耳管開放症の治療法を解説!症状と原因も確認しておこう!
<監修医師 豊田早苗|監修看護婦 ジビ子>
「耳管開放症」はあまり聞きなれない病気ですが、時には命に関わることもあります。
今回は耳管開放症の治療法や症状、原因などについて紹介していきます。
耳管開放症の4つの原因
耳管は、太鼓のいわば空洞の部分と同じように、音を響かせる役割果たしています。
通常、閉鎖空間であるこの耳管が開くのは、空気の圧力が鼓膜の外側(大気)と内(鼓室)の、どちらかが強いためです。
何もしていないのにここが開きっぱなしになってしまう耳管解放症は、女性に大変多く、女性では50歳代に、男性では40~60歳代に多く見られます。
そしてその原因は、次に挙げることが一つないしは複数重なって起こると言われています。
1. ストレス
耳管解放症がおこる最大の原因と言われているのが、ストレスです。ストレスは万病のもとであり、ストレスにより自律神経系が乱れ、その結果、血流が悪くなったり、身体の機能が正常に動かなくなってしまうのです。
ストレスが原因の場合、現れる症状を治療しても原因が取り除かれないと、治りにくいばかりか症状が悪化していきます。また一時的に治っても、再発しやすいと言われています。
日頃からストレスマネジメントスキルを身につけておくことが重要です。
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2. ダイエットのし過ぎ
急激なダイエットは、体重の減少が著しく、そのために耳の周囲の脂肪が燃焼されるため、耳管を閉じるための十分な圧力が加えられなくなってしまうために起こると言われています。
また運動時に耳の中で「音が響く」体験をした方もいらっしゃると思いますが、それは運動時には交感神経が活発に働き、結果として耳管が開いたままになるためです。
3. 鼻を頻繁(ひんぱん)にすする習慣がある、中耳炎の後遺症
鼻を頻繁にすすることにより、鼓膜が内側に凹み、鼓膜の動きが悪くなります。
また、中耳炎にかかるということは、耳の中が炎症を起こしていますので、鼻すすりと同様、鼓膜の動きが悪くなり、その結果、常に耳管が開きっぱなしになってしまうと言う悪循環に陥ってしまうのです。
耳の炎症は放置していると脳に移動し、脳に影響を与え重篤な病気を発症するおそれもあります。
中耳炎の場合は、大事を取って水泳などのスポーツは避けた方が耳管開放症を併発せずにすみます。
なお鼻を啜る場合は風邪や花粉症を思い浮かべますが、これらの場合、耳管開放症ではなく「耳管狭窄症」(じかんきょうさくしょう)と呼ばれる病気にかかりやすくなります。
耳管狭窄症は耳が詰まったような感覚が続きます。
粘膜が腫れることで出る症状で、風邪や花粉症が原因の場合は、風邪や花粉症が治ると症状も治まります。
4. 生活習慣の乱れ
生活習慣が乱れると、自律神経がうまく働かないことがあります。そのため、血流が悪くなったり、さまざまな体調不良が引き起こされることがあります。
その結果、耳鳴りやストレスが引き起こされることから、耳管解放症が起こることにつながります。
また人によっては、「とても暑い時期」「かなり寒い時期」といった、季節によって発症すると感じる人もいるようです。
気候よりは気圧に影響を受ける病気なので、極端な気候の時期には気圧の変化に身体が慣れずに耳管開放症を発症する可能性もあります。
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5. 肥満・妊娠・出産など
肥満の場合、身体のさまざまな場所に脂肪が付きます。耳管周辺は脂肪が多くつく場所が多いため、耳管が閉じにくくなります。
また、妊娠や出産は、体内ホルモンバランスが急激に変化するため、一時的に耳管解放症になることがあります。また、水分不足などで一時的に耳管解放症になることもあります。
妊婦は水分不足に陥りがちなので、注意が必要です。
耳管開放症の症状を確認しよう
耳管解放症の診断は、
1. 自覚症状(患者さん自身が感じ・訴える症状)
2. 鼓膜の視診
3. オトスコープによる聴診
4. 体位変換による聴覚の改善
等の検査方法により判断されます。自覚症状には、
1. 耳が詰まった感じがする(耳閉塞感)
2. 自分の声が大きく聞こえる(自声強聴)
3. 呼吸する音が聞こえる(呼吸聴取)
4. その他
(1) 首こりや肩こり、頭痛、眩暈(めまい)、聞こえ辛い(難聴)、音が耳の中で反響して「ぼーっ」と聞こえる、などの諸症状が現れることもあります。
特には痛みを伴う場合もあります。
(2) 立位(立った姿勢)では、聞こえにくい、エレベーター内にいるように音が反響するような感じだが、臥位(横になる姿勢)をとったり、頭部前屈姿勢(頭を下げる姿勢)を取ると聞こえにくくなるなどの不快感が改善される。
また運動時に自分の声や他人の声の聞こえ方が変わる、など。
(3) 時には鬱(うつ)症状がみられることもあります。
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耳管開放症の治療法を解説
1. 病院での治療方法
基本的な治療としては、病院での投薬が主体です。
耳管周辺の血流量増加のために、血液循環改善薬や加味帰脾湯(漢方薬)、ビタミン剤の処方、低血圧症や自律神経失調症による併発の場合は、対症療法としてそれらに合致する薬(ホルモン剤、精神安定剤、ステロイド)などの処方がなされます。
また病院によっては生理食塩水による点鼻(生食点鼻)を行ってくれる場所もあります。
しかし投薬による治療による改善が見られない場合や、重症である場合は、耳管を閉じる手術が行われます。
2. 自然治癒の促進や、症状の改善・治療法
症状の改善するための方法には、以下のようなものがあります。
(1)水分をたくさん取る。
夏場等、脱水症状による耳管解放症の場合は、水分をとることにより耳管が閉じやすくなります。
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(2)マッサージ。
耳の周辺(耳の後ろから首にかけての部分)や、肩こりがある場合は肩の周辺等をマッサージします。
マッサージは耳の周辺では1分程度、中指と人差し指の部分で円を描くように優しくこすります。
肩の場合も、あまり強く揉んだりせず、優しく撫でさするように2分~3分程度、衣服の上からこすります。
マッサージをすることにより、血流が良くなるため、自然治癒の促進が促されます。
(3)耳の周辺を温める。
耳の周辺をホットタオル※1で温めます。耳の周辺の血行を促進してあげることにより、自然治癒が促されます。
※1 ホットタオルは、水で濡らした手ぬぐいを電子レンジで30~1分程度温める、または手ぬぐいをお湯で湿らせて作ります。
(4)眠る時は横になる。
横になることにより、耳管が閉じやすくなるためです。
(5)ストレッチ体操。
ストレッチ体操により、ストレスが緩和され、血行が良くなります。
(6)鼻はすすらない。
耳管解放症の場合、鼓膜を引っ張ってしまうため、鼓膜が内側に凹んだままになるめ、ここに耳垢がたまり、炎症を起こしやすくなります。
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最後に
症状が出たら、まずは耳鼻科を受診しましょう。症状により、ストレスに陥る悪循環や、眩暈(めまい)による転落事故は、死亡を始めとする重篤な事故につながることがあります。
また、一過性の難聴から難治性難聴へと移行する場合もあります。中には顎関節症を併発している方もいます。
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いずれにせよ、素人判断はせずに医師の判断を仰ぎましょう。
きちんと治る病気ですので、医療機関での診察が重要です。
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