オメプラゾールの注用・点滴効果のまとめ【8つの副作用に注意!】
<監修薬剤師 日髙宗明>
点滴に使用される頻度の高いオメプラゾールですが、気になるのはその作用と副作用ですよね。そこで今回は、オメプラゾールの注用・点滴の効果を解説していきます。
気を付けるべき副作用についても解説しますので、もしもの際の備えにして下さい。
オメプラゾールの特徴
まずはオメプラゾールの特徴について解説します。
胃酸抑制
オメプラゾールは胃酸分泌抑制効果を持つ薬で、錠剤や点滴静注として用いられています。
胃内、特に胃の壁にはプロトンポンプと呼ばれるプロトン勾配機能を持つタンパク質複合体が存在していますが、オメプラゾールはこの作用を阻害するために「プロトンポンプ阻害薬」に分類されます。
具体的には胃粘膜に存在するタンパク質とオメプラゾールが結合し、ポンプ機能が阻害されるわけです。このような作用機序により、胃酸分泌が抑制されます。
プロトンポンプの機能が阻害されると胃酸の生成も抑制されるため、胃酸が関与する身体の疾患を発症した際に処方されることが多い薬です。
また逆流性食道炎など、胃酸が別の器官に波及することでその器官を傷つけてしまう疾患の際も、胃酸を抑えるために服用されます。
胃酸が逆流すると胸やけや、悪化すると潰瘍に発展するため早めの治療が必要です。
止血補助作用また出血を伴う潰瘍の場合、上部消化管出血を止めるため、または引き起こさないように、処方されることもあります。
上部消化管出血を引き起こすと症状の改善は胃内pHに左右され、pHが5.4を下回ると血小板凝集が阻害され、止血できなくなってしまいます。そのため胃内pHをコントロールするためにオメプラゾールが使用されます。
逆流性食道炎についてはこちらも参考にして下さい。
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ヘリコバクター・ピロリ対策
ヘリコバクター・ピロリは、胃の中に住み胃内環境を悪化させる菌で、胃がんや潰瘍の原因になるといわれています。
オメプラゾールと抗生物質2種類と一緒に服用すると胃酸が減少するためにこの抗生物質の効果が高まり、ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌に成功しやすくなります。
オメプラゾールの注用・点滴はこの疾患に効果的
具体的にはどのような疾患にオメプラゾールが使用されるのか解説します。
経口投与不可能な疾患
✅ 胃潰瘍
✅ 十二指腸潰瘍
✅ 急性ストレス潰瘍
✅ 急性胃粘膜病変
経口投与不可能なZollinger-Ellison症候群
Zollinger-Ellison症候群(ゾリンジャーエリソンしょうこうぐん)とは、膵臓腫瘍から過剰に分泌されたガストリンが原因となり、消化性潰瘍が発生しやすくなる疾患を指します。
ガストリンとは消化管ホルモンの一種で、胃液分泌を促進する効能があります。腹痛の他に下痢や下血、吐血といった症状が出ます。
ガストリンを過剰分泌する腫瘍を除去する必要が治療のためには必要ですが、除去が難しい場合はオメプラゾールで胃酸の分泌を抑制することで症状の緩和をはかります。
オメプラゾールの副作用
オメプラゾールは副作用が少なく、発症しても重篤な症状には至らないのが特徴です。しかしまれに肝機能障害や血液にまつわる障害が出ることもあります。
いずれにしても、異変に気がついた場合は初期症状のうちに医療機関を受診して検査することが重要です。いったいどのような副作用の可能性があるのか解説します。
アナフィラキシーショック
体質や過敏症によりアレルギー反応を示す場合があります。蕁麻疹や呼吸困難、意識が遠くなる、脈が低くなるといった症状が出た場合はすぐに医療機関に連絡、受診します。
血管痛
血管部分に痛みを感じる場合があります。これはオメプラゾールを点滴静注あるいは静脈注射した際に見られる症状です。
点滴による痛みはこちらも参考にして下さい。
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貧血
白血球や血小板が減少する場合があります。
AST値・ALT値はそれぞれ肝臓に疾患が起きた際に数値が上昇するので、血液検査の結果これらの数値が上がったということは、肝臓に問題が起きたと推測されます。精密検査を行い、原因を特定する必要があります。
肝不全
発疹や食欲不振、黄疸などの肝機能不全症状がでる場合があります。
AST値・ALT値はそれぞれ肝臓に疾患が起きた際に数値が上昇するので、血液検査の結果これらの数値が上がったということは、肝臓に問題が起きたと推測されます。
精密検査を行い、原因を特定する必要があります。
血液検査で分かる肝機能についてはこちらを参考にして下さい。
【関連記事】
肝臓の血液検査の数値や料金について【病院では何科に行くべき?】
筋肉痛
筋肉痛や歩行障害といった横紋筋融解症がでる場合があります。
視力障害
視力が落ちる場合がありますが、一時的なものです。
不眠
睡眠障害を引き起こすことがあります。不眠の代わりに、過度な眠気を催すこともあります。
下痢
ヘリコバクター・ピロリを除菌する過程で腸内環境が変化し、下痢症状が起きる場合があります。あまりに痛みを伴う酷い症状である場合は、医療機関で診察を受けましょう。
オメプラゾールの正しい使い方
副作用の少ない薬ですが、正しい使い方を守らなければその限りではありません。正しいオメプラゾールの使い方について解説します。
オメプラゾールの正しい用法
【注射剤】
日局生理食塩液もしくは日局5%ブドウ糖注射液とオメプラゾール(1回につき20mg)を混合し、1日2回点滴静注します。
緊急時には日局生理食塩液又は日局5 %ブドウ糖注射液いずれかの20mLに溶解して静脈注射します。
オメプラゾールを使う際に注意するべき点
飲み合わせに注意が必要な薬が多いので、アレルギー体質や既往歴、現在服用している薬については先に医師に申告しておきましょう。薬物過敏症の方には使用できないお薬ですので、必ず事前に医師に申し出ます。
また副作用として肝臓や血液に影響が出る場合がありますので、これらの疾患を抱えている場合は必ず医師に伝えておきます。
妊娠中・授乳中の女性に関してですが、現在のところ異常の報告例はありませんが、掘り下げて調査した結果がないのが現状です。
ラットによる実験では授乳すると母乳から子供に薬物が移行するという結果が得られていますので、オメプラゾール使用中の授乳はさけてください。念のため、妊婦や授乳中の人はお医者さまに相談しておいた方がいいでしょう。
オメプラゾールの飲み合わせは?
オメプラゾールは胃酸が減少してしまう薬なので、薬の飲み合わせには注意が必要です。以下の薬と一緒にオメプラゾールを服用すると、薬効の作用や吸収を阻害する可能性がありますので医師との相談が必要です。
✅ 抗エイズ薬であるアタザナビル・リルピビリン
✅ 抗真菌薬のイトラコナゾール
✅ 抗悪性腫瘍薬のゲフィチニブ・ニロチニブ・エルロチニブ
✅ 抗血栓薬のクロピドグレル
特に抗HIV薬との併用は厳禁なので注意が必要です。これらの薬を飲んでいる場合は、事前に医師に伝えるようにしてください。
オメプラゾールの注用・点滴効果について解説しました。副作用の少ない薬ですが、体質によっては肝臓や血液に症状が現れることもあるので注意が必要です。
初期症状に気がつき、はやめに医療機関で検査を受けられるように経過観察を怠らないようにしましょう。
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