切迫早産の点滴は痛い?手の甲の痛みを軽減する方法!
<監修医師 ゆまこ>
赤ちゃんがまだ未熟な状態で生まれそうになることを「切迫早産」と言います。
「切迫早産」の治療に点滴を使うことがありますが、痛くない妊婦さんもいれば点滴が入りにくくて痛みの強い「手の甲」から点滴する妊婦さんもいらっしゃいます。
そして、この点滴薬そのものが痛みを伴うことが多いようです。
少しでもその痛み、取り除く方法はあるのでしょうか?
切迫早産の時の点滴のやり方
切迫早産とは
前述したとおり、赤ちゃんが早く生まれそうになることをいいます。正確に言うと正期産(37週から42週未満)よりも前に生まれそうになることを言います。
早く生まれてしまう「早産」になってしまうと、赤ちゃんのからだはまだ未熟なため、障害が残ったり時には命の危険が迫ったりします。
切迫早産の理由
子宮の異常や多胎妊娠などがあげられます。未熟な赤ちゃんにとっては、少しでも長くお母さんのお腹の中で成長してもらう必要があります。
そのために、安静を守りながら子宮の収縮を抑え、お腹の張りを止める内服薬を服用しますが、それでも症状が治まらないようであれば、点滴をして治療を行います。
内服薬と点滴の違いは、「即効性があるかどうか」です。内服薬はいったん腸を経由してから身体のあちこちへと薬が運ばれるため、100%本来の薬効を発揮できるとは言えません。
しかし点滴は身体各部に直接吸収されていきます。つまり内服薬から点滴に切り替わったということは、それだけ症状が悪化したと考えられます。
さらに症状が悪化するようであれば、子宮頸管を縛る手術を行う場合があります。何日間点滴を行うかは、症状によりまちまちです。
また点滴を外すとすぐに陣痛が始まり破水してしまう方もいるため、予断を許さない状態と言えます。また陣痛が始まる前に、点滴を外して帝王切開に切り替える場合もあります。
点滴をいつはがすかは担当医の判断にもよりますが、夫婦に決断を委ねる場合もありますのでよく説明を聞き、納得できるようにしましょう。
切迫早産の時に使われることが多い注射として「ウテメリン」「リトドリン(ウテメリンのジェネリック)」「マグセント」等様々な薬があげられます。
単体で薬剤を使用するのではなく、ブドウ糖液と混合して使用します。ブドウ糖に対する薬剤の濃度が濃くなればなるほど、症状が重いと言えます。
まずは「ウテメリン」「リトドリン」で治療を行います。それでも症状が治まらなかったり、薬が効かない、副作用が強かったりすると「マグセント」を使うなど、症状や重症度等にあわせていろいろなお薬を選択します。
ウメテリンやリトドリン
ウメテリンやリトドリンは交感神経を刺激して子宮の運動を抑ます。
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マグセント
主成分であるマグネシウムで全身の筋肉と一緒に子宮の筋肉を緩めるというように、機序は異なりますが、
「子宮の運動や収縮を抑える」という効果を目的として使用します。
お薬によって発疹や肝障害、動機や手の震えなど様々な副作用がありますが、どのお薬にも共通して言われることが多いのが「点滴が痛い」ということです。
「点滴が痛い」というのは一般的に「血管痛」と言われており、血管の壁に注射の針があたる、お薬が血管の外に漏れる、お薬の成分などが原因で起こります。
切迫早産で使われる点滴は、浸透圧が高い(⇒ざっくり言うと「濃い」)ものが多く、血管痛の大きな原因の一つになります。
点滴液の入ったパッケージをよく見ると「A」の数字が見えますが、これは「アンプル」の略です。
アンプル前の数字が大きければ大きいほど「濃い」薬剤と言えますので、血管痛を感じやすくなります。例えば「2A」よりも「6A」の方が濃い薬と言えます。
また濃い薬は点滴を受ける時間が長くなり、お風呂にも入れない状態になります。
点滴を差し替える際に体調が良ければシャワーを浴びることもできますが、体調が悪い場合はお風呂に入ることは出来ません。
あまり知られていませんが、妊婦さんたちはこんな痛みとも闘ってあったのですね。
その他にも点滴を受けるだけの生活で体重のコントロールが効かなくなり、太りすぎ痩せすぎたりといったトラブルに悩まされることになります。
また薬品をお母さんの身体に摂取するわけですから、気になるのは「赤ちゃんへの影響」です。薬は作用がある反面、副作用があります。これはどんな薬でも一緒です。
副作用は命に関わるレベルから「暑い」と感じるなどなんとか我慢できるものまでまちまちです。副作用は母胎のみならず、胎児にもあらわれます。
非常に稀ですが、胎児の心拍が停止したという例もあります。
ただし時期尚早に子宮口が開くことも胎児の命を脅かしますので、よく担当医と相談した上で点滴に踏み切りましょう。
手の甲に点滴を打つとどれくらい痛いの?
