わる検査値と病気について解説します。
気になる所から確認してみよう
血清アミラーゼとは
アミラーゼはジアスターゼとも呼ばれます。アミラーゼは膵液や唾液に含まれている消化酵素です。
膵液は小腸で食物の消化酵素として働きます。唾液は口腔内で消化酵素として働きます。微生物の産生するアミラーゼは胃腸薬や洗剤などに利用されています。
アミラーゼは膵臓や唾液腺(耳下腺)から分泌されます。膵臓由来のアミラーゼをP型アミラーゼ、唾液由来のアミラーゼはS型アミラーゼです。
これら血液中のアミラーゼの割合は膵臓由来が40%、唾液腺由来のものが60%を占めています。アミラーゼは主に食物のデンプンを分解することで糖分であるブドウ糖やオリゴ糖を作り出します。
アミラーゼは通常は血液中に含まれる量はわずかなものです。血中のアミラーゼは1/3が腎臓で尿となり体外へ排出されます。残りは肝臓などで処理されます。
これら血中や尿中に含まれるアミラーゼの量を血液検査や尿検査で検査することは膵臓や腎臓や膵液線の病気を調べるのに重要です。
血清アミラーゼ検査が必要な3つのケース
腹痛を伴う場合は膵臓の病気かも
上腹部の激しい痛みがある時、疑われる病気は膵臓の病気です。
血清アミラーゼ検査により膵臓の病気かどうか確かめることができます。膵臓の病気には急性膵炎、慢性膵炎があります。
長引く風邪に注意、肺がんの可能性も
風邪がなかなか治らない場合は肺がんの可能性も出てきます、ただ本当に風邪が長引いているだけであったり、気管支炎など他の病気の可能性もあります。
このような症状があり血清アミラーゼを検査することで肺がんが疑わしいかどうか調べ、レントゲンで肺の画像を見る等により肺がんかどうか調べることができます。
乾いた咳やネバネバした痰が長い期間続くかがポイントです。
便に血がついている場合は大腸がんの可能性も
便に血が混じっている場合、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、痔などがありますが、大腸がんである可能性もあります。
こちらも症状と合わせて血清アミラーゼを調べることで大腸がんの可能性がないか調べることができます。
大腸ガンの場合は血清アミラーゼだけでなく、他の血中の特異的マーカーと呼ばれる大腸ガンがある場合に高値を示す検査値や内視鏡検査で直接確認することもあります。
血清アミラーゼの基準値を知ろう
血中アミラーゼの基準値
血中アミラーゼの基準範囲は40~132です。
39以下で低値、133以上で高値となります。
尿中アミラーゼの基準値
尿中アミラーゼの基準値は110~1100です。
血清アミラーゼが基準値より高い場合
アミラーゼは血中にほとんど存在しない為、高値である場合は膵臓や耳下腺が何らかの障害をうけて壊れてアミラーゼが漏れ出ている可能性があります。
アミラーゼが高い場合に疑われる病気で多いのが膵臓疾患です。
急性膵炎は上腹部の痛みをはじめ、悪心・嘔吐、発熱が起こる病気です。急性膵炎ではアミラーゼ値が発症後の48時間で高値となります。急性膵炎ではアミラーゼの他にリパーゼと呼ばれる消化酵素も高値を示します。
血液中の白血球も膵炎などの炎症において大事な検査値です。急性膵炎では白血球は高値を示し、特に細菌感染やウィルス感染症などの感染症で高くなりやすいです。
白血球の正常範囲は3500~9800(個/μl)です。重症の場合は膵臓壊死や他の臓器に影響を及ぼす多臓器不全にまで至ることもあります。
急性膵炎は活性化されたアミラーゼ等の消化酵素によって膵臓そのものを損傷することで炎症が起こります。急性膵炎の約80%がアルコール依存症と付近の胆道に出来る胆石が原因です。
残り20%がウィルスや薬の副作用によるものです。
急性膵炎は3~15%の確率で持続的に炎症が起こり続ける慢性膵炎に移行します。
慢性膵炎のになってしまうと、アミラーゼやリパーゼなどの膵臓から出される酵素の値は安定してきますので、診断が遅れる場合も多く、注意が必要です。
膵炎の治療は集中治療室で行われます。急性膵炎の治療方法としては数日~数週間の絶食と大量の輸液による治療、胆石が原因である場合は胆石を取り除く手術が行われます。
感染症が原因であるならば血液検査により、原因となる細菌やウィルスを特定して、それに対する抗生剤や抗ウィルス薬が使われます。
また痛みを取り除く為に痛み止めの注射などが打たれます。
小児でも急性膵炎は起こります。原因は「おたふく風邪」とも呼ばれる流行性耳下腺炎やマイコプラズマ肺炎などの感染症が主な原因です。
アミラーゼの分泌されない肺がんや卵巣がん、大腸がんでもアミラーゼが分泌されることがまれにあります。
このようなガン(腫瘍)のことをアミラーゼ産生腫瘍と呼びます。大変稀な腫瘍なので、発見が遅れる場合も多くあります。
血清アミラーゼが基準値より低い場合
アミラーゼは低ければ低いほど良いというわけではありません。基準値より低い場合でも病気の可能性があるのです。
上記でも述べましたが、急性膵炎ではアミラーゼが高いのですが、慢性膵炎の場合ではなる場合があります。
急性膵炎ではアミラーゼが高いのですが、慢性膵炎の場合では低くなる場合があります。
慢性膵炎では膵臓が硬化してしまい、アミラーゼが血中に漏れ出なく為、アミラーゼ値が低くなりやすいのです。
慢性膵炎の場合、糖尿病を合併する事があります。膵炎ではインスリンが分泌されます。インスリンは血糖値を下げるホルモンです。
慢性膵炎ではこのインスリンが分泌されなくなる為、糖尿病となってしまうのです。
膵臓負担を軽減して血清アミラーゼを正常値に戻そう
急性膵炎や慢性膵炎にならない為には膵炎への負担を軽減しアミラーゼを分泌させないようにすることが大事です。
膵炎の原因で特に多いのがアルコールの摂りすぎです。飲酒のし過ぎは肝臓に悪いと言われますが、同時に膵臓にも負担をかけているのです。
アミラーゼが高い傾向にある人は休肝日を設ける、過度に高い人は禁酒が必要です。
食べ物にも注意する必要があります。カロリーの高い脂身の多い肉や揚げ物にばかり食事が偏ってしまうとそれを消化しようとアミラーゼが過度に分泌されてしまいます。
またドロドロしたコレステロールによって胆道で胆石が出来やすくなるからです。野菜や魚をしっかり取るなど栄養療法や栄養士による栄養指導やダイエットが必要となってきます。
アミラーゼの働きと検査値に関わる病気について解説しました。血清アミラーゼ値は特に膵臓の病気を知るための大事な指標です。
検査などでアミラーゼが高い場合はまず生活習慣を見直してゆくことが大事です。膵炎によるお腹の激痛は相当なものです。急性膵炎にかかると入院中絶食を続ける辛い日々を送らなければなりません。
また急性膵炎が慢性膵炎に移行することで、糖尿病を合併し、失明や透析など日常生活に支障がでる場合もあります。
きちんとした生活習慣を送って膵臓を守り、アミラーゼ値を基準値内に留めておけるように心がけてゆきましょう。
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