腸が痛い9つの原因【対処法も確認しよう】
<監修医師 吉野 聖奈>
腸が痛いことありませんか?もともとお腹が弱い人は、時々痛くなることがあるかもしれません。
でも、ことによると腸に何かの異常が起きているのかもしれません。
いつものことと軽く考えていると病気のサインを見逃すこともあります。そうならないように、腸が痛い9つの原因と対処法を知っておきましょう。
気になる所から確認してみよう
腸が痛い原因と対処法
では腸のあたりが痛い原因にはどんなものがあるのでしょう。対処法とともに個別に見て行きます。
腸閉塞
食べ物や消化液が腸に詰まっている状態です。お腹が痛くなり、内容物が逆流して吐き気・おう吐を起こします。進行すると腸が破裂して、命にかかわることもある危険な病気です。
がんや腸内の癒着(ゆちゃく=くっつくこと)、便の詰まりなどが原因になります。
治療法は、絶食して腸の負担を減らし内容物が移動するのを待つ、チューブを通して内容物を吸いだす、開腹手術などがあります。
手術すると癒着して腸閉塞が再発しやすくなるので、できるだけ避けられます。
大腸がん
国内では2番目に多いがんです。腫瘍(しゅよう)ができる場所はS字結腸と直腸が多くなります。
腹痛を始め血便や下血、下痢、便秘、残便感、お腹が張るなどの症状があります。
内科で検便による潜血検査や内視鏡検査を受ければ早期発見、早期治療が可能です。
潰瘍性大腸炎
大腸内部の粘膜にただれや潰瘍(かいよう)ができます。原因は細菌や免疫の異常、食生活、遺伝などの説がありますが、どれも証明はされていません。
症状は腹痛、下痢、血便などです。対症的に薬物療法が行われ、進行して重症になれば手術も行われます。
クローン病
腸に炎症が起こった後に潰瘍ができます。潰瘍性大腸炎とは違って小腸や肛門付近にもできます。
腹痛がおこりますが、下血や下痢を伴う場合は大腸の異常に多く、腹痛だけだと小腸の異常が多くなります。
両方に異常があって重症になれば発熱することもあります。
原因は解明されていません。よくなったり悪くなったりを繰り返して長期化します。よくなった状態を長く保つことを目指した、薬物治療が主体になります。
うまくいけば普通の社会生活が送れます。また手術も行われ、5年で33%の手術率になるようです。
感染性胃腸炎
学校や施設などで集団感染がおこるので、よく耳にする病気です。ノロウィルスの感染が有名です。
胃と腸どちらにも痛みがあります。ほかに発熱やおう吐、下痢も伴います。
まわりに感染しないように注意しながら、水分・栄養補給をします。症状が重いようなら内科を受診してください。
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過敏性腸症候群
便通に関するトラブルです。便秘や下痢とともに腹痛、不快感が続く症状です。
何らかのストレスを感じると、ガスがたまったような腹痛、お腹が張る、おならが出たり、便秘や下痢など人によりさまざまな症状が出ます。
対処は症状に合った対症療法です。食事や運動による改善、薬を使うことで症状の緩和をはかります。
また、ストレスそのものに対しても生活習慣の見直し、仕事の見直しなどが必要になります。
虚血(きょけつ)性大腸炎
大腸の血液の量が少なくなり、酸素や栄養が不足して粘膜に炎症や潰瘍ができる病気です。腹痛や下血、熱が出ることもあります。
高齢者に多く、動脈硬化による便秘が原因とされていましたが、最近は便秘の若い女性にも見られます。痛み止めや抗生物質など、薬物での対症療法になり、多くは短期間で完治します。
腸管形態異常
腸のいくつかの部分がねじれていて、全体の形が一般的ではない状態です。ねじれた部分に便が詰まって痛みが出ます。
便秘のあとで下痢や軟便なる、便秘で腹痛があるなどの場合、腸管形態異常が疑われます。体をひねる運動や腹部のマッサージが有効です。
産後の痛み
出産後には腹痛がおこることが多く見られます。生理痛に似た痛み、大腸が緊張しているような痛みなどと表現されます。
子宮の収縮や休養不足など生理的で心配のない場合もありますが、子宮内の残留物によるもので処置が必要なものもあります。軽視しないで早めに産科を受診しましょう。
痛みの種類
