水中毒の7つの原因!【治療法も確認してみて】
<監修医師 春田 萌>
水は私達の体に必須のもので、水分がなくなると生命に影響するぐらい重要です。しかし、その水も大量に飲むとなると話は別です。
大量の飲水によって体内の水分比率が変化し、細胞の膨張をもたらし様々な症状を呈します。
一般に水中毒と言われ注意が必要です。精神の病気との関連も言われており精神科などにおいて認識されており重大な症状のひとつです。
ここではその水中毒について定義やその症状、原因、治し方等対処の仕方などを紹介します。
気になる所から確認してみよう
水中毒の症状チェック
通常私達の身体は赤ちゃんで約75%、成人で約60%、高齢者で約50%が水分からできており水分の適正摂取量は1日1.5リットルといわれています。
水中毒の定義としてはこれを超えての過剰な飲水量が原因で生じる中毒症状を言います。
様々な症状を引き起こし生命にも影響を及ぼす事態(例えば低ナトリウム血症やけいれんなどを引き起こし死にいたる場合)を言います。
水中毒を調べるために血液などの検査が行われ診断されますが、腎機能の検査や血液ガス検査も行われます。
このような水中毒の症状について次に説明します。
✔水の多飲
通常1日1.5リットルの水が適正なのですが、コップを常に持ち歩き一日に何杯も水を飲んだり、水の入ったペットボトルを一気に飲むなど、一度に大量の水を飲んでいるといった症状が見られる場合、水中毒の可能性が高いです。
✔体重の増加など
大量の飲水量によって身体の細胞が膨張、いわゆる体重が増加した結果下腹部が出てきたり、おなかでポチャポチャと音がするといった症状がみられたりします。
すねを指で押して指を離してもへこみがもとに戻りにくい、陥没したままの状態などは水中毒の初期症状と言えます。
✔全身のだるさ、 頭痛、嘔吐など
大量の飲水によって血液中のナトリウムイオンの濃度が低くなり、腎機能が低下し色々な症状いわゆる低ナトリウム血症を発症します。
血清中のナトリウム濃度の低下により軽度の疲労感やだるさ、頭痛、嘔吐が出現します。
こむらがえり(もしくはこむら返り)、性格変動、こん睡、意識不明また神経伝達阻害により呼吸困難を起こし死亡にいたる場合もあります。けいれん等で脳にダメージをうけ後遺症が残る場合があります。
✔運動機能障害や認知機能低下
水中毒による低ナトリウム血症では、運動機能も低下し転倒や歩行障害が見られます。
また脳浮腫を引き起こし、脳神経の喪失が早まり脳委縮も進み知能低下や記憶障害、意識不明などの認知機能低下も認められます。
✔幻覚など
幻覚、妄想など統合失調症や社会や人との付き合いがうまく出来なかったり、他人とのコミュニケーションが難しくなる自閉症など精神の症状が出現します。
水中毒になる原因
それでは水中毒の原因に何が考えられるかを紹介していきます。様々な疾患による要因が考えられます。
多飲症
飲水量が多く(1日3リットル以上)多尿を来たすことで水中毒を引き起こし低ナトリウム血症による様々な症状を呈し多飲症と診断されます。
多飲を主訴とする疾患は多くあり、糖尿病や薬による口渇、尿崩症などにみられ精神科への入院患者にも多飲症が多くみられます。
統合失調症
統合失調症は遺伝的要因や環境的要因が関与している精神の病気といわれ発症は思春期に多く男性の方が発症は多いです。
幻覚や妄想などの陽性症状と意欲減退などの陰性症状を呈し社会機能に影響を与える疾患です。この疾患で水中毒の病態が数多くみられます。
自閉症
自閉症いわゆる広汎性発達障害の患者に強迫的飲水による多飲のため水中毒の症例が報告されています。
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薬の副作用
抗精神病薬や抗けいれん剤などの薬が水中毒を引き起こす例が報告されていますが、統合失調症などの精神疾患が原因になっている場合が多いです。
尿崩症(にょうほうしょう)
脳の視床下部から下垂体後葉の炎症が原因でバソプレシンという下垂体ホルモンの分泌不全が起きると腎臓の集合管で尿を濃縮することが十分できなくなり1日10リットルにも及ぶ多尿となる疾患です。
さらに腎臓のバソプレシン受容体の異常によっても起こり、このため血液は高浸透圧になり常に口渇になり多量の飲水を行います。
急激な脱水症状
夏のスポーツの後や下痢などの症状による急激な脱水症状にスポーツドリンクなどを飲むことがありますが、過剰に摂取すると水中毒になる事があります。また、赤ちゃんなどには注意が必要です。
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口渇など
抗精神病薬の副作用によって、視床下部の口渇中枢機能が亢進し口が渇き飲水欲求が高まり多飲や一気に飲む事による水中毒を引き起こします。
水中毒の治療
水中毒の治し方は飲水制限をすることで簡単に治るものではなく、むしろ飲水制限をすることによって多飲が促進し水中毒がよけいにひどくなるというケースもあります。
一面的な診断は危険ですので、根本の疾患の治療を優先しながら体重制限や飲水制限を監視し、行動制限などをしないという治療が最近の流れです。
多飲症の場合
多飲症と診断された場合、患者に多飲症の危険性を十分説得し、定期的な体重管理や飲水制限をします。
場合によっては電解質の補充が必要になるなど多飲症には色々な対処が考えられますのでそのタイプ別の治療が必要になります。
統合失調症、自閉症の場合
精神病院や外来などでの専門カウンセラーによって専門の精神科医など薬による治療やカウンセリングといった様々な面から治療が施され、症状を抑えることができます。
水中毒と精神疾患の重症度は相関関係があり、症状の改善により水中毒の改善がみられたり、水中毒の改善がすすむことで統合失調症や自閉症などの精神の症状が改善される事もあります。
薬の副作用
薬の副作用による場合はその薬の服用中止によって多飲などを回避できる場合があります。
しかし、低ナトリウム血症が改善したとしても精神症状が改善するかどうかは不明の部分があります。
尿崩症の場合
中枢性の尿崩症では薬剤(デスモプレッシン点鼻)を投与します。腎性尿崩症の場合は水補給や原因疾患の治療を優先します。
急激な脱水症状の場合
この場合は急激な水分補給は絶対に避ける必要があります。病的な脱水時には経口補水液を使用するようにします。
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口渇など
抗精神病薬の服用を中止することが前提ですが、抗精神病薬の服用に関わらず自閉症などの患者には高い確率で口渇による多飲が認められ水中毒が発症します。
様々な要因で惹起される水中毒ですが、特に必要な事は家族の十分な観察や管理と精神科医師などの指導、治療が重要です。
早期の改善は望めないかもしれませんが、継続的なアプローチで症状の改善や対処と寛解を図る事が重要な病態といえます。
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