女性はもともと血管が細い方が多いです。妊婦さんは体つきに丸みをおびていたり、妊娠中毒症で体がむくんでいたりして、血管が皮膚から見えにくくなります。
色々な所から点滴をしていきますが、皮膚が薄くて血管が見えやすい「手の甲」から点滴をすることがあります。
点滴をさす場合、手の甲と腕の違いで痛みに差が出ます。
人によって痛み方は様々ですが、痛みを強く感じる方が多い場所と言えるでしょう。
これは、人の手先には神経や「痛い!」「冷たい!」
などの感覚を感じる器官が集中しているため、肘の内側等に比べて痛みが感じやすいと言われています。
(肘の内側の太い血管から注射ができればよいのですが、ここは肘が曲がると血管も一緒に曲がってしまい、点滴が漏れ出る可能性が高いため繰り返し行う点滴には向きません。)
感じ方の違いがあるため痛みを他の痛みに例えることはできませんが、一度手の甲から注射をしたことがある方は、「もうイヤだ」「つらい思いはこれ以上したくない」と思われる方も多いようです。
また点滴を行っている最中だけではなく、点滴を抜いた後も痺れを感じるなどの後遺症を感じる場合もあります。
痛みや「点滴は怖い」という心情から、不眠状態になる方もいらっしゃいます。
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ただ、「刺すときは痛いけど、そのあとは安定性がいい」「腕を気にせず動かせる」等、人によっては「手の甲」からの点滴をあまり苦痛に感じられない方もいらっしゃるようです。
手の甲への点滴の痛みを軽減する方法
切迫早産で不安やいろいろな症状に襲われている時に、点滴の痛みがあると苦痛が増えてストレスになってしまいます。
この点滴の痛み、軽減する方法はあるのでしょうか?
点滴中にホットパック等を使って血管を広げておく
針先やお薬が直接血管に触れないようにします。点滴が終了した後は、炎症を鎮めるために冷やすことで持続する痛みを軽減することが出来るようです。
おしゃべりや手をあまり動かさない方法で趣味に没頭するなど他の事に意識を向けることで、痛みが軽減することもあるようです。
また、痛みの原因がわかっている時は以下の方法もあります。
注射の針先を変えてもらう
血管壁にあたっているときは、注射の針先を変えてもらいましょう。またお薬が漏れ出ている場合は、点滴の場所を変えてもらうようにしましょう。
点滴しているところが腫れてきたらお薬が漏れてきている可能性を疑いましょう。
お薬の成分で痛みが発生している場合は、同じ効果を期待できる別のお薬に変えてもらう、お薬の濃度を薄くしてもらう、点滴の速度を変えてもらう等の方法がありますが、これはできるお薬とできないお薬があります。
残念ながら切迫早産のお薬ではどちらもあまりできないようです。まずは担当の先生にお話してみて、可能だったら変更をお願いしてみましょう。
まとめ
元気な赤ちゃんに会えるためにと、切迫早産の治療がツラくても誰にもいわず我慢される方も多いようです。点滴もたない状態が続くと、心身共に過大なストレスがたまります。
けれど、妊婦さんにとってストレスは決していいものではありません。
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周りの方々にも、治療のツラさを理解されると、妊婦さんも少しは楽になるかなと思います。
切迫早産は、お母さんもお腹の赤ちゃんも不安でいっぱいです。解決できることは少しでも解決して、快適な生活を送れるようにしていきましょう!
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