腸が痛いという場合、一般的には腹痛ともいわれる症状ですが、その痛みは状況によって内臓痛、体性通、関連痛の3つに分けられます。
内臓痛
内臓痛とは消化器など管腔臓器が伸び縮みやけいれんして起こる痛みです。痛みが波のように断続的に起こります。
体性痛
体性痛とは、内臓が炎症を起こし、その刺激によって周囲の腹壁や腸間膜に痛みが起こります。
関連痛
関連痛とは、痛みの原因である臓器とは離れた部分が痛むもので、原因になる臓器により関連痛が起こる場所が特定しています。
また消化器の痛みは食事が密接に影響します。空腹時痛とか食後痛などで、空腹時痛は十二指腸潰瘍に多く、空腹になると心窩部(しんかぶ=みぞおちのあたり)が痛み、食事をするとやわらぎます。食後痛は胃炎のことが多いようです。
腸が痛い病気、たとえば腸閉塞などで激しい痛みがあったり下血したりすると、緊急対応が必要になります。
救急車を呼ぶなどして病院へ急ぎますが、その時には症状を医師にしっかり伝えることが大切になります。
チクチク痛い、キリキリ痛い、動くと痛い、食べると痛い、横になると痛い、吐き気がする、血便、下血はないか、食事はしたかなど、これらの情報は病気の診断をするうえで大変重要な要素です。正確に詳しく伝えましょう。
病院は何科を受診すれば良いのか
腸が痛くて病院へ行く場合、窓口はできれば消化器内科になります。近所になければ内科で大丈夫です。
病気によっては婦人科の対応もありますが、それは病院が判断します。まずは内科です。
腸を健康に保つ5つの方法
腸の働きは、消化、吸収、老廃物の排泄、細菌やウィルスへの抵抗など数多く、そしてとても重要なものです。
腸を大切にして、病気にならないように健康に保つ方法をみて行きましょう。
負担の軽減
便秘を繰り返すと、腸内に炎症やただれができる可能性が高くなります。便通をよくするために野菜や海草に多く含まれる食物繊維を積極的に摂るようにします。
腸内細菌のバランスをよくすることも便通の改善に有効です。乳酸菌のサプリなどを上手に利用しましょう。
リズムの改善
生活を規則正しくすることで腸の動きが活発になり、故障が起きにくく、また回復力も強くなります。
起床、食事、排便、就寝などを規則的にします。
また食事を抜いたり夜更かしをせず、休息を十分とるようにして、腸の活動が弱くならないようにします。
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ストレス解消
体にストレスが加わると、腸の神経が過敏になり、腸の動きも必要以上に激しくなって下痢になります。精神的に緊張すると、交感神経が腸の活動を抑えるため便秘になります。
ストレスは直接腸の動きにかかわるので、ストレスを少なくするように生活環境を整えます。
運動
日頃体の動きが少ない生活をしていると、腸の動きも弱くなります。
腸の消化・吸収・排泄作用が弱くなり、便秘やお腹の張りで憂うつになったり、栄養不足でだるくますます動かなくなるといった悪循環になります。
毎日の生活に運動習慣を取り入れるなど、積極的に体を動かしましょう。
検査
病気を早く見つけます。腹痛、便秘、下痢などは比較的多い症状で、ちょっとした不調でもおこるのでつい軽くみてしまいがちです。
でもこれらは病気のサインであることも事実です。異常を感じたらすぐ検査を受けましょう。早期発見で完治が望めます。
大腸の場合、自治体や勤務先などの補助で定期健診が行われています。便の潜血反応だと500円程度か、無料の町もあるようです。
より確実な内視鏡検査だと、潜血反応陽性で保険適用になった場合で6千円ぐらい、全額自己負担でも2万~3万円程度です。
次のようなことに該当する人は、検査を受けることをおすすめします。
✅ 40歳以上になった
✅ 便秘、下痢、腹痛が多い
✅ 便が細くなった気がする
✅ おなかが張る感じがする
✅ 血便がある 便に血がついている
✅ 健康診断で貧血といわれた
✅ 親族に大腸がんの人がいる
腸が痛い病気について見てきました。よくあることと軽く見がちですが、腸が痛いのはこわい病気の可能性があることがわかりました。
なにか変わったことがあれば早めに検査したほうがいいようです。
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