プリンペランの効果まとめ【つわりで服用しても胎児に影響はない?】
<監修薬剤師 日髙宗明>
プリンペランとは、制吐剤(吐き気止め)のことで、病院でよく処方されるお薬です。
吐き気止めということは、つわりでの辛い吐き気にも効果があるのでしょうか。でも、妊娠中ってお薬はできるだけ使わないほうがいいとも聞きますよね。
プリンペランにはどのような効果があるのか、妊娠中のつわりにも使えるのかどうか、について見ていきたいと思います。
プリンペランの効果
プリンペランってどんなお薬?
プリンペランが発売されたのは1965年、それなりに長い歴史のあるお薬ですね。
「制吐剤」といって、つまりは吐き気止め薬のことですが、吐き気以外でも、胃腸の調子が悪いときに使われることも。薬の形は、錠剤、細粒、シロップ剤、それに注射液もあります。
吐き気には2種類があり、脳の嘔吐中枢というところに刺激が加わることによる「中枢性嘔吐」と、胃などの臓器に刺激が加わることによる「末梢性嘔吐」に分けられます。
プリンペランは、そのどちらの嘔吐にも対応していて、それなりに効果も高いとされ、さらには副作用も少ないということで、長きにわたって使われてきました。病院でも、医師によりますが、処方頻度は高いようです。
吐き気を止める
プリンペランは、まずは脳にある嘔吐に関係する部分のドパミン受容体を邪魔することで、この部分のはたらきを抑えます。その結果、「中枢性嘔吐」を緩和させる作用があります。
そして、もう一つ、胃などの臓器に刺激が加わることによる「末梢性嘔吐」に関しても、ドパミン受容体を遮断することで対応しています。
消化管にあるドーパミン受容体は、神経伝達物質であるドーパミンと結合することで、アセチルコリン(胃腸のはたらきを活発にする物質)の分泌を抑えています。
プリンペランは、そのドーパミンのはたらきをブロックすることで、アセチルコリンの分泌を促し、胃腸のはたらきを活発にしてくれるのです。
胃腸が活発に動けば、胃にたまった食べ物を腸へとスムーズに送り出すことができて、吐き気などの症状を抑えることができますよね。
その他の吐き気止めの薬についてはこちらを参考にして下さい。
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その他の消化機能の異常にも
プリンペランは、吐き気・嘔吐を抑えることにより、その他の消化器症状(悪心・食欲不振・腹部膨満感など)も緩和させることができます。
具体的には、以下のような病気の時に使われるようです。
✅ 胃炎
✅ 胃・十二指腸潰瘍
✅ 胆のう・胆道の疾患
✅ 腎炎
✅ 尿毒症
さらに、薬の投与による吐き気、挿管(気管にチューブを入れるなど)時の吐き気、放射線治療、開腹手術の後などにもプリンペランが使われることがあります。
また、X線検査をする時にバリウムを飲むと思いますが、プリンペランが胃腸を活発にすることによって、そのバリウムが早く流れるようにする効果もあります。
プリンペランは、実に幅広いシーンで使われていることがわかりますね。
プリンペランの副作用
プリンペランは割と副作用が少ないお薬として病院でよく処方されますが、吐き気を止めるために脳や消化管のドパミン受容体へと働きかけるため、この流れから起きる副作用には注意しなくてはいけません。
よくある副作用
プリンペランが胃腸のはたらきを活発にすることによって、腹痛や下痢、便秘などを起こしやすくなるようです。
また、頭痛や眠気、めまいなどの報告も多いので、車の運転や仕事での機械操作などをする際には、十分な注意を払いましょう。
高プロラクチン血症
吐き気を抑えるためにドーパミンのはたらきをブロックすると、逆にプロラクチンというホルモンが増えてしまい、生理不順や無月経、乳汁分泌などの症状が見られることがあります。
これらは女性特有と思われがちですが、男性がプリンペランを服用した際にも、胸が膨らんだり、乳汁分泌が見られることがあります。
生理不順についてはこちらに参考にして下さい。
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錐体外路症状(すいたいがいろしょうじょう)
ドーパミンのはたらきがブロックされすぎると、脳にまで影響が出て、パーキンソン病のような症状(手足の震え、不随意運動、焦燥感など)が見られることがあります。
それが錐体外路症状で、特に小児に出やすい副作用となっています。このような症状があらわれた場合にはすぐに服用を中止する必要があります。
錐体外路症状は、薬の服用を止めても、いつまでも症状だけが残ってしまうこともあるので、小児が服用する際には細心の注意を払わなくてはいけません。
重篤な副作用
命に関わるような重篤な副作用も、100%ないとは言い切れません。プリンペランだけではありませんが、薬を服用する際には、そういった可能性も忘れないようにしなくてはいけませんね。
✅ アナフィラキシーショック(冷や汗、顔面蒼白、手足のしびれ、発疹、浮腫、息苦しさ、血圧低下、失神など)
✅ 悪性症候群(動かず無言になる、筋硬直、嚥下困難、頻脈、精神変調、発熱など)
✅ 遅発性ジスキネジア(頻繁に瞬きをする、口周囲がピクピク痙攣する、口をモグモグさせるなど)
✅ 意識障害
✅ けいれん
これらの症状が見られる場合や、気になる症状がある場合には、病院を受診し、医師に相談するようにしてください。
意識障害についてはこちらを参考にして下さい。
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禁忌の人・要注意な人
まず、この薬が禁忌の人(絶対に服用してはいけない人)には、褐色細胞腫(副腎の腫瘍)の疑いがある人と、胃腸からの出血や閉塞がある人が挙げられます。
これらの人はプリンペランの服用によって、症状が悪化してしまう危険性があるので、必ず医師に報告してください。
また、以前にプリンペランを飲んでアレルギーを起こしたことのある人も、必ず医師に報告すること。
子供や高齢者、腎臓が悪い人、身体が弱い人に関しては、薬の量をしっかり調節しなくてはいけないので、服用量に注意しましょう。
プリンペランと併用禁忌の薬はありませんが、一部の安定剤や抗うつ剤に副作用が強まる恐れがあるなど、注意したい薬はいろいろとあるので、現在飲んでいる薬がある人は必ずお薬手帳を持参しましょう。
つわりで服用しても大丈夫なのか?
酷いつわりで苦しむ妊婦さんは多いようです。
つわりの時期というのは、胎児が臓器などの重要な部分を形成する時期でもあります。そのため、つわりの時期はもちろん、妊娠中はできるだけ薬の服用は控えなくてはいけませんし、禁忌の薬もたくさんあります。
自己判断で、市販の吐き気止めを買ってきて飲むなんてご法度。
しかし、プリンペランは妊娠中も使用可能となっているため、つわりの症状緩和として処方されることも多いようです。ただし、薬の効果が、副作用などの危険性を上回ると判断された場合のみ。
やはり安易に使用して良いというわけではないようです。
また、どうしても酷いつわりの時は、脱水や栄養失調などの恐れが出てきますよね。その時は、ブドウ糖やビタミンB1などと一緒にプリンペランを混注した点滴をすることも。
ただし、あくまでも点滴の目的は、水分や栄養分の補給。つわりも緩和しますが、完全に抑えるものではないということは覚えておいてくださいね。
つわりの時期は、胎児が形成される大事な時期でもありますが、プリンペランは胎児への影響もほぼないようで、ほかの薬と比べると安全性も高いと言えるでしょう。医師の指示に従って、正しく服用してくださいね。
点滴についてはこちらを参考にして下さい。
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