のどちんこが痛い!風邪以外の原因とは【場合によっては手術が必要】
<監修医師 まっちゃん>
風邪を引くと真っ先に痛み出す場所が「のどちんこ」という人は、意外に少なくありません。のどちんこが腫れると何かを飲み込む度に激痛が走り、とても憂鬱になりますよね。
のどちんこは体に備わっている器官の中でも特に小さくて役割がわかりにくい場所でもあります。
今回はそんな「のどちんこ」の役割と痛む時の対処法、治療法について見ていきます。
気になる所から確認してみよう
意外に大事!のどちんこの4つの役割
まずはのどちんこの役割について見ていきましょう。
のどちんこは別名「口蓋垂」「喉彦(のどひこ)」「上舌(うわじた)」など呼ばれています。医学用語では「口蓋垂」が一般的です。このため「のどちんこ」に炎症が起きる事を「口蓋垂炎」と呼びます。
口蓋垂は胎児の内に、お母さんお腹の中で成長する過程で作られていきます。赤ちゃんの口の中で左右の組織が徐々に形成されていく途中に、喉の上方で一つに繋がっていきます。
この時に一つにまとまらなかった場合にはのどちんこが2つ、3つとなる事があるようです。しかし特に異常というわけではないため心配はいりません。
哺乳類の中でものどちんこを持つのは人間だけです。その役割は「話す」「飲み込む」「呼吸」「唾液の分泌」に関係していると考えられています。
話す
のどちんこには筋肉が通っています。この筋肉のおかげで、のどちんこは小さく細かく震えたり、前後に大きく動いたりして私達の発音を助ける働きがあるのです。
試しに「ジャ」や「ギャ」を発音してみると、喉の奥の筋肉が震えたような感覚があると思います。
また、「パ」や「カ」のように息を大きく吐くようにして発音する言葉では、鼻から空気が抜けないよう、のどちんこが鼻腔への道を塞ぐように動いているのです。
飲み込む
のどちんこは食事の時にも嚥下の補助的な役割を持っています。
口の中で咀嚼され、流動物となった食物は喉を通って胃に流れていきます。
しかし喉には消化管への道だけでなく鼻腔への道もあるため、のどちんこは鼻腔を塞ぐようにして動き、食物の流れが食道にスムーズに流れるのを助けているのです。
呼吸
口から大きく息を吐いてみると、鼻から息が漏れない事に気づきます。
これはのどちんこが鼻腔への道を塞ぐように動くことで、空気が鼻から漏れる事を防いでいるからです。
唾液の分泌
のどちんこの内部には、サラサラの唾液を分泌する腺があります。この唾液腺は比較的素早く唾液を分泌するため、食物の嚥下を補助する作用があります。
のどちんこが見えない人は要注意
口を開けた時に、のどちんこが見えない人は注意が必要です。
のどちんこが見えない人の原因には
✅ 口が小さい
✅ 舌が大きい
✅ 下あごが引っ込んでいる
などが考えられますが、この中でも特に気を付けたいのが「下あごが引っ込んでいる」人です。
通常、視線を真っ直ぐにして立つと、額と顎はほぼ平行な位置関係にあります。
しかし極端に姿勢が悪かったり、何らかの原因で背骨に異常があったりすると、額が前に出て顎が引っ込んでいる状態になります。
試しに猫背になってみると、額が前に出て顎が後ろに後退する事がわかると思います。
この状態が続くことで頸椎に歪みが生じ、首や背骨を取り巻く筋肉に過度な緊張が続きます。筋肉の緊張は血管や神経を圧迫し腰痛や肩こり、頭痛の原因になると考えられています。
慢性的な頭痛や腰痛、肩こりに悩んでいる人の中には、姿勢や頸椎の歪みから、のどちんこが見えないという人もいるようです。
のどちんこが痛むのは風邪のせい?
