ヘモグロビンが多い原因はコレ【5つの病気や症状に注意!】
<監修医師 まっちゃん>
ヘモグロビンは赤血球の中に含まれているたんぱく質で、肺から受け取った酸素を取り込んで体中へ送る役目を持っています。
不足すると酸素の運搬量が不十分になって、貧血や息切れの原因となりますが、逆にヘモグロビンが多いことで起こる病気もあります。
今回は、ヘモグロビンが多いことで生じる病気と、その原因を解説していきます。
ヘモグロビンが多い原因
ヘモグロビンの量が多くなる症状は「多血症」と呼ばれています。赤血球の数、ヘモグロビンの量、体積で血球が占める割合(ヘマトクリット値)を基準にして、血液検査で判断されます。成人男性の場合では
赤血球数:1マイクロリットル(μl)あたり600万個
ヘモグロビン量:1デシリットル(dl)あたり18g ヘマトクリット値:51% |
が基準値で、これらの内どれかを超えると多血症と診断されます。
女性では
赤血球数:1マイクロリットル(μl)あたり550万個
ヘモグロビン量:1デシリットル(dl)あたり16g ヘマトクリット値:48% |
が基準値です。
二次性多血症(続発性多血症)
二次性多血症(続発性多血症)は、酸素が少ない状況下に置かれた時に、体がより多くの酸素を運べるように赤血球の量を増やすことで起きる多血症です。
高山地帯のような高度が非常に高い場所で生活したり活動したりすることや、心臓や肺の病気で体に十分な酸素が供給されないことが原因となります。
マラソンを始めとするスポーツの世界では、高地で練習を積むことで体を多血の状態にして、酸素の運搬能力を高める高地トレーニングが広く行われています。
酸素の欠乏によるヘモグロビンの増加は体の反応としては正常ですが、腎臓癌や肝臓癌、子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)などの癌の影響で、血を作る因子が異常増加して多血症になることもあります。
癌以外の腎臓の病気でも、腎臓の一部が酸欠になり、ヘモグロビンの量が増える症状も存在しています。
相対的多血症
相対的多血症では赤血球の数は増えない代わりに、水分量が減ったことで血液全体に占める赤血球の割合が増えることで起こります。
血液の約55%は血漿(けっしょう)という液体成分で成り立っており、赤血球の割合は約40%です。
しかし、脱水などによって水分が外に出てしまうと血漿の量も減り、相対的に赤血球の量が多い状態になります。
運動で大量の汗をかく、嘔吐、下痢、糖尿病による多尿などが脱水を引き起こす他、病気や喫煙で体の組織を行き来する水の量が減ることも原因になります。
ストレスも相対的多血症の原因で、強いストレスを受けている状態の人、高血圧や高脂血症のような生活習慣病患者、喫煙者がこの病気にかかることは良くあります。
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真性多血症
全ての血液細胞の元になる造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)の遺伝子が変異することで起きる多血症です。
造血幹細胞が癌化して起きるという点では白血病とよく似ており、共に慢性骨髄増殖性疾患(まんせいこつずいぞうしょくせいしっかん)というカテゴリーに分類される病気です。
赤血球が著しく増えるだけでなく、白血球や血小板といった他の成分も大きく増加する点が、続発性多血症と異なっています。
遺伝子にある先天性の異常が原因ですが、遺伝性疾患でないために親から子孫へと伝わることはありません。
ヘモグロビンが多いと起こる病気や症状
疲労感・脱力感・ふらつき
多血症の初期段階で見られることが多い症状です。これらの症状に加え、頭痛や息切れを伴う場合があります。多血症になって赤血球の濃度が上がると、血液の粘性が強まって血流の流れが悪くなります。
疲労感や脱力感は、脳を中心とする中枢神経系での血液循環が悪化したことに由来する症状とみられています。
気休めではありますが、水分を多めにとって血液の粘性を下げたり、血圧が上がらないように横になったりすることで症状が和らぐことがあります。
顔の紅潮、粘膜の充血や出血
赤血球が多い人の場合、皮膚が薄い部分や粘膜は通常よりもさらに赤くなります。入浴すると体がかゆくなったり、手足がほてったりすることもあります。
その他、歯茎からの内出血が起こりやすくなり、小さい傷でも予想以上に血が多く出てくるなどの、出血に関する異常が現れます。
痒みが出て掻くと簡単に内出血や出血を起こすので、熱いお風呂に入ることはやめましょう。歯磨きの際も強くこすらず、粘膜を傷つけないように注意する必要があります。
チアノーゼ
チアノーゼは血液の中の酸素量が減り、皮膚や粘膜が青紫色になった状態です。酸素と結合していないヘモグロビンの暗い色が表れたものです。
酸素不足の状態では多血症では顔が赤くなったり目が血走ったりすることもありますが、逆にチアノーゼも良く起こることが知られています。
赤血球の数が増えても、呼吸で取り込む酸素が通常通りの場合、それだけ酸素と結合できない暗い色の赤血球が増えるので、チアノーゼが表れるようになります。
脾臓(ひぞう)の腫れ
赤血球は壊れると脾臓で分解処理されるので、赤血球が増えるとそれだけ脾臓に負担がかかり、大きく腫れてきます。
脾臓が腫れると内臓が圧迫され、おなかの張りや不快感、あまり食事をしていないのに満腹になったような感じがする早期満腹感などの症状が現れてきます。
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血栓症(脳梗塞、心筋梗塞など)
血栓症は血の塊(血栓)が血管に詰まって塞がってしまう症状です。血液の粘性が高まればそれだけ血栓ができやすくなり、血栓症が起きる確率も高まります。
この血栓症が脳の血管で起これば脳梗塞、心臓の血管で起これば心筋梗塞となります。
血管が塞がれて酸素や栄養が行き届かなくなると、体の組織は機能を停止して壊死してしまうため、脳や心臓で発生すると極めて危険です。
真性多血症によってなくなる人の直接の死因は、脳梗塞や心筋梗塞です。生活習慣病や喫煙が原因で相対的多血症を起こしている人は、元から高いリスクがさらに高まって危険になります。
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ヘモグロビンが多い時の改善方法
多血症は血液検査を行えばすぐに確認できるので、おかしいと思う症状があった場合は内科を受診してみましょう。
また、血液検査をする健康診断でも発見できます。多血症の診断がきっかけで、心臓や肺の病気や癌が考えられます。
ストレスが原因の多血症は、ストレス要因の排除、規則正しい生活によって、改善することが望めます。
肥満や高血圧、高脂血症、高尿酸値症などの生活習慣病が原因の多血症を改善するには、根本の原因である生活習慣の改めることが必要です。
塩分や糖分、脂質の多い食べ物を控え、お酒も断ちましょう。中でも最もよくないのが喫煙です。
煙草の煙に含まれる一酸化炭素は体を酸欠状態にするので、続発性多血症の原因となります。高血圧の原因でもあるので、相対的多血症を悪化させる危険性もあります。
真性多血症の場合は遺伝子の異常なので根本治療は難しく、脳梗塞などの重篤な症状が起きないようにする予防が主体となります。
静脈から余分な血液を排出する瀉血(しゃけつ)や、血栓ができることを予防する薬の投与などがメインです。
急激に悪化した場合は、白血病と同じように抗がん剤が使われますが、いずれにしてもお医者さんに任せる作業になります。
健康診断で多血症と判断された場合、真性多血症や癌が原因でないなら、生活習慣を改善して健康な暮らしをすることで改善を目指すことが出来ます。
ヘモグロビンの量が多すぎるときは、良くない習慣をやめることを勧める、体からのサインが出ていると考えましょう。
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