風邪を引いた時に、のどちんこにひどい痛みを感じる時がありませんか。
実は、これはのどちんこ自体の炎症ではなく、すぐ両脇にある扁桃腺の腫れが原因となる場合が多いようです。
見分け方は、鏡で見て、のどちんこ自体が赤く腫れているか、扁桃腺が赤く腫れているかによって簡単に確認することができます。
では扁桃腺は一体どこにあるのでしょうか。
扁桃腺はのどちんこのすぐ両脇にある、アーモンド大のリンパ管になります。大きさがアーモンド程なので、アーモンドの和名である「扁桃」が名前につけられました。
扁桃腺は口と鼻の免疫機構を担っており、これらの場所から侵入してきた異物にすぐさま反応できるような構造になっています。
しかし疲労やストレス状態になり免疫力が低下すると、細菌やウィルスが入り込んで炎症を起こし、赤く腫れてしまうことがあります。これが扁桃腺炎と呼ばれる病態になります。
扁桃腺炎の症状としては
✅ 扁桃腺が赤く腫れる
✅ 発熱
✅ 飲み込む時に強い痛み
✅ 倦怠感や意欲低下
✅ 関節痛
✅ 悪心、嘔吐
✅ 耳の痛み、難聴 など
が起こります。
口の中の炎症なのに、なぜ耳が?と思われるかもしれませんが、扁桃腺は構造上、耳の内耳に感染が伝播しやすい特徴があります。
喉の風邪がなかなか治らない人の中で、耳が聞こえにくくなった、という症状が出現した人は内耳炎を起こしている可能性があります。
放置しておくと内耳炎が悪化しその他の合併症を引き起こしてしまうことがあるため、すぐに耳鼻咽頭科に受診することをお勧めします。
のどちんこが痛む5つの原因
では上記の扁桃腺炎ではなく、のどちんこ自体が大きく腫れている症状を発見した場合、どのような原因や病気が考えられるかを見ていきましょう。
口蓋垂炎
扁桃腺だけでなく、のどちんこ(口蓋垂)に炎症が起きている時は口蓋垂炎として診断されます。
通常の炎症とほとんど変わらないため、安静にして十分な栄養を取っていればじきに炎症は治っていきます。
しかしのどちんこが大きくなりすぎて、呼吸や睡眠の妨げになるようならば医療機関で消炎剤などの処方を受けた方がよいでしょう。
のどちんこが一時的に大きくなることで睡眠時にいびきが大きくなる、呼吸時の違和感、集中力が続かないといった症状が出るようになります。
また発熱や疲労感、食欲不振といった症状が出る事もあります。
心因性
大きなストレス状態にある人や、うつ病、不安神経症などの既往がある人の中には、喉の違和感を訴える人がいます。
例えるならば、喉の奥に梅干しの種ほどの何かが詰まっているような感覚として表現されることもあります。
この症状に特徴的なのが、病院でX線やCTの検査を行っても特に異常が見られないという点です。東洋医学では「梅核気」、または「咽喉頭異常感症」とも呼ばれています。
実際の所見としては、のどちんこに軽度の腫れや伸長もあれば、全く問題ないこともあるようです。大きな病気が隠れている事もあるため、症状が続く際は医療機関を受診するようにしましょう。
慢性的な呼吸への負担
睡眠時にいびきが大きい人や、喘息、気管支炎、アレルギー性鼻炎などを持っている人の中には、のどちんこが通常より肥大や伸長している人がいます。
これらの特徴がある人は、通常よりも努力して呼吸をしている分、喉や口、鼻にかける負担が大きくなるため、のどちんこが大きくなる傾向があるようです。
のどちんこが大きくなると、のどちんこが舌に触れて違和感が強くなったり、呼吸の妨げになる事があります。
特に異常という事ではないようですが、違和感が強くなったり、睡眠時の呼吸を妨げるようであれば、手術でのどちんこを切除することも可能です。
飲酒や喉への負担
飲酒後や喉に負担をかけ過ぎた後に、のどちんこが腫れたような状態になる事があります。
のどちんこは喉から垂れるようにして付属している器官です。このため飲酒や喉の酷使によって喉全体がむくんでしまうと、結果的にのどちんこが伸びているような錯覚に陥ることがあります。
数日様子を見ていると症状が改善することがほとんどですが、なかなか治らず違和感が強い時は病院にかかるようにしましょう。
アレルギー
食物にアレルギーがある人は、特定の食物を食べた後、のどちんこが腫れたような状態になってしまう事もあります。
呼吸や意識に問題がなければ様子見でも構いませんが、重症のアレルギー症状が出た場合や、過去にひどいアレルギー症状が出た経験があるならば、すぐに医療機関に行くようにしましょう。
のどちんこの裏に異常を感じた時はアデノイド肥大を疑って
扁桃腺や口蓋垂(のどちんこ)に炎症がないにも関わらず、呼吸苦や鼻づまり、いびきなどの症状が悪化してきたら、のどちんこの裏側にある「アデノイド」という部分が大きくなって呼吸を妨げている恐れがあります。
これはアデノイド肥大と呼ばれる状態で、特に2~5歳程の小児に多いとされる疾患です。
はっきりとした原因は分かっておらず、治療としては炎症を抑える抗炎症剤や点鼻薬による治療を行っていきます。
またどうしても肥大が強すぎる場合は外科手術による除去も行われるようですが、小さい子供には負担が大きすぎるため、アデノイド肥大による重篤な問題が起こらないようであれば選択されることはありません。
アデノイド肥大は8歳前後を過ぎたあたりからアデノイドが退縮を始めるため症状が緩和されてきますが、稀に成人してからアデノイドが肥大し上記の症状を引き起こすことがあります。
アデノイド肥大の症状として
✅ 鼻づまり、鼻声、いびき、口呼吸
✅ 睡眠時無呼吸症候群(寝ている時に呼吸が数秒~数十秒停止する) ✅ 鼻呼吸できないため、ミルクを継続して飲めない、ミルクの飲みが悪い ✅ 寝起きが悪い ✅ ぼーっとして集中力が続かない ✅ アデノイド顔貌(顎がほとんどない、顎が小さい、面長、口を開けたまま、歯並びが悪いなど) |
またアデノイド肥大はアデノイド自体の炎症を起こしやすく、この炎症が耳や鼻に波及することで、滲出性中耳炎や副鼻腔炎、急性中耳炎の原因になることもあります。
アデノイド肥大があるからといって、緊急性に治療や手術が必要なわけではありません。しかしアデノイド肥大によって呼吸が過度に圧迫を受けるようなら処置を施す必要があります。
のどちんこが痛い時の8つの対処法
ここからは、のどちんこが痛む時に家庭内でできる民間療法について見ていきます。どれもお手軽ですぐに実践する事ができる方法なので是非試してみてください。
うがい
喉の痛みの原因は、細菌やウィルスによる感染が原因となっている事がほとんどです。ずっと口呼吸の人や、口腔内が乾燥している人にとっては細菌が増殖しやすい状態にあると言えます。
こんな時に、緑茶や塩水でうがいをすることで口腔内の細菌を洗い流すだけでなく、細菌増殖を抑える効果が期待できます。うがいをするときは温めた緑茶や塩水を使うと、なお効果が高まるようです。
マスク着用
細菌やウィルスは乾燥した環境を好みます。このため細菌やウィルスの増殖を抑えるためには、ある程度湿潤した環境が必要です。
マスクには咳の飛沫を防ぐ他に、口の中の湿度を保ってくれる効果があります。
喉の痛みがある時は、家にいる時、寝ている時にもマスクを着用するとよいでしょう。
首を温める
体の中の免疫機能は、体温が1度変わるだけでも数倍向上すると言われています。
また、体内に侵入した細菌やウィルスは高い温度下では増殖が抑制されるともいわれているため、首や肩回りをマフラーやタオルで保温するようにしましょう。
喉への負担を減らす
喉の痛みが続くときは、炎症が起きているだけでなく喉への負担が大きい事も考えられます。
喉が痛む時は飲酒や喫煙を控え、刺激物を摂らないように心がけましょう。刺激物には炭酸飲料、カフェイン入りの飲み物、香辛料が強い食べ物、などがあります。
はちみつ
昔から喉風邪には蜂蜜が良いとされてきました。
その理由は蜂蜜の中に含まれる良質なビタミン、ミネラル、アミノ酸といった複数の成分に加え、天然由来の抗菌物質などによって細菌増殖の抑制、疲労回復効果が期待されるからです。
ただし、これらの効果は天然由来の無添加蜂蜜に限られます。熱処理や混ぜ物がされていない蜂蜜を選ぶようにしましょう。
*ただし、3歳未満のお子さんにへのはちみつの使用は、ボツリヌス菌とよばれる菌による影響がある場合がありますので、使用は止めてください。
大根、玉ねぎ
風邪を引いた時に「大根蜂蜜」や「玉ねぎ蜂蜜」を思い浮かべる人も多いでしょう。
それもそのはず、大根や玉ねぎに含まれる成分には、消炎、殺菌効果があるとされています。
大根に含まれる成分の中でも、ジアスターゼやイソチオシアネートといった成分には咳止め、排痰、抗炎症作用を持つ消化酵素が含まれており、それを蜂蜜と一緒に摂取することで喉風邪に有効とされています。
玉ねぎから香る独特な匂いは硫化アリルによるものです。硫化アリルには疲労回復、免疫向上、殺菌作用、神経を鎮める作用があります。
また、玉ねぎは食べるだけでなく枕元に置くだけでも効果があるようです。辛みが気になる人は、少しの間流水にさらした後、よく水けを切って蜂蜜と混ぜると良いかもしれません。
大根や玉ねぎに含まれる有効成分は、加熱することで効果が大幅に減弱します。風邪の時に上記の効果を最大限引き出すために、生のまま使用するようにしましょう。
梅
焼いた梅にお湯を注ぎ「梅湯」として飲むことで、殺菌、鎮痛、疲労回復、自律神経整調作用があるとされています。
これは梅の中に含まれるクエン酸やビタミン、ミネラルといった成分が風邪に有効とされるからです。特に梅肉には鎮痛効果があるとされるため、梅湯を作った際は梅肉も必ず食べるようにしましょう。
マシュマロ
喉の痛みにマシュマロが効くとは意外ですが、マシュマロに含まれるゼラチン成分が炎症の起きている部位を保護し、痛みを和らげる効果があるようです。
マシュマロは喉が痛い時でも食べやすく、体力が落ちている時や食欲不振の時に手軽にカロリーが摂取できて良いと言えるでしょう。
いかがだったでしょうか。家庭でできる民間療法には、家にある物ですぐに試せるものがほとんどのため、日常生活に簡単に取り入れることができます。
しかも効果が緩徐で副作用の心配もほとんどない点が魅力です。高齢者から子供まで様々な人に使うことができます。
喉の痛みでなかなか眠れない時や辛い時、市販薬に頼る前に一度試してみるものよいのではないでしょうか。
のどちんこの役割と、よくある喉の病気について見ていきました。
軽い症状の物から、悪化すると様々な合併症を起こすものまで様々です。喉の痛みがしつこく続くようなら、一度専門医を受診するように心がけましょう